甘い夢に向かって


きみはいつも、ぼくより先を歩いていて。
追いつこうと頑張るのに、ぼくが進むと、きみも進むんだ。
だから、差は依然として縮まないまま。
きみの隣を歩きたい、だからぼくは今よりもっと頑張るよ。





イヌカシの仕事からへ行く途中、凍えた子供たちに上着を剥ぎ取られた。
しかし、自分よりはるかに薄着の子供からそれを取り返すこともできず、そのまま見送った。

「あれっ、紫苑、上着はどうした」
「うん、なくした」
「大丈夫かよ、おい」

イヌカシに心配されたが、ないものはしょうがない。
ひりひり凍てつくように冷たい水に手をひたしながら犬たちを洗う。

「寒いのにごめんね」
犬がなるべく寒くないよう、急いで毛皮の水気を布切れで拭き取る。

「よし、今日はもう帰っていいぞ。ほらこれ、仕事賃」

帰り道、イヌカシからもらった金でいつもの乾パンと干し肉を買う。

あれ、なんだか足がふわふわする。
こんなんじゃだめだ、また子供たちに横取りされて、ネズミに笑われてしまう。

早歩きで家路を急ぐ。
今日はやけに道のりが長く感じた。
やっとのことで地下の部屋の前にたどり着き、ドアを開けたところまでは覚えている。
でも、それから先が記憶にない。
つまり、ぼくはそこで気を失ってしまったようだ。

部屋に入って安心した瞬間に気が抜けたのかな。
べつに、気を張ってたつもりはないんだけど。

薄れゆく意識の中で、そう思う。
眼裏に、去っていくネズミの背中が見えた気がした。



タイトルは、さまより。


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