セピアにプリンを召し上がれ




時々、どうしようもなく甘えたい衝動に駆られる時があるんだ。



そんな時は、素直にきみに甘えることにしてる。



「ねーずみ。」


自分でも分かるほどの甘ったるい声で君を呼んでみる。

傍らに座って読書に勤しんでいた彼は、緩慢な動作で灰色の視線をぼくに移す。

あ、うざったそうな顔してるし。



「なんですか?坊や。」

「かまってよ。」


素直に要求すれば、更に眉がひそめられて。


「…なんで。おれ今読書中。」


「なんでって…甘えたい気分なんだ。いいじゃない、ちょっとだけ。」


そう言い募ると、面倒くさいと言わんばかりの顔をされる。全く、せっかくの美貌が台無しだよ。


「あんた、ほんと甘えただよな。」


呆れたようにそう言われて、確かにそうかもしれないと思ってしまう。


でも、


「きみ限定のね。」


まじめな顔してそう言うと、少し目を見開いて。
表情が困ったような顔に変わる。



「生憎、おれは甘いものって苦手なんだけど?」

苦笑いを浮かべながら、そう言われる、けど。


「たまには糖分も必要なんだよ?ネズミ。」


にっこり。

満面の笑みと共に言うと、とうとうため息をつかれて下を向いてしまった。

でもすぐに、顔を上げたネズミは、珍しく微笑んでいた。

見るもの全てを惹きつけてやまない、その笑み。
心臓が高鳴る。

ああ、今すぐ抱きついちゃいたい。


「全く、あんたには適わないな。」


言いながら、ゆっくりとその長い両手を広げてくれて。


「ほら、おいで紫苑。」

迷わずその中に飛び込んだ。





セピアにプリンを
召し上がれ









ねぇ、今すぐ食べて?


10/30 22:33(Sun)


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