道草して乗り遅れ


!)現パロ
・アナウンサーネズミ、方々を飛び回って取材する、超忙しい人
・雑誌の編集部紫苑、会社ではピシッとスーツなデキル人
・世話焼きネズミ×甘えんぼ紫苑




「いらっしゃいませー」

バスから下車し、心の赴くままに歩いていたら、いつのまにか紫苑の母が営むパン屋さんの前だった。己の心の行き先に忠実な自分の足に苦笑しながら、パン屋の扉を開ける。
昼食を買いに来たらしいサラリーマンや学生たちで賑わう店内へ一歩足を踏み入れた途端、明るい声で名を呼ばれた。

「まあ、ネズミちゃん!」
「あ…火藍さん。おはようございます。ご無沙汰してます」
「ほんとうに、久しぶりね。今度はどこへ行っていたの?」
「沖縄と九州の各地へ。あ、お土産を…」
「あらあら、お気遣いありがとう。どうぞ上がってちょうだい、紫苑ならまだいると思うわ」
「では、お邪魔します」

忙しく働く火藍に軽く頭を下げ、ネズミは住居空間である二階へと続く階段に足をかけた。





「あ、ネズミ。久しぶりだね、いつ帰ってきたの?」

ドアをノックすると、しばらくして紫苑が出てきた。もう正午になるというのにまだパジャマ姿で髪はボサボサ、スリッパをつっかけた足の片方は靴下を履いていない。いかにも寝起きですというふうに、瞼をしょぼつかせている。

「ついさっき。バス降りて歩いてきた」
「えっ、ここ、バス停から遠いのに?ていうかてネズ…」

そこで紫苑は、ふわぁっと大きく欠伸をする。
赤ん坊のように無垢で無防備な紫苑の表情を微笑ましく眺めながら、ネズミは紫苑の頬にそっと触れる。目尻の涙を優しくぬぐってやり、頬に這う蛇行跡をなぞる。

「寝不足なのか?紫苑…隈ができてる」
「あ…うん、昨日まで修羅場で…写植のミスやら校訂やら…でも無事出版に回したよ。今日は午後から出勤で、夜は打ち上げ」
「ごめんな、起こしたか?」
「ううん、目は覚めてたんだ…」
「なら、よかった」

ネズミは滑らかな紫苑の肌を楽しみながら頬を撫ぜ、半開きの目蓋にふうわり触れる。
それがくすぐったかったのか、紫苑はふいっと顔をそむけてネズミの手から逃れ、起き抜けの目元を自分でこする。

「こら紫苑、こすったらだめだろ。赤くなってる…荒れるぞ」
「もう、きみは過保護だな。ぼくのことはいいんだって」

紫苑は拗ねてしまったようで、下からじろりと睨み上げてくる。
まだ意識が半睡状態のようで、酔った時のように仕草が幼い。
愛しさが込み上げてきて思わずネズミは破顔し、紫苑の柔らかな白髪をかき混ぜる。

「ちょ、やめ、やめろよ」
「なんで」
「あーもう。だからさ、ネズミ、」
「うん?」
「バス停から徒歩でってことは、きみ、出張先からそのままうちに来たんでしょ?ちょっとシャワーでも浴びる?」
「おかまいなく。ちゃんと朝、ホテルで浴びてきた」
「そっか。じゃ、ココアでも淹れるよ…ネズミこそ疲れてるだろ?」
「ふふ、ありがとう。あんたのココアは大好きだけど、今は遠慮しとくよ。だって、ほら、」
「え?」

すいっと手をかえして、壁の掛け時計を示す。

「殿下、出勤のお時間はよろしいのですか?」


だからさっき言ったじゃん…今日は午後から…って、もうこんな時間!?
わああ、ネズミ、どうしよう!

お髪を整えて差し上げましょうか、陛下

もう、今日は遅刻でいいかな…

いや、まだ間に合うだろ?

行きたくないよ、せっかくネズミがいるのに。もう今日は休み…

だめだって。ごねるなよ、大人げない。はやく着替えて用意しないと、ほんとに遅刻するぞ

じゃ、ネズミ…手伝って?

…あんたなぁ。それ、反則





タイトルは、macleさまよりお借りしました。


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