04


ひとさし舞うと、ネズミは優雅に一礼をし、得意気に微笑んだ。
無意識に紫苑は無心な拍手をしており、自分が何の嫉妬も含みもなく他人に賞賛を贈れることに少し驚いてさえいた。

「どうだった」
「素晴らしかった」
「それだけ?もっと気の利いた美麗辞句の用意はないわけ」
「見入っていて、他には何も考えられなかった。ごめん」
「…冗談の通じないやつだな。あんた、天然?」
「天然?そんなの言われたことないけど」
「あ」
「うん?」
「0時過ぎたな」

指摘されて腕時計を見る。ネズミも腕時計で時間を見ていた。この部屋は壁に防音工事が施されているため、壁がコンクリートのような固さで押しピンも釘も通らない。だから、掛け時計がなかった。

「ああ、そっか、もう寝るか?それとも徒歩で帰るか?」

そう言うと、ネズミは吹き出した。
ちがうよ、あんたの誕生日になったなと思っただけさ。おめでとう。

綺麗な顔のネズミに真正面から視線を合わせて祝辞を述べられ、紫苑は赤面した。他人からの言葉に照れるなんて何年ぶりだろう。

そんな紫苑を見て、ネズミはまた軽く笑った。そんなささやかな表情さえ美しく、全てを映画のようにフィルムにおさめても、飽くことなくスクリーンを見つめ続けていられるだろうと思った。

「あんた、真面目な顔して冗談言うんだな。徒歩で帰るか、だって。こんな嵐の中に放り出すつもり?」
「まさか。…え、外雨降ってるの?」
「すごい雨音だぜ、聞こえない?」
「…ほんとだ、聞こえる」
「ほら、やっぱり天然だ」
「そんなに連呼するなよ、天然って。風呂貸してやらないぞ」
「これはこれは陛下、失言申し上げました。お許し願えますか?」
「許してつかわす」
「ノリがいいな」

きみの調子が移った、と返せばネズミは唇の端をくぃと持ち上げ、そりゃ良かった、とどこか嬉しそうに笑った。





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