03


非常階段のコンクリートのステップを駆け上がる音が聞こえる。だんだんその足音の間隔が不規則になり、息切れの音まで聞こえるようになった。
誰だろう、とネズミはそちらを振り返った。屋上の柵の下から、真っ白い髪の毛がひょこひょこ揺れるのが目に入った。
おや、とネズミは片眉を上げた。

こいつ、なんでここに来た?

必死の面持ちで屋上へまろび出た紫苑は、一直線にネズミに駆け寄り、ネズミを羽交い締めにした。その姿勢で、掠れた声で言い募る。

「だめ…だ、飛び降りちゃ…、だ…め、だよっ」

…は?飛び降りる?こいつは何を…
荒唐無稽な発言に目を白黒させるネズミにおかまいなく、紫苑は必死に言う。

「自殺なんて…、絶対、だめ…っ、だ…!」

ああ、なるほど。こいつ、とんでもない勘違いをしてるわけだ。
…面白い。

あまりの可笑しさに思わず吹き出しそうになりながら、勢いよく紫苑の腕を振り払った。
笑いこらえ、しかしそんな表情を悟られないよう、紫苑に背を向けたまま言う。

「おれが自殺しようとあんたには関係ないだろ?」
「えっ」

紫苑のたじろぐ気配を感じ、ネズミは無自覚にもにやりと人の悪い笑みを浮かべる。

「何でそんなに止めるんだよ」

はっ、と背後で紫苑が息を呑む音がした。
次いで、紫苑はすうっと大きく息を吸い込むと、一気に捲し立てはじめた。

「関係ある!ぼくはきみが好きだから。きみのような綺麗な人間なんて、見たことがない。ぼくも今気付いたんだけど、クラスで一目見た瞬間、恋に落ちていたんだ」
「…………は?」

紫苑をからかっていたことも忘れ、突飛な言葉の数々にネズミは呆気にとられ、振り返って白髪の少年をまじまじと観察する。

真っ白い睫毛に縁取られた、思慮深そうな優しい瞳。表情はあくまで真摯で、その視線はまっすぐにネズミに注がれている。紫苑の唇が動き、やわらかい声が発せられる。

「きみに惹かれている、ネズミ」

こいつは、狂ってもいなければ、おれをからかっているのでもなさそうだ。
…わけが分からない。

「あんたな…」
「ぼくの名前は、あんたじゃないんだけど」
「…知ってる、紫苑だろ」
「えっ、覚えてたの?」

実をいえば、さっき頭をひねって思い出したんだがな。

心のなかでそう思ったが、目をまんまるく開いて嬉しそうにする紫苑を見て、口に出すのはやめておいた。かわりに、憎まれ口を叩いてみる。

「紫苑、あんたはおれが、人の名前も覚えられないほど、頭悪そうに見えるわけ?」
「えっ、違うよ」
「ふぅん?」

目を細めて意地悪く微笑んで見せると、紫苑は動揺してわたわたと両手を振った。

「そうじゃなくて…、きみって、誰に対しても興味がなさそうに見えるから、ぼくの名前も知らないんじゃないかって…」

こいつ、鈍感なのかと思ったら、なかなか鋭いやつ。

ネズミは久しぶりに、楽しい気分になっていた。
数歩の距離を詰め、風に吹かれてふわふわ流れる白髪に手を伸ばす。

「わっ、ネズ…?」
「それ、けっこう当たってるぜ」
「え?」
「おれはあまり他人に興味がない。…でも、」

紫苑の髪をくしゃりと撫で、髪の下から現れた耳に唇を近付け、囁いた。

「あんたには、興味があるかも…紫苑」


fin.
すっごく綺麗なネズミさんと、天然炸裂な紫苑さん、そんな紫苑さんにネズミさんぽかん…ww
ぽかんとするネズミさん可愛いですよね!
なんかネズ紫ぽいけど、紫ネズです(・ω・´)キリッ
見た目ネズ紫な、実は紫ネズっていうのが大好物なの!
受×攻ってすばらしいよね…!←

秋さん、素敵なネタをありがとうございました!_(..*)_


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