哀しい心たち


ゼロレクイエムが終わって...ルルーシュは、死んだ。
僕が殺したその遺体は、ジェレミアが死守し、ルルーシュの墓は枢木神社の近くの山に、ひっそりとつくられた。

そこに行くのは、僕に赦されないなんて事は分かっている。
君を殺したのは、他でもないこの僕。
それを望んだのが、君自身だったとしても、僕は自分を赦さない。

だから


墓に…、君の眠る場所へ行きたくても、
君の最期に伝えられなかった事を言いに行きたくても、

ずっと我慢してきた。
それは、自分に与えられた罰だと。



それなのに。



その決心が揺らぎ始めたのはいつだったろう。
君が、穏やかな君が、僕の夢に出てくるようになってからだ。


僕はそれまでも毎日、君の夢をみていた。
君を殺す瞬間の夢を。
剣が君の体を貫く、君の温かい血しぶきを浴びる。
その生々しい感触、記憶。

いつも僕は汗びっしょりになって目を覚ます。

あぁ、今日も君を殺した。
僕はいつまで、君を殺し続けるのだろうか。


そう思って僕は泣く。
君のために?自分のために?分からない。

そんな夜を何度繰り返して来ただろう。
これからもずっと繰り返していくのだと思っていた。
それは自分に与えられた罰だと。


でも、あの日。
君の命日。

君の、優しい夢を見たんだ。

僕と君はアッシュフォードのテラスにいて、あたりは淡い光に包まれていて。
君は優しい顔で笑ってる。
でも、僕にたくさん話しかけてくれるその声は、聞こえないんだ。


夢が終わって目が覚めて、僕は君の声を忘れかけていることに気付いたよ。



君の、優しい夢。
もう一度君に逢いたくて。
そこにあるのは屍だと分かっていても、どうしても墓詣でをしたくなった。
君の命日ではなく、君の誕生日に。




12月4日の夜。
君の生前のように、5日へ日付が替わる瞬間に君を祝おうと、僕は夜に出発した。

場所の見当はついていた。
あの夏の日。僕が君を皇帝にしてやると約束した場所。街が見渡せる、山の頂上付近。

はたしてそこに墓はあった。
夜だから真っ暗のはずなのに、墓の辺りは仄かに明るかった。
灯りを持った人でもいるのだろうか?
用心して近付いていくと、それが人の形をしているのが見えた。
その人影が動くと光がふっと揺れる。

僕は気付いた。


人が灯りを持ってるんじゃない。
. . . . . . . . . . . .
人が光をまとっているんだ。


光をまとった人がこちらを振り向く。
とたんに僕は息を呑む。

心の片隅では分かっていた。
君がそこで待ってるってこと。



「ルルーシュ…っ!」



彼は柔らかに微笑んでゆっくり僕の名を呼んだ。



「スザク」




久しぶりに聞いた声。
忘れかけていた、あの声。

涙が溢れて止まらなかった。
もぅ二度と会えないと思ってた君。
君が目の前にいる。

恐る恐る手を伸ばして、君の頬に触れる。
君の亡霊はちゃんと実体があった。
嬉しくて嬉しくて、夢中で君を抱き締めた。
















「ずっと...会いたかった」

「俺もだ」




「お誕生日おめでとう」

「ああ。待っていた」




「僕、ずっと頑張ってきたよ」


「知ってる」




「君から受け継いだゼロは、ちゃんと『ゼロ』になれてるかな」


「おまえはよくやってるよ、スザク」







優しい世界。
そんなものより、僕は君の方が大切だったのに。
世界より君を守りたかった。






「ありがとう」













その日以来、僕はよくルルーシュの墓へ訪れるようになった。

君の亡霊は優しくて、あったかくて、強かった。
くじけそうになるたび、君の墓へ行った。
君はいつもそこにいた。
そこに行けば必ず君に会えた。
僕が何も話さなくても君には全部ばれていて、
たくさん励ましの言葉をくれた。


僕、すごく幸せだよ、ルルーシュ。
だって、君が戻ってきてくれたから。



そういえば、君を殺す夢も、もう見なくなった。
そのかわり、時々おだやかな君が僕の夢に出てくる。
その時の君は、どことなく寂しそうな表情をしていて、
やっぱり声は聞こえないんだ。










──枢木スザクよ


鮮やかな黄緑の髪を持つ少女。彼女は虚空に向かって囁く。


──それは、墓の亡霊は、おまえの心の幻想、幻覚、幻聴


彼女はくつくつ笑う。
口端を歪めて呟く。


──本当はここにいるのに…。なぁ、ルルーシュ?


──本当のルルーシュの霊は、ずっとおまえのそばにいる


──おまえの夢に出てくる喋らないルルーシュ…それが本物のルルーシュ


──本当に霊が夢に来ている時は、声が聞こえないものなのだ


──憐れなもの…


──おまえたちはすれ違ってばかりだな




END







*後書き


ガーコの2400のキリリクです。
スザルル1本!としか言われなかったので、葉瑠好みの薄暗いスザルル(^q^)
すみませんーw


以下、参考までに、着想時のメモ書きφ(..)
(葉瑠の筆力不足のため、本文の内容が不鮮明の方へ)


ルルーシュ墓場
スザク 追悼

幽霊ルルーシュ でもそれはスザクの心の幻覚

本当はここにいるのに

涙で曇った心には見えない
夢に本当に霊が来ているときは声を出さない




ではー、ありがとうございましたー_(..)_




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -