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吐き出した精と泡を湯で洗い流す。
イェマは衣服の上から湯を掛けたため、濡れた衣がべっしょりと肌に張り付いている。しかしそれを着替えたり、乾かそうという素振りは全く見せず、着替えとして用意されていた見慣れない作りにもたついているゼノウィズの手から衣を奪い取ると、適当に腰に巻きつかせて手を引いて歩き始めた。
「えっ、い、イェマ?」
「どうせすぐに脱ぐ、ならそのままでいいだろう」
べしゃべしゃと湯を滴らせながら歩くイェマも、腰に服を巻き付けただけの自身も、それでいいとは言い難い恰好だ。いや、だが、しかし、と口にするが、その歩は止まる気配もなく、腕を引く力も緩まない。
なにより、下腹の底で燻り続けている熱が、引き留めようとする気持ちを削ぐ。
最終的には、あまり人に出会わないことを祈りながら、その後ろを俯き加減でついて行った。
天幕につくまでに、奇跡的に誰かに出会ったり、出くわしたりということはなかった。
が、多分それは俯いている視界の中での話であって、自営地で兵と出会わず出歩くなど難しいだろうし、遠目には人がいたのだろうなと思うと、羞恥で顔が熱くなるのがわかった。
腕を引かれ、毛皮と織物が敷かれた、クッションが幾つも置かれている木製の広い寝台の上に押される。
おずおずと指示通り寝台に腰掛けると、イェマは何の恥じらいもなしに、濡れていた衣服を脱ぎ捨て始めた。
目の前で惜し気もなくみずみずしい白い肌を晒される。幼い、と言っても見た目は人間の十一、二歳程度なので、流石に幼児というわけではないが、それでも自身が戦場に立ったのは十六になった頃だったことを考えると随分幼い。
人の身とは比べ物にならない力を持つというのに、その身体は、まだ未熟な少年のものだった。
男故の多少の筋だった感と、戦士故の筋肉はついているが、それは鎧のようなものではなく、薄くしなやかで、細く伸びやかな若木を彷彿とさせる。とてもこれであの戦斧を振り回すとは思えない。
ただ、その白い肌に両脇から腹にかけて刻まれた碧い刺青が、唯一その身体で異様だった。
まるで雷が複雑に、しかし何らかの規則性を持って絡まっているような紋様で、それはイェマの瞳のように、刺青というには内から発光でもしていそうな鮮やかな青をしている。
その神秘的な青さに魅入っている間に下履きと一緒に下着も脱ぎ、全裸になると、寝台に上がり、勢いよく抱き着いてきた。
予想外の勢いに後ろに倒れながら、触れたイェマの身体が冷えていることに気が付く。
濡れた服を着たまま歩けば、幾らそれが湯であろうと冷えてしまうのは判然だ。
「イェマ、身体が」
そうさせた原因が自分であるだけに酷く申し訳なくなる。もう一度湯浴みをした方が良いのではと提案しようとすれば、猫のようにすり寄りながら、イェマは、いい、と言った。
「別にいい。おまえが温めろ」
喜悦たっぷりに身体に乗り上げてくるイェマの身体は、完全にゼノウィズの身体に収まってしまう。イェマが酷く小柄だとか、ゼノウィズが類を見ない巨漢というわけではない。ただ純粋に、子供と大人の体格差なのだが、改めて明白になる。
後ろ手に腕をついて、上半身を僅かに浮かせながら、身体の上のまだ軽いと表現してもいい重さにどうしていいのか、ゼノウィズは硬直する。
相手は全裸。自身も腰に巻き付けた服一枚だ。腰同士が密着し、布越しの感覚を意識せざるを得ない。
「風呂の時にも思ったが、おまえの身体は美しいな。鍛え上げられているが、無駄がない。戦士のそれであり、剣闘士のものではない」
腹や胸板、腕を確かめるように撫で、楽しそうに神が笑う。
「――そそるな」
「なッ」
僅かに低く囁かれた不穏な言葉に過剰に反応してしまえば、笑いながら神が脇腹の傷痕を指でなぞった。
「この傷はどうした?」
「ッ、以前、剣が掠って……」
「ふうん。じゃあこの傷は?」
「それ、は、槍が」
「貫通したのか」
「は、い。細身の槍で……」
「じゃあこれは?」
これは、これは、と寝物語を強請る子供のように、身体中に散っている傷を、一つ一つ神が問う。
その度に、ゆっくりと愛撫するように傷をなぞられて声が詰まる。この天幕に入ってから頭の中を一杯にしている思考を、むず痒い快楽が掻き乱していく。
(――続きは寝所で、と言われてここにいるということは、つまりはこの後そういう、いやもう既に始まっているのか?いや別に期待をしているとかそういう訳では断じて、いや断じてというと語弊があるが、いやそうではなくて)
「これは?」
右肩の傷を撫でられ、碧い目が覗き込んでくる。
(――あ)
かなり深くまで届いている傷。あの時はそれどころではなかったし、痛みで分からなかったが、骨も砕けていたかもしれない。受け流したことで勢いが弱まり、鎧と骨で止まったが、今思えば幸運だった。本気で振り下ろされていれば肩から切断されていただろう。
「――これは?」
答えろ、と碧い目が言っている。
「い……イェマ、に」
目の前の神と出会った時に出来た傷。イェマに癒されたため、既に塞がっているが、その怪我の酷さは痕からでも十分解る。
問いへの答えに神は満足そうに笑い、伸びあがって傷痕に顔を寄せると、口を開いたかと思えば思い切り噛みついてきた。
「イ゙ッ――!」
歯が皮に突き刺さる程強く噛まれ、痛みに驚く声を慌てて飲み込む。
何事かと顔を向ければ、目を楽しそうに細めた神が、肩口に噛みつきながらこちらを見ている。
特に深々と食い込んでいた犬歯辺りからは、じわりと血が滲んでいるのを視界の端に捉えたところで、罠にかかったなとばかりに唇を奪われる。
何度も啄んでは鼻と鼻が触れ合う程度に離れ、また嬉々として啄まれるを繰り返され、とうとうゼノウィズは音を上げた。
「い、イェマ!」
やわやわと下唇を食まれている途中で顔を離せば、途端に幼子の端整な顔は不満に顰められる。
「なんだ、気にいらないか」
「いえ、まさか、ではなくて、あの」
片手で顔を覆いながら、震える息を長々と吐く。
「――私の、現状はイェマが一番お解りでしょうから、少し、その、手加減をして頂けると……」
「現状?」
はて、とイェマが小首を傾げる。緻密な装飾が施された耳飾りも揺れ、チリン、と美しい音を立てる。
「なんだ、おまえまさか童貞」
「ではない」
流石にそれは沽券にかかわるので、食い気味で否定する。
「……ではなくて、ですね。その、印を刻まれてから、貴方に触れられたりするだけで……その、心地、良いので」
肌が粟立つだけではない。悦びに魂が震える。それが意図的に触れられているのなら猶更だ。その度に熱が高ぶり、鼓動が速くなる。もっと触れて欲しいという欲が込み上げ、己の浅ましさに嫌気が差す。
こんな感情を抱いたことがないので、頼むからもう少しゆっくり事を進めて欲しかった。まるで生娘のようで情けないと自嘲するが、事実なのでどうしようもない。
イェマの反応が無いので、大の男がと呆れられてしまったかと慌てて顔を上げれば、少し目を見開いてゼノウィズを見ている。
「……心地がいい?」
「あ、ああ」
「おれに触られて?」
何か不味いことでも言ったのだろうかと、思わず素で頷いてしまう。
するとイェマの肩が震えはじめた。
「ふ」
「い、イェマ?」
「ふは、はは、くっ、ははは、はははははっ!」
身体の上で身体を震わせ、爆笑するイェマに一体何がそんなに笑えるのかと目を白黒させる。
「ははは、おれに触られて心地がいいのか。くふ、それはそれは」
まだなだらかな喉を震わせ、くくくと笑うイェマは、今までで一番と言っていいほど満悦の体だ。
「ゼノウィズ、おまえ、余程おれのことが好きなんだな」
「――な!?」
「ふくく、そう大声をだすな。いいか?まず、おまえに刻んだおれの印は、第一に、おまえの支配権をおれに委ねるものだ。この意味がわかるやつは、おいそれとおまえに手を出しはしない。それはおれに喧嘩を売ることと同じだからな。第二に、おれにおまえの魂を繋げるものだ」
左頬に指を這わせて、にんまりと唇に笑みを浮かべる。
「魂を繋げれば、おまえがどこに行こうが、おれは即座に探し、見つけられる。反対におまえも、おれほどではないが、おれが近くにいればわかる程度には感じるだろうな」
後は、そうだな。まあ、おれの恩恵をおまえに与えやすいなど利点もいくつかあるが、それはおまけ程度というやつだ。と、至極楽しそうにイェマは言葉を続ける。
「つまりは、この契約と印の意味は、これがある限りおれから離れられないし、
言っていることが上手く呑み込めず、見つめていると、半ば呆れ混じりの笑いを神は零す。
「つまり、自身持ってはいない感情や感覚。ある存在を憎めだとか、触られたら激しく痛みを感じろ、なんてことはその印では出来ないということだ。それではただの傀儡だろう。そういったことを強いるのはまた別の力――呪いや、魔術といったたぐいのものだ。
面白いものを見つけたように、碧眼が輝いた。
「例えばおれが何かに怒りを感じれば、以前よりおまえはそれをより強く感じるだろうな。これは、印を通じておれの怒りがおまえに伝わるからだ。そして、例えばおまえがおれに畏怖を感じた時、それもまた以前より強く感じるだろう。
イェマが何を言いたいのか、そしてその意味が段々解って来て、顔に血が上る。
「つまりおれに触れられて“嬉しい”だとか、“心地好い”と強く思うのは、印によって魂が近くにあるため、より強く感じているからだ。――だがそれは、元々そう思っていないと、存在しない感覚というわけだ」
わかったか?と問われるが、あ、だとか、う、だとか碌に声が出てこない。
つまり、気持ちいいから手加減してくれと言ったが、元々の原因は己にあり、更に無知だったからとは言え、それを相手に伝えてしまったというのは、そう感じてしまうほど好きなのだと言っているのも同然だったわけだ。
余りの羞恥に言葉もない。
「ゼノウィズー?」
真っ赤に染まった顔を隠すように俯けば、身体を下にずらして神が覗き込んでにまにまと笑う。
「そうかそうか、そんなにおれが好きか」
可愛いやつめ、と揶揄われ、カッと頭に血が上った。
(――俺は、貴方ほど眩しい存在を、知らないのだ。)
雷のように落ちてきて、暗い道を一瞬にして照らし、魂を落としたのは貴方だというのに。
その八つ当たりのような怒りのまま顔を上げ、神に向ける瞳に力を込める。
おや?という表情をした神を見据え、堂々と肯定した。
「――ああ、好きだ。……慕っている」
虚を突かれたのか、青天の瞳をきょとんと見開いたイェマは暫くして「ほおう?」と呟くと、その瞳を細めて意味ありげに微笑んだ。
(――っ、あ)
魂を通じて、この神が今までで一番といって良いほど悦んでいるのが伝わってくる。
そのとろけるような瞳の色は、肥えた獲物をみつけた獣のようで。ごくりと空唾を呑んだ。
「――ゼノウィズ」
幼子の姿の神は無邪気に肌を摺り寄せ、甘い毒のように囁く。
「愛しいおれの
目の前でぶるぶると震える筋肉質な臀部を見つめ、存外耐えるものだなと
鞣された皮のような強靭な肌と、鍛え上げられ筋肉のついた硬い尻。が、その間の蕾は、朱く色づきながら今にも柔らかくほころびそうに、ひくついていた。こうやって見ている間にも、存分に注ぎ込んだ香油がとろとろと溢れ、会陰を伝って滴っている。
愛してやると宣言してから、随分と弄り回した。幼子の姿の神に孔が見えるように尻を向けるだけでなく、更にその指で中を掻きまわされるなど羞恥以外の何物でもないだろう。
しかし、確かに言葉と態度で躊躇いと抵抗を始終示してはいたが、それでも印の力を使う前に従った。
今も敷布を破かんばかりに握りしめているが、枷などつけていないのに暴れようともしない。
その従順さが何から来ているか分かっているだけに、可愛くて可愛くて仕方がない。
「ほら零すな」
会陰を伝う香油を指で掬い、蕾に押し戻しながら潜り込ませる。
弄り回された蕾は、くちゅりと音を立てながら幼子の指など難なく咥え込んだ。途端に尻が大きく跳ねる。
香油で濡れ、弄られた後孔は既に熟れ切って、狭く熱い肉壁は柔く指を締め付ける。
その腹側の肉壁を指で探るように擦ってやると、荒い息と喘ぎを喉奥から零れるのが聞こえた。
「ここが好きだろう?」
少しだけ周辺の肉壁と違う感触のする場所を押し込み、ぐりぐりと撫で擦れば、喘ぎに明らかな快楽の色が乗る。
声は殺すなと初めに言ったからか、唇を噛み締めるなどはしていないが、それでも零さないで済むのなら零したくないのだろう。
そんな矜持を持ちつつ、腹を見せる獣のように屈服する矛盾が愛しくて、可愛くて。その矜持を、粉微塵になるほど愛で砕いてしまいたいとぞくぞくと凶暴なものが背筋を震わせる。
そもそも戦神とは凶暴さを本質に抱いている神だ。どれだけ優しく、愛してやろうとしても、慈しみ深い神のようにはいかない。どう転んでもその凶暴さは切り離せない。ならば、凶暴なまでに愛でるだけ。
ニィ、と歯を剥き出して独り笑うと、指先から伝わるしこりを押し込む指をゆっくりとしたものに変え、甘く男の名を呼ぶ。
「――ゼノウィズ」
ひく、と身体が揺れ、暫く固まっていたが、おずおずとこちらを男が振り返る。
「仰向けになれ」
「仰向けになれ」
そう笑んで命令した神の目は明るい天幕の中でも爛々と光っていて、唾を呑みながらゆっくりと身体を動かした。
腰を捻った時に、濡れた音を立てて後孔から抜かれた指に思わず声が出そうになる。
そして、耳まで赤くなっているのが解る程顔に熱が集まった。
幾ら神と言えど、見た目は幼い少年に後孔を弄られる大の男というのは、どう言い訳しても酷いだろうし、目も当てられない。その大の男がまだ華奢で見目美しい容姿ならまだしも、戦場から引っ張って来た、どう表現しても華奢と美しさとは無縁の容姿をしているから猶更だ。そんな大の男が己だとすると、最早死にたくなるような羞恥は逃れられない。
おまけに、この行為に何も感じていないならまだ言い訳が出来るが、どう目を逸らしても快楽を得ていたのだ。
契約で縛られているとはいえ、抗う意思表明は出来た筈だ。しかしそれをはっきりと表現しなかったのは、偏にその快楽を享受し、果てには欲していたからと等しい。
幼い指が後孔に挿れられた瞬間、背徳と恍惚に背筋が痺れた。何より――喜悦に全てを投げ打ってしまいたくなった。その衝動から必死に目を逸らし、荒い息を布に口を押し付けて散らし、揺れそうになる腰を全力の気力で止めた。
良いように掻き回され続けた後ろは痺れ、指を抜かれた今もじんじんと弱い快楽を生み続けている。
次は何を
仰向けになると、胸の上にイェマが膝立ちで跨り、そして無邪気に笑って――「しゃぶれ」と言った。
「しゃ、……え?」
何をだ、と言うほど初心ではない。が、本当にそんなことを言われたのかと耳を疑い、思わず上半身を起こしかけ、ポカンとした表情を神に向けてしまう。
その顔が余程面白かったのか、くつくつと楽しそうにイェマは笑い、そして己の性器を頬に擦りつけて甘く吐息をついた。
「――これを、おまえの口で慰めろ、という意味だが?」
すりすりと頬に擦りつけられる柔らかい感触に完全に固まった。
暫く擦りつけた後、再び離れ、性器を見せつけるように下腹を押さえる。
小さい、という訳ではないが、未だ幼さを残す未成熟な性器は白く、覗いている桃色の先端も含め、まるで果実のようで、半分勃っている今の状態でも厭らしさはない。
だからと言って、良いわけでもなんでもないが。
髪と同じ色の白い下生えも生えそろっていないような幼い見た目だからか、それとも
が、思考が停止している間に焦れたのか、唇に桃色の先端を押し当て、「はやく」と強請られる。
拒むことなど根から考えておらず、早くその口の中に入れろと腰を揺らして催促する神に、観念してゆっくりと口を開けば、その隙間に幼い性器が押し込まれた。
「ぅ、ぷ」
覚悟はしたが、それでも勢いよく入ってくれば多少なりとも怯む。
喉を突く程長くはないが、収まりが良いように舌で動かすと、イェマが声を零す。
その声に誘われるように目を向けた瞬間、鼓動が一拍跳んだ。
白くまろい肩は薄っすらと桃に染まり、幼気な
だというのに、とろり、と蕩けかけた青天の瞳は獣のような飢えを宿していて。柔らかそうな唇をちろりと舌で舐め、犬歯を覗かせる様子は、明らかに舌なめずりのそれだった。
目と目が合うと、凶悪な顔で幼子の姿の神は笑い、頭を掴んだかと思うと、鼻先が生え揃っていない下生えに擦りつく程押しつけ、
――もっと。
と、唇だけで言葉を紡いだ。
口の中の異物に生理的に唾液が溢れ、性器をしとどに濡らしていく。
溜まって溢れそうになる前に唾液を呑み込めば、舌と喉の動きで感じたのか目の前の下腹がひくりと波打った。
口が塞がっているため、すぅ、と鼻で息をすると、幼い精臭と、汗と、花のような香り、それとどこか微かに獣のような匂いが混じり合い、肺になだれ込む。
それらが混合した香りは例えようもなくいやらしく、擦りつけられる陰毛から特に濃く香った。
脳を満たす香りに、くらりと眩暈がするほど興奮を掻き立てられる。気が付けば口と舌は、幼い性器に快楽を与えるために動いていた。
口をすぼめ、ずるりと抜き、また根元まで咥える、を繰り返す。舌は未成熟といえどしっかりと浮き出ている裏筋や、ぴっちりと張り出ている先端のえら部分に時折当て、刮ぐように動かす。
先端から滲み出ている先走りの味に興奮が否応なしに増し、唾液と共に飲み下せば、じわりと腹に熱が溜まるのと同時に、己の性器がひくつくのが分かった。――そう、幼い性器を舐めしゃぶっているだけなのに、己の性器は醜いまでに熱を持って硬くなっていた。
くしゃり、と白い手に髪を撫でられ。快楽に眦を朱に染めながらも外そうとはしない視線に絡めとられ。罅が縦横に入っていた理性は瓦解し、混乱を極めていた頭はとうとう逸らし続けていた感情に堕ちた。
(――うれ、しい)
イェマが快楽を感じていることだけではない。最早、狗が腹を見せるが如く、己の頭を撫でる手が、見つめるその眼差しが、上顎の下でこれ以上ないほど硬くなっている性器が、全てが嬉しい。愛しい。そして、きもちが、好い。
喜悦と呼ぶそれは、もう頭がおかしくなりそうなほど精神を快楽に叩き落す。
もっと撫でて欲しい。もっと舐めさせて欲しい。もっと呑ませて欲しい。
もう前は痛いほど張り詰め、先端からは先走りが滴って腹の上に溜まっている。後孔は埋める何かを求めるようにひくついている。
未成熟な竿の微かに浮き出た血管を舌で愛おしくなぞり、もっと先走りを味わいたくて、舌にたっぷりと唾液を纏わせて、先端を甘く擦る。
更なる快楽を求め、性器にむしゃぶりつく姿を、浅ましいと恥じる理性はもう残っていなかった。