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▼ 葬送と追憶
 ※注意
 死ネタです。
 作品のキャラクターがどのように死を迎えるのかという内容です。




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 かさついた指が、ゆっくりと頬を撫でる。
 それに目を細めながら、男は腕の中の人間の顔を見つめた。
 随分長いこと一緒にいた気がしたし、あっという間であった気もした。
 人間が、自分の名を呼ぶ。唯一無二の、自分の名を、掠れた声で愛おしそうに。
「さいごにもう一度、オリウルの本当の姿がみたいな」
 最後と言わず、何度でも見せてやる。そう思ったが、口にはしなかった。きっと、白々しく聞こえてしまうだろうから。別れの時がすぐそこまでやってきているのは、お互いわかっていた。
 無言のまま、身震いをし、白い虎の姿に戻る。
 人間は、酷く満ち足りた表情をすると、指を毛に埋めてきた。
 優しく撫でられ、喉を鳴らす。
「僕は幸せだった。君がいて、君に出会えて、本当に幸せだった。産まれて来て、よかったと思えた」
 人間は微笑みながらそう言った。
「ありがとう……僕の、神の白い獣オリウル・タルグ・ヴィヌア
 眦から、一滴涙を零しながら、人間は幸せそうな表情で息を引き取った。

 随分長いこと一緒にいた気がした。あっという間であった気もした。
 確かに言えるのは、本当に幸せであったということだ。

 白い獣は、人間の躰を抱きながら咆えた。
 夜が明け、朝が来て、再び日が沈んで夜が来ても、ずっと咆え続けた。
 随分と続いた獣の声は、ある日ふつりと消えて聞こえなくなった。

 とある森の奥には、白い花が咲き乱れる場所があるという。
 その中心には、花に抱かれるように、人の白い骨が埋まっている。






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