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耽溺

※綺麗では無い人外もの
グロ注意
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 真っ白な部屋の、真っ白な床の上で身体を丸くする。
 冷たくも温かくも無いその床は、やはり固くも柔らかくも無くて。
 けれど自分の傍に横たわるモノが温かいから、そこはとても居心地の良い場所に思えた。
 閉じていた目を開けて、傍に寄り添うようにいてくれる“それ”に目を向ける。“外”にいた時期は短くて、そしてそんなに物を知らない自分でも、“それ”が普通では無い生き物という事は分かった。

 上唇から上、は人間の男の人の顔をしていると思う。だから僕は一応、“それ”は『彼』だと思っている。黒目が黒々としていて瞳孔が分からないから、どこに視線が向いているのか時々分からないけれど、格好良い、と思うくらいには整っている様に思えた。が、顎があるべき場所にはまるで虫の口の様な鋭く硬い器官がくっついている。
 そんな彼は勿論二本足では立たない。四つん這いになって這う様に動く。というか、まず足がどうなっているのか分からない。背中や脇腹から骨ともいえない、蟹や虫の肢の様な白く硬い物が突き出して、上半身を支えている。人間の腕と手の様な物も左手だけあるのだけれど、明らかに不自然にだらりと長く、余り力が入らないのかこれだけで体を支えるのは無理な様に思えた。
 逆に下半身は蛇の様に黒ずんだ緑色の様な色の鱗で覆われている、のだが、それだけでなく何か見知らぬ動物の足の様な物もくっついていた。蹄も無く、水掻きも無いけれど、人間の足ではないのは確かだと思う。
 髪の毛は真っ黒で長いけれど、それは背中の背骨部分を辿り、下半身の蛇の尾の先まで生えているので鬣と言った方が正しいのかもしれない。
 そして一番目を引くのは、ばっくりと割れたお腹と、そこから覗く真っ赤な内臓だ。
 背中や脇腹から余計な物が飛び出ている所為なのか、お腹を守る事を忘れてしまったかのように柔らかそうな腸や諸々がずるりと地面を這ってしまっている。けれど一体どういう仕組みになっているのか、一滴たりとも血は流れていなくて、床は綺麗なままだ。
 人間の物よりも赤が強いのだと、ここに僕を入れた白い服を着た大人が言っていたそれは、“外”の市場で見た熟れた柘榴を思い出させた。

 彼の面積の狭い人間の肩らへんの白い肌に、そうっと舌を這わせる。
 彼の肌は普通の人間の様に張りのある肌では無い。太っている訳では無いのに、どこかぶよっとしていて、冷たくて。死人の腐った肌を彷彿とさせる。
 けれどこれは生きていて、腐臭なんか一つもせず、また嫌悪感も何故か湧かない。
 不思議な感触のそれを舐めるのが癖になっていて、何度も何度もそろそろと這わせていると、人間と比べると長い首を曲げて、それがこっちを見た。表情では彼の感情は読み取れないけれど、怒ってはいない空気だ。
 ずる、と音がしたと思うと、それのお腹側の下半身と上半身の丁度境目から何本も朱色のぬるりと粘液を滴らせる触手が伸びて、身体を這い始める。
 大人の指程度の太さの物が三、四本と、そしてそれを四本くらい纏めた程度の太さの物が一本。その一番太いそれが唇の方まで伸びて、ちょん、と唇をつついた。

 これが、彼と僕とのキスの仕方だ。
 彼の口では僕が傷ついてしまうから。
 肉の柔らかさと硬さを持つその触手の先端に唇をつけ、ちう、と吸う。ぺろりと小さく舌を這わせれば彼が少しだけ目を細めてくれた気がした。
 身に纏う服など無い僕の裸の身体に触手が絡みつき、ずるりと彼の方に引き寄せられる。その一つ一つの動作が痛みを呼ぶ事は一切なくて、むしろ凄く優しく接されているのだと知っていた。
 細い方の触手がそろそろと後孔を撫でて、つぷりと中に入ってくる。
 何十回と繰り返された行為と、触手の粘液のおかげで痛みも無く、難なくそれを受け入れられた。
 とろとろと気持ち良くなってしまう様子を、彼がじっと見つめながら触手の本数を増やしていく。
 ああ、もうすぐ……と、次を期待するのと同時に、ひたりとあのキスをした太い触手が押し当てられるのが分かった。
 彼の長い首にそっと腕を巻きつけると、ぐぷりと切っ先を潜り込まされ、その快感に高い声を上げて悦んだ。


 スラム街で身寄り無く過ごしていた僕は、同じような境遇の子供達と一緒にここに連れてこられた。
 そして僕らはここに、彼の“餌”として入れられた。
 他の子供達が次々に千々に裂かれ、彼に貪られていく中、何故か彼は僕だけ食べなかった。
 非常食のつもりなのか、他に意図があるのかは僕には分からない。ただ僕は未だこうして彼の傍で丸くなって眠っている。

 

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