03
「じゃあまず、この一週間で食べたものを思い出してみようか」
ようやく二人とも落ち着き、向かい合って座り、白湯をすすっている。
「7日前に食べたものなんか、あんた覚えてるわけ?」 「もちろん。えっと、普通にクラッカーだった。湿気てもなかったしカビてもなかった。6日前はシチュー、5日前もその残り、4日前は乾パンと干し肉だったよな」 「さっすが。でも3日前のはおれも覚えてる。豪勢なパイだったよな」 「うん、パイとサラダ。一昨日はまたクラッカーで」 「昨日もクラッカーで」 「それで、今日は乾パンだけだよな。…それで肝心なのは、きみは食べてて、ぼくは食べてないものが何なのか、だよね」
うーん、と紫苑は考え込む。 ネズミも眉をしかめ、首をひねる。
「同じもの食べてるよね?」 「おれも外食なんかしないし。危険すぎる」 「拾い食いとかしてないね?」 「まさか、あんたじゃあるまいし」 「え、ぼくだって、そんなことしないよ。ネズミ、ちゃんと思い出してよ」 「…あ」 「なに、思い出した?」 「…酒を、飲んだな」 「は?」
すっ、と紫苑は目を細めた。 その視線に咎められ、ネズミはたじろぐ。
「いや、飲み屋に行ったとかじゃないぜ。ファンからもらった小さな小瓶の酒を、家で飲んだ」 「ふぅん。いつ?」 「…昨日の夜。あんたが寝てから」 「確実に、それが原因だと思うけど。ねぇ?」 「否定は…しない」 「なんで不用心にそんなもの飲んだんだ」 「…上質なシャンパンだったし。味もちゃんとしてたし」
ネズミは、しゅん、としおらしくうなだれた。 そのあまりの可愛さに、怒っていた紫苑も頬をゆるませる。
「ま、ぼくはきみが女の子のままでもかまわないんだよ?」 「紫苑…!」 「もともと、きみの不注意が原因だし?」 「なっ…、見捨てるなよ、あんた生態学専攻の元エリートだろ?なんか薬でも作れないのかよ」 「そんなこと言われても…だいたいそれ、人にものを頼む態度じゃないよ」 「…すまない紫苑、どうにかおれを元に戻してくれ」 「えー、もっと可愛く」 「は?」 「もっと可愛くおねだりしてよ」 「なっ…、ふざけんな」 「じゃっ、知らないよ?」 「うっ…」
さて、この後のことは推して測るべし。 数日後には、紫苑のおかげか単に薬の効き目が切れただけなのか、無事ネズミは男に戻れたようだが、久しぶりに劇場に現れた彼はげっそりやつれていたという。 一方、紫苑の肌つやは輝かんばかりであったとか、そうでなかったとか。
…覚えとけよ、紫苑
え?なんのこと、ネズミ?
とぼけんな。…ふふっ、あの酒、まだ残ってんだからな
えっ…、ええ!?
いつかあんたにも、同じ思いをさせてやる…!
41000hit、塩水さまより『NO.6でネズミ後天性女体化ネタで紫ネズ』というキリリクでした! 素敵なリクエストをありがとうございます!! もうニヤニヤしながら楽しく書かせていただきました!(楽しいのはきっと私だけですが…すみませんんん) どうにか…こう、脳内補完でよろしくお願いします…!今回もラスト丸投げしてしまいました…(;´`) あ、でも、ごみばこにある女体化ネタの二人は、この二人のその後だったりします。 ごみばこのは、あまりにひどかったのでボツネタにしたんですけどね…(^^; 一応この二人は原作沿いです…妙にネズミがしおらしいけど…ああ力量不足に歯軋りです…うう。
こんな駄文でごめんなさい、返品及び書き直し受け付けておりますので…!m(__)m
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