地上に舞い降りた悪魔


!)ホストパロ、ネズ紫

つややかに翻る黒髪、あでやかな微笑み、耳に心地よく響く美しい声、甘く囁く口説き文句、そして何より、男女問わず惚れ惚れさせるその容姿、中性的でありながら蠱惑的な美貌。
それらすべてを使い、人々を隷属させ、高揚させ、担ぎ上げ、底の見えない恋へと突き落とす彼は、さながら…





これが、イヴ…もといネズミの評判だった。
ネズミは「イヴ」という源氏名を使ってホストをしている。見習い期間のうちから女性客から指名が相次ぎ、あれよあれよという間にナンバーワンまで上り詰め、カリスマホストとしての名声をほしいままにするようになった。
そんなネズミが、繁華街を肩で風を切って歩くようになって二年、いままたライバル店に新星が現れようとしていた。

「そういうことで、だ」
「…なにが、そういうことなんだよ、おっさん」
「ちっ、甘い言葉は客専用か。素顔はまったくかわいくねぇガキだな」
「おっさん口説いてもしょうがないだろ。で?」
「ああ…」

ネズミの勤めるクラブの経営者である力河は、勿体ぶってひとつ咳払いをする。
今夜すでに指名客が入っているにも関わらず呼び出されたネズミは、早くしてくれとばかりにイライラと靴底で床を鳴らした。

「おまえも噂は聞いたことあるだろう、イヴ」
「さあ?なんの噂?」
「強がってすっとぼけてんじゃねぇよ。うちと競合してるクラブで、ここ最近のしあがってきたナンバーワンの…」
「ふん、天使ちゃんって噂の子?たしか名前は…紫苑、だっけ。見たことないけど、そんな奴がこのおれに敵うわけが」
「痴れ者め!見たことない、っていうのが問題なのが分からんか。敵を見くびっちゃ、痛い目見るぞ」
「へぇ。おっさん、そいつ見てきたんだ。そいつ、どうだった?」
「知らん。見てないからな」

力河はふんぞり返って、そう言い切った。一方ネズミは肩透かしをくらって、目を見開く。

「おっさん…」
「だからイヴ、おまえちょっと見てこい」
「は?」
「でもおまえがイヴだとばれちゃ少々まずいからな、女装していけ」
「はあ?」
「要するに、偵察だ。その紫苑とやらの最近の集客はすごいらしいぞ。そのあおりで、まわりのちゃちなクラブは閑古鳥が鳴いてる始末だ。うちもそんな事にならんうちに、対策法考えとかにゃ…」

ふむふむ、と一人合点して満足げに頷く力河に、ついにネズミはぶちギレて捲し立てる。

「だからって、なんでおれ?下っ端行かせりゃいいだろ!おれ、今日も明日もその先一週間、指名客詰まってんだけど?ていうか、今この瞬間も客待たせてるし」
「うるせぇな、おまえ以外に女装がサマになる奴がウチにいねぇんだ。指名客?んなもんキャンセルしろ」
「ちょ、あんた、横暴にも程があるぜ、」
「黙れ、雇い主の命令が聞けんのか。それともなにか、おまえの顧客は一回キャンセルしたくらいで離れていくのか?ああ?その程度か」

ふん、と鼻で笑われ、ネズミは頭にカッと血がのぼる。
そして、勢いで言ってしまったのだった。

「ふふん、そんなに言うんなら、このおれが行って、そいつをとくと見てきてやろうじゃないか」

言ってから、しまった、と気付くが時既に遅し。
にんまりと笑った力河に、これを着ろとドレスを手渡され、ネズミはロッカールームへと追いやられていった。


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タイトルは、macleさまよりお借りしました。


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