あれから4年。少年は15歳になっていた。この冬には高校受験が待っている。

かさっ。
背後で落ち葉を踏む音がした。

「海里」
名を呼ばれた。
片時も忘れたことのない、透明な声色。
まさかと思って、振り向く。

「久しぶり」
「…綺羅」
「勘、当たっただろ?」

すらりと背の高い綺羅が、得意気な笑みを浮かべて立っていた。
あまりに驚き、手にしたイチョウの葉をぽろりと取り落とす。

ひらり、ひらり、かさっ。
また地面へ着地した葉を、綺羅はかがんで拾い上げ、くるりと回す。それから、あれっと声をあげる。

「あれ、おまえ、メガネになってる」
「え、ああ、これ。視力かなり落ちてるんだ。裸眼じゃあそこの時計もろくに見えない」

そう言って、10メートルも離れていない時計台を指差した。

「へぇ。じゃあさ」
手品のように素早く、眼鏡をかすめ取られる。

「あっ、返せよ」
「だめ。ほら、今何時?」
綺羅は楽しそうに笑っている。
少年は眼鏡を取り返すことを諦め、時計台を仰ぐ。

「短針は見えるの?」
「なんとなく。4時くらい」
「あたり。じゃあ長針」
「あー…目を細めたらなんとか」
「ふうん。秒針は?」
「ぜんっぜん、見えない」

突然、綺羅は吹き出した。腹をかかえて笑い出す。

「ははははっ、おまえ最高っ」
「なんだよ、どうしたんだよ」
「秒針なんてもとからないって、あの時計、はははっ」
「からかうなよ…」

少年がふてくされて見せると、綺羅はますます高く笑った。
4年前と同じ笑顔だった。



Fin.
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<あとがき>

ここまで読んでくださりありがとうございました。お疲れさまです!
灰さんから企画をいただいた当初は1ページくらいの短編のつもりだったんですが、なかなかまとまらなくてずるずると中編の長さになってしまいました…(笑)
それに、書き始めた頃は小学校低学年くらいの綺羅と海里をイメージしてたんですが…だんだん会話がマセてきましてね←
結局5年生にしました。
ということで、本編の年齢がズレます!(え
本編、中学生の設定だったけど、高校生ってことにします!のちほど訂正いたしますので、それまでどうか目をつぶってやって下さいな。

本文の蘊蓄部分はすべてWikipediaを参考にさせていただきました。
綺羅が歌うマザーグースの和訳は、私が勝手に適当に訳しただけなので、Wikipediaの和訳を引用しておきます。

Old Mother Goose(マザーグースのおばさん)

Old Mother Goose,
マザーグースのおばさんは
When she wanted to wander,
散歩がしたくなったときは
Would ride through the air
ご亭主の背中にまたがって
On a very fine gander.
空中を飛び回るんだとさ

Jack's mother came in,
するとジャックのママがやってきて
And caught the goose soon,
マザーグースを捕まえると
And mounting its back,
その背中にまたがって
Flew up to the moon.
月まで飛んでいったとさ


ではでは…、もう言い忘れた事はないですかね…
最後に、灰さん、こんな駄文を押し付けてしまいましたが、どうぞ受け取ってください!^^*
お誕生日おめでとう\(^o^)/

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