ありがとうと囁く


!)注意
・アニメのラストのパロディ
・というか脳内補完
・「真実の世界」の続きでは 無 い
・勝手に台詞捏造してる
・ナチュラルにアニメの流れを変更
・ラストの感動がぶち壊しかも
・ちなみにネズミは紫苑の嫁
・以上が大丈夫な方のみどうぞ



ネズミは、エリウリアスが天井を突き破って去っていった空を、呆然と見上げていた。

「ネズミ…?」
「…っ」
「いま、沙布の歌声が…」
「…ふっ」

心臓を撃ち抜かれていたはずの紫苑は、ふらつきもせず立ち上がる。
エリウリアスと沙布が、二人の傷を癒してくれたらしい。
ネズミは、笑みをこぼした。

「…紫苑」
「うん?」
「そろそろ、帰るか」
「うん」





バラックの残骸を踏み締めながら、変わり果てた西ブロックを進む。
地下の部屋の入口は、瓦礫に埋もれながらも無事に残っていた。
つまずかないよう注意深く階段を下り、地下室の軋むドアを開ける。

「ただいま」
「ばか、誰がおかえりって言うんだよ」
「え?ぼくは、ここの本たちに言ったんだ」
「あっ、そう」
「懐かしい匂いがする」
「…立ち直り早いな。あんた、いったん死んだんだぞ」

はあ、とネズミは溜め息をつく。
脳裏に、沙布という少女とエリウリアスがよぎった。耳裏には、あの歌も蘇る。

「ネズミ」

紫苑が、水の入ったコップを差し出していた。

「…ああ、ありがと」

その水を一気に飲み干す。
うまい。
水をうまいと感じるとき、生きていると痛感する。
生きている、生きている、生きている。
死は目前に迫っていた。でも、生きて戻ってきたんだ。

ほう、と長く息を吐き出す。安堵の溜め息。

「…紫苑」
「うん?」
「行くぞ」
「え?」
「着替えるひまもなくて悪いな。でも、ついてこい」
「え、ちょっと、ネズミ?」
「壁はなくなった。きっと、ここの住人も、No.6の人間も、あそこへ行くだろう。あんたのママも、来るんじゃないか」
「どこに」
「だから、壁があった場所だよ」

耳にはまだ、風の歌が、沙布とエリウリアスの歌が響いていた。
紫苑の手をひいて、地上へ出る。

そこに着いて、息をのむ。
壁は根こそぎ抉られたように、大きな亀裂を残して消えていた。

「…この光景を、あんたに見せたかったんだろうな」

ネズミは呟く。

「え?」
「…エリウリアスは。沙布は」
「…ああ」

紫苑は、ネズミの顔から壁があった場所へと視線を戻す。

「No.6の壁はなくなった。ここから始まるのは…」

ここから始まるのは、新しい都市の物語。
そして、それを創るのは…

紫苑は拳を握りしめる。
もうこの悲劇を繰り返しはしない。

ネズミはくるりと踵を返す。
もと来た道を、引き返す。

「…ネズミ」

待って、と手を伸ばす。
ネズミは振り返り、ふっと笑った。
そのまま口付けられる。

「あんたなら、大丈夫さ」
「え…」

ふふっと笑い、ネズミはひらりと手を振った。

「ママに会ったら、よろしく伝えてくれる?」
「ネズミ、きみは?母さん、会いたがると思うけど」
「おれ?とてもじゃないけど、こんな姿、レディーの前に晒せないね。服は血だらけ、髪はぼさぼさ。後日改めてごあいさつに伺わせていただく」
「そっか。またね」
「ああ」

ネズミの言った通り、壁際には徐々に人が集まりつつあった。




タイトルは、さまよりお借りしました。


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