結局それは、ドタバタ喜劇


!)現代パロのクリスマスイブ
紫苑とネズミは同居、恋人。
歳は大学生くらい?
ネズ紫か紫ネズかは、ご想像にお任せ



「…紫苑。おれ今日、見ちゃったんだけど」

ネズミと同棲している賃貸マンションに帰った紫苑は、ドアを開けた瞬間に仁王立ちのネズミに迎えられた。
寒風に吹かれて頬を紅潮させた紫苑は、マフラーを外しながら、
「何を?」とネズミに問い返した。

「ああ、そう。あくまでとぼけるつもりか」
「なんだよ、煮え切らないなあ。言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれよネズミ」

冷凍庫に入れていたように冷えきったコートをハンガーに掛けながら、紫苑は困惑してネズミを見た。
ネズミは、怒っていた。

「ふざけるなよ!」

いきなり、胸ぐらを掴まれる。突然のことに反応しきれず、紫苑は手に持っていた鞄を床に落とし、よろめいた。

「ネズミ?」
「おれは見たんだ、あんたと山勢が仲良く二人で歩いてたのを!」
「え?」
「おれとじゃなく、山勢とクリスマスを過ごしたかったなら、遠慮なく言ってくれてよかったんだぜ?紫苑、」

燃え上がる怒りを宿した灰色の瞳が、紫苑をまっすぐに射抜く。
まばたきひとつせずに紫苑はそれを真っ向から受け止め、胸ぐらを掴んだネズミの手を握った。

「離してネズミ。ちょっと痛い」

そう言うと、ネズミは無言で紫苑を離し、自室に入って行った。
バタンッ、と閉められるドアの音が、乾いて響く。

紫苑は、落とした鞄の中から、綺麗に包装された小さな四角い箱を取り出す。
それは、ネズミへのクリスマスプレゼントだった。

本当は深夜0時に渡すつもりだったんだけどな、と思いながら、紫苑はそっとネズミの部屋を開ける。

「…ネズミ」

ネズミはこちらに背を向ける格好で、ベッドに座っていた。答えはない。だが、ネズミが身動ぎする気配は感じた。

「ぼくは、謝らないよ。言葉を免罪符にするなと言ったのは、きみだから。むしろきみは、礼を言うべきなんだ…もちろん、ぼくにではなく…山勢さんに」
「…山勢に?」
「うん。…ネズミ」

紫苑はプレゼントを手に持ったまま、ふうわりとネズミに後ろから抱きついた。ネズミの目の前に小さな箱をかざし、ぽとりと落とす。ネズミはそれを、両手で受け止めた。

「プレゼント、フォー・ユー」
「え?…紫苑、これは」
「そ。これを、一緒に選んでもらったんだ。いや、選んでもらったという言い方だと語弊があるな。それ、随分前にぼくが一人で決めてた。けど、ちゃんときみに似合うか、やっぱりちょっと不安だったから、買う前に山勢さんに太鼓判を押してもらった。それだけなんだ」

一気に種明かしをしながら、紫苑はぎゅうっとネズミを抱きしめた。
ネズミは紫苑のプレゼントを驚いて見つめ、箱の表面をいとおしげに撫でる。

「…そうだったのか。疑って悪かった、紫苑」
「きみが謝るなんて、珍しい。明日は雪かな」

くすり、とネズミが笑った。
機嫌はなおったらしい。

「だとしたら、ホワイトクリスマスだ」
「ねぇネズミ、知ってる?この30年間、東京でクリスマスに雪が降ったことはないんだよ」
「へぇ」

紫苑はネズミの首元に顔を埋める。ネズミの耳に紫苑の柔らかい白髪が当たり、ネズミは少しくすぐったかった。

「ネズミ。降るといいね、雪」

おれは嫌だけどな、寒いから。

思わず反射的にそう言いかけたが、ネズミは思うだけで口には出さなかった。
かわりに、照れくさそうにこう言った。

「紫苑、おれからもプレゼント、あるんだけど。ほしい?」


結局それは、ドタバタ喜劇
すべては聖夜の悪戯心のせいで。




クリスマスを5日も過ぎてからupするクリスマスイブ小説です。
みなさん、クリスマスは如何お過ごしでしたか?
私は一日中家にいました、はい。ディナーは母とですね、はい。
まあいつもと代わり映えしませんが、クリスマスって街が可愛くなるので非リア充の私もけっこう好きです。

紫苑とネズミのプレゼント交換、ってアイディアをアンケートにて頂いてたので、それを書きました!プレゼントは何だったんでしょうねー
きっとアクセサリーだと私はにらんでます(・ω・´)

明日は大晦日ですね。
ではでは皆さま、良いお年を!!


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