家出少年ネズミ
!)学パロ、ネズ紫 突っ張ってる中学生ネズミ×優しい新米教師紫苑
職員室の電話が鳴る。 じりじりそれを待っていた紫苑は、もぎ取るように電話口に出る。
「もしもし、No.6学園中等部です」 「こちら、三浦警察署ですが、2年C組の担任、紫苑先生にかわっていただけますか」 「あっ、はい、ぼくです」 「ネズミ君という生徒を保護してますが、できれば先生に迎えに来ていただけます?両親に会いたくないと頑なな様子なので」 「は、はいっ、すぐ参ります!」
家出少年ネズミ
「すみませんっ、ご迷惑おかけしましたっ」
ばんっ、とドアを勢い良く開け、若い中学教師…紫苑が警察署に入ってくる。 取り乱した様子の紫苑とは対照的に、落ち着いて冷淡とも取れる警察官が応対する。
「あ、2年C組の紫苑先生ですね」 「は、はい!」 「私は羅史といいます。それで、ネズミ君ですが、こちらの部屋にいます。ご案内しましょう、ついてきてください」 「あ、あのっ」 「なんでしょう」 「ネズミはどうやって見つかったんですか?そもそも都内から三浦半島まで…金も持たない中学生が自力で来るなんて…」 「紫苑先生は、ここまでどうやって来られました?」 「は、え、ぼくですか?」 「そう、交通手段です」 「ご連絡を受けてから、急いで車で…」 「同じですよ、ネズミ君も。道端に停車していた車を窃盗して三浦半島まで来た。でもここで事故を起こし、我々に保護されたと…なんのことはない、簡単なことです」 「えっ、事故、…交通事故ですかっ?」
事故、と聞いて紫苑は狼狽する。 あたふたしている、いかにも新米な紫苑をちらりと一瞥し、安心させるために羅史は僅かに微笑んだ。
「ああ、ご心配には及びませんよ。軽い接触事故のはずみで溝にはまり、道路上で車が動けなくなったので通報されただけです。車体の損傷はありましたが、怪我人は1人も出ていませんよ」 「そ、そうですか…良かった。ありがとうございます」
ほっ、と紫苑は肩の力を緩め、ふわっと羅史に笑いかける。 羅史は顔を背けそれを無視すると、ぴたりと足を止めた。
「…ここの部屋です。ふてくされていて、我々には手に負えません。どうにか説得して連れて帰ってください」
事務的にそう告げると、足早に羅史は去っていく。 感謝の言葉を言いそびれ、一瞬紫苑は戸惑ったが、すぐにネズミの部屋のドアに向き直る。 一旦深呼吸をして、紫苑はドアをノックした。
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