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玉繭

「なあ」
「なに」

 同じ声が音を紡ぐ。
「世界が俺達二人っきりなら良いのにな」
 頭まですっぽりと裸でシーツに包まり、四肢を絡め合う。吐息が触れる程近い距離。
 同じ体温は熱くも無ければ、冷たくも無い、不思議な温もりを感じさせる。
 触れる平たい胸が、腹が、鼓動と呼吸を伝えてきた。
「……そうだね」
 世界が俺達二人だけならば、この関係に後ろ指を指される事を恐れなくて良いのに。
 俺達は他の誰よりも近い物なのに、その位置に居続ける事を世間は許しはしない。

 互いの太腿を股の間に挟んでより深く体を絡める。
 瓜二つの顔、声、身体をしていながら俺達は互いに興奮をする。
 自分が好きな訳では無い。俺達にとって相手は近い物でありながら完全に違う物なのだ。
 俺にはコイツの違いが判り、コイツには俺の違いが判る。
 だって俺でないのがお前で、お前でないのが俺なのだから。

 後頭部と背中に回った腕で体が引き寄せられ、更に密着する。
 唇と唇が触れ、そこでも熱を交換した。
 シーツの中は湿った水音と吐息が満ち、時折衣擦れの音が混じる。

 ああここは俺とお前の繭の中。








追記


 

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