誰かにとっての平凡劇場


「私語は慎みなさい、そこのきみ。それから、前を向いて」
教師の叱責がとぶ。

「はぁい」
間延びした返事をして、後ろの席の子と話をしていたネズミは前へ向き直る。
長い脚を優雅に組み、いかにもふてぶてしく座り直す。

「ねぇ、紫苑先生?」
甘ったるい、猫のような声を出す。
板書をしていた紫苑は、僅かに眉を寄せながらも振り返る。

「なんだい」
「きみ、じゃないでしょう?生徒のことはちゃんと、名前で呼んで?」

紫苑は短くため息をつく。


どうしてきみは、そうやってぼくを困らせるんだい?


凡劇場


問題児が、ぼくのクラスにいる。

名前はネズミで、学園のアイドル、超美形の超問題児。
なにが「超」がつくほど問題なのかといえば、授業は聞かない、成績はいつも赤点ぎりぎり、他のクラスメイトを巻き込んで遊ぶ。
もちろん、授業中に喋ったり授業や部活をさぼって街へ繰り出したりなどという「遊ぶ」というのもあるが、彼の場合はそれだけにとどまらない。
要するに、男女問わず恋愛感情のない遊びをするんだ、彼は。

「紫苑先生?」
突然話しかけられてびっくりする。
つい職員室で考えこんでいたみたいだ。

「あ、はい…羅史先生?」
「何か悩み事でもあるみたいだね」
「ああ…まあ、そうですね」
「今夜空いてるかい?」
「ええ」
「じゃあ、また帰りに」

羅史は高校の時の先輩で、このNo.6学園に赴任して再会した。
そうして、高校時代あった肉体関係も再開したというわけで…
別に、嫌ってはいないけど羅史は恋人じゃない。それは羅史も同じ。
ってことは、…遊び。

ぼくだって、ひとのことは言えたものじゃないとは、思う。
だけど、ネズミみたいにとっかえひっかえ遊ぶのはやめさせなければ。
仮にもぼくは教師で、彼の担任なわけだし。





…ぁ…せんば…
ちがうよ、今は
…え、なに…ら…し…
先生だろう、紫苑?
は…っ、せ…んせ…!



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