夜更かしパーティ


!)ホストパロ、ネズ紫
「地上に舞い降りた悪魔」の続き



「おうおう、似合うじゃないかイヴ」

そう囃し立て、やにさがった顔で笑う力河を殴り付けたい衝動に駆られるが、ネズミはぐっと拳を握りしめて耐える。
それに、啖呵を切ってしまった手前もある。後戻りすることなど、ネズミの矜持が許さない。

「おれがいない間に、店つぶしてんじゃねぇぞ」
「はっはっ、大丈夫だ、ナンバーツーに頑張ってもらうからな。おまえは安心して行ってこい」





「お待たせいたしました。ぼくは紫苑と申します。お客さまのお名前は?」
「…ネズミ」
「初めまして、ネズミさま。よろしくお願いします」

二時間も待たされ、ネズミはふて腐れて座っていた。仏頂面のネズミに向かって紫苑はぺこりとお辞儀をし、へにゃりと微笑む。そんな紫苑を、ネズミは横目でぬかりなく観察する。

礼の角度がなってない。それに、その情けない笑い方はなんだ。
はん、これでこの店のナンバーワンだと?笑わせやがる。

ネズミは心の中で紫苑をこき下ろし、酷薄な笑みを唇に乗せてせせら笑う。

「ずいぶん、待たせてくださったのね。この後も、指名が入ってらっしゃるの?」
「いえ、ネズミさまが最後ですが…」

紫苑は不安そうに眦と眉を下げ、俯く。ネズミは容赦ない視線で、その姿を上から下まで眺め下ろす。
白兎のようなふわふわの白髪、優しげな容貌、服装はといえば、上まできっちりボタンを留めた白いシャツに赤いネクタイ、ベストは上品な光沢のある水色、スーツは白のストライプ柄。
背後に白い羽でも見えそうな雰囲気だ。

「あら、それなら良かった。今夜はとことん、お酒に付き合っていただこうかしら」
「…あ、あの、すみません、ネズミさま。ぼく、アルコールに弱いんです」
「…はあ?」

客の酒に付き合えないホストなんて、あり得るのか?

ネズミは一瞬呆気にとられ、紫苑の顔を見上げる。
女装して壮絶な美人に変身しているネズミにまじまじと見つめられ、紫苑はほんのりと頬を染める。

「本当に…あの、すみません。でも、ネズミさまのお話をお聞きするくらいなら…ぼくにも出来るかと…」
「は…ははははっ」

おろおろする紫苑があまりに滑稽で、罵倒しようと思っていたのに吹き出してしまう。

「あの、…あの、ネズミさま?ネズミさま…」

こんな…こんな奴が、人気ホスト!自分とはあまりに違いすぎる。
だが、何故か紫苑に癒されているのも否めない事実だった。

「ははっ、ははは…っ、あんた、おかしすぎ。いつまで突っ立ってるつもり?座れば」
「は…、はい!」
「じゃあ、愚痴聞いてくれる?雇い主がさ…」

隣に座った紫苑の腰を引き寄せ、耳たぶを軽く啄み、キスをする。
途端に真っ赤になる紫苑に、愛しさが込み上げてくる。

ああ、これは。
一目惚れ、というものなのだろうか。

ふふっ、と妖艶な忍び笑いをして、ネズミは紫苑の耳元で囁く。

「話なら、いくらでも聞いてくれるんだよな、紫苑さん?」

…長い長い夜更かしパーティは、まだ始まったばかりだった。


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タイトルは、macleさまよりお借りしました。


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