03


しかしその華やかな女性とも長くは続かなかったらしい。再び廊下の足音は一人分になっていた。
それが二人分になったのは、1週間後。聞こえてくるのは男の声だけ。女性の方の声が小さくて枢木の声だけが聞こえてくるのかと思っていたが、そうではなかった。今度の連れはどうやら男らしかった。
金髪碧眼の男で、茶髪で翡翠色の瞳の枢木とは似ていなかったから、兄弟ではなさそうだった。

室内楽の合わせに来ているだけか?
時折、チェロらしき音が聞こえてくる。
でも、金髪碧眼の男は楽器を持ち込んではいるが、枢木のヴァイオリンと合わせている音はしない。

…どうやら、彼は恋人で、枢木はバイだったようだ。
この世界、そんなに珍しいことではないが、向かいの住人がそうだと知って驚かない奴はいないだろう。
少なくとも俺はびっくりした。




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