この身捧げても | ナノ


集中妨害

甘々/R18
 272727キリリク:トリ様
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 横目でちらりとミネを盗み見る。

 長い指がページを捲る。
 節のある指は男らしくてオレのとは大違い。
 
 少し眉間に皺を寄せ、目は文字を追って上から下へと流れる。
 頬杖をつきながら長い脚を組み、本を読んでる時しか掛けない縁の細い眼鏡を掛けて読書に勤しんでいるミネは、もう言い表せない程格好良かった。

 その姿をもう一度ちらりと見てオレはこっそり溜息をつくと持って来た問題集に目を戻した。




 喜一が溜息をついて問題集に目を戻したのを視界の端で確認すると、読んでいた本から顔を上げ、小さく笑った。
 眉は寄せられ、目が何度も同じ所を往復している。シャーペンを握った手は勿論動いて無い。
 十中八九、問題が解けないのだろう。
 喜一の頭は理系、特に数学には不向きだった。おかげで数学は壊滅的。
 だから今日もこうやって俺の家に呼んで勉強会をしているわけだが……。
 俺に聞けば良いのに、読書の邪魔になると思って我慢しているのだろう。その可愛らしい心使いに俺はまた笑みを浮かべ、読んでいた本を静かに置くと喜一に近づいた。
 後ろから包み込むように座ると、顎を肩に乗せて一緒に問題集を覗き込む。俺は右利き、喜一は左利きだから、こうやって後ろから教える格好が一番楽だ。
「どーした、どこがわかんねぇんだ?」
「う、あ、え……っと、ここが……」
 喜一がおろおろと指をさした場所にざっと目を通し、問題を確認すると「ああ、それは……」と説明を始めた。


「だぁから、どうしてそうなんだ」
 さっきと同じ間違いをしている喜一に呆れた声を上げる。
「何で纏めろって言われてんのにバラバラにするんだよ。それとここは掛け算間違いだバカ」
 こつこつとノートをシャーペンで叩く。
 喜一は慌てて消しゴムでそこを消すと、左手で握ったシャーペンを走らせた。
 ……おかしい。
 いくら喜一でも教えたらその日のうちくらいはちゃんと応用出来る。……まぁ次の日には半分ばかし忘れている可能性が高いが。
 何故今日に限ってこんなに阿呆なミスばかりしているのだろう、と俺は横から喜一の顔を覗き込んだ。
「……喜一?」
 名前を呼ぶとびくりと喜一の肩が跳ねる。
 何故か喜一の頬は薄らと赤くなっていて、眠たげな垂れ目は潤んでいた。
「お前、熱でもあるんじゃ……」
 ぐっと身体をくっつけて手を額に持って行こうとしたら、ひくりと喜一の喉が引き攣るような動きを見せた。
 その動きと顔から、ふと他の可能性を導き出した俺は、左手を喜一の股の間に差し込んだ。
「な!……ちょ……っ!」
「……なんでお前勃ってんだ……?」
 驚いて俺の手から逃れる様に身を捩るが、俺の方が早かった。
 やんわりと覆ったそこは、僅かに芯を持った喜一の逸物の感触がする。五指で優しく揉んでやると腰をひくつかせる喜一。
 ……可愛い。スイッチ入りそうになる。
「……喜一、俺に教えてもらいながら勃たせてた?」
 耳に吹き込むようにそう言うと、喜一の顔の赤味が増す。
 可愛い。可愛い。
 見た目は決して可愛い系では無い喜一だが、俺は心の底から可愛いと思う。
 羞恥で震える喜一の耳に息を吹き込んだ。
「ああ……それとも、俺に教えられる前からか……?」
 もちろん虐める為に冗談で言ったつもりなのだが、それを聞いた途端に喜一が小さく息を呑む。
 ……え、そうなのか。
 さっきからちらちらと俺を見ていたのは教えて欲しかった訳では無く、俺に欲情していたのだと気付いて、ぐわりと血液が頭と身体の中央に集中した。
 ああ……スイッチ入っちまった。
「喜一」
「……っ」
「喜一」
 返事を強要すると、喜一の唇が震えて小さな返事をした。
「俺さぁ……」
 ぐいっと後ろに引っ張り、僅かに腰を浮かさせる。出来た隙間に手を差し込むと、喜一のソレから後孔までを指で撫で下ろした。
「うぁ」
「ここに、」
 ここ、と言いながら後孔をぐっと押し上げ、その後にかりかりと指で引っ掻く。
「俺のアレ挿れて、ぐちゃぐちゃに掻き回して、俺ので喜一を汚してぇんだけどさ」
 お前はどうだ?と吐息で尋ねた。
「うぁあ……」
「なぁ、喜一」
 耳から蝕んで行くように囁く。
 落ちて来い、喜一。一緒に快楽に浸ろう……なぁ……。
 茶色の髪から覗く耳を唇で挟み、舌で嬲る。時折歯を立てて、その後噛んだ場所を優しく撫でる様に舐めた。
「欲しい?」
 震えながら喜一の首が僅かに縦に振られる。
「何が?」
 わざわざ口で言わせるのは、喜一のスイッチを完全に入れるためだ。
 始めは物凄く恥ずかしがる癖に、快楽に落ちた瞬間、喜一は俺好みに乱れる。
「……み、ミネ……が」
「俺はもう喜一の物だぜ。……俺の何が欲しい?」
「あ、あう……」
 喜一の睫毛が震えた。
 さぁ、早く。
「ミネの……」
「俺の?」
「……っ」
「喜一、お前が言った通りに俺はしてやるよ……」
 ひくんと喜一の喉が動いた。
「ミネ……の、……ち、ちん……こ、が欲しい……っオレ、に挿れて……っ掻き、回して……出し、て……っ!」
 落ちた。
 ニヤリと口角を上げると、快楽に従順になった愛しい人の唇に齧り付いた。
「ああ、その通りにしてやる」
 唇にかぶりついた後、喜一の服をひん剥く。
 下着になった喜一にまたキスをして、唇を徐々に下にずらすと、下着に包まれた逸物に唇を落した。
 その途端びくりと喜一の身体が跳ねる。
 ……感度の良いヤツ。
 その反応が愛おしくて、芯のあるそれを下着越しに唇で挟むと柔らかく食んだ。
「う……ぁう、う……」
 震える太腿を宥める様に撫でる。下着は俺の唾液と喜一の先走りで既にぐしょぐしょだが、気にせず舐め続けた。
「やめ、も……ミネ……っイっちゃ」
 下着の中で達してしまいたくないと制止するように手を伸ばす喜一は可愛いが、俺はそれを無視した。そもそもここまで濡れてしまったら変わらない。下着の下からでも主張し、ぴくぴくと震える先を咥内に含むと思いきり吸う。
「ああっ!?や、うううぅう!!!」
 驚いた声を上げてびくびくと身体が跳ねた。
 じわりと下着の下から馴染みの味が染み出して来たのを確認して、ようやく口を離す。
 喜一は下着の中で達してしまった羞恥からか、泣いていた。
「う、ぁう……ミネの馬鹿ぁ……イ、っちゃ……た」
 悦楽にとろんと目を蕩けさせながら涙を零すその顔は、俺の好きな表情の一つだ。
 下着を脱がせると、にちゃ……っと下着と喜一の性器の間に精液の糸が引く。
 白濁に塗れた喜一の性器は本当にエロくて、何故か口の中に唾液が湧いた。
 先端にキスするとぴゅくっと残滓を飛ばす。それに纏わりつく白濁を指で絡め取ると後孔に持って行った。
「喜一……」
 名前を呼びながら唇を重ね、中指を後孔に突き立てる。
「んむっ!」
 塞がれた口の中で小さく叫び声を上げる喜一。
 最初の頃はキツ過ぎて解すのもやっとだったそこは、今では丁度良い絞めつけになっている。まるで俺専用のようなそこを弄り挿れる時、堪らない充足感が俺を満たすのだ。
 順序良く指を増やし、俺のを受け入れられる程解した後、熱り立った逸物を喜一の後孔に当てる。
 ぷちゅりとまるでキスするような音を立てると、ひくんと後孔がひくついた。
「喜一」
「うう?」
「今日さ、お前ン中に出しても良い……?」
 吐息混じりでそう尋ねる。
 中出しはその後の処理が大変だから、受け身だけでも大変な喜一の事を考えて大抵ゴムをつけるのだ。でもこうやって時折り中に出したくなってしまう。……まるでマーキングでもするように。
 行為が終わった後、痙攣する喜一の中に吐き出した自分の汚い白い液を掻き混ぜることで、支配欲が酷く満たされるなんて、コイツは知らないのだろう。
「い、いよ……」
 喜一の細い声の了承を得ると、俺は舌嘗めずりしながら腰を押し進めた。


 ぐちゃぐちゃという音をバックに喜一の中を抉る。
「あ、あ、あ、っあうう……!!」
 パサついた髪が喜一が顔を振る度に、擦れて軽く音を立てた。
「……っは、やっぱ正常位が一番イイ……なっ!」
 喜一の善がる顔が良いアングルで見れる。
 いや、まあ喜一と繋がれるならどんな体位でも好きだけどな。
「ミネぇ……ミネぇ……っ」
 繰り返し名前を呼ばれるの声がまるで発情期の猫のようで堪らない。
「オレ、おれ、イっちゃうよぅ……!」
「んっ……俺も、もうちょっと……で」
「はうっ!」
 段々腰の動きが速く、小刻みになる。
 あ、あ……ああ。頭が欲望を叩きつけることしか考えられなくなっていく。
「ふ、あ……あ、も、ダメぇ……!!!」
「……っ!ふ……っ!!」
 喜一が達して、蠢き、きゅう……っと引き絞られる後孔に俺も耐えきれず白濁を注ぐ。
 荒い息の中、どちらともなく口付けた。




 腕に乗ってる喜一の髪を梳く。
 喜一はそれに目を細めると俺のピアスを弄る。これは喜一の癖だ。
 耳の飾りを喜一の指が弄ぶ感覚に、俺も目を細め返したが、ふと抱いていた疑問を口にする。
「それにしても……欲求不満だったのか?」
「え?」
「切っ掛けがわかんねぇからさ……」
 一体何がきっかけで喜一が欲情したのか、思い当たる節が無い。
 教えるためにひっつく前からという話だが、別にそんな空気でもなかったし、そんなことを仄めかすような言葉を囁いた訳でもない。
「……み、ミネを見てたら……」
「俺を見てた?それだけ?」
「うう……だって、格好良い……じゃん」
 それだけ?たったそれだけで喜一は……と思うと、ぎゅうと心臓が握られるような愛しさが胸に湧く。
「ああー……駄目」
「どうしたの……?」
「……何か良くわかんねぇけど……すげぇ嬉しい」
 ぐっと引き寄せて抱きしめる。「だから勉強どころじゃ無かったんだよう……」と呟く喜一が、愛しくて愛しくて堪らなかった。

「ごめんな……集中乱させて」

 これくらい自信過剰な言葉を吐いたって、今は許されるだろう。





- 終 - 



 

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