童子の夜 | ナノ


鶴の恩返し[2]


「……俺は、これ以上あんたの傍にいたらあんたを傷つけるぞ?」
「どういう、ことですか?」
「俺は助けてもらった時からあんたに……惚れている」
「……はい?」
「罠から助けてくれた優しさ、金を代わりに置いた優しさ、あんたの優しいとこ全部……好きだ」
 熱っぽい目で見ながら男が私の唇を指の腹でなぞった。
「好きな相手を抱きたいのは雄の性だろう?これ以上傍に俺を置いたら、俺はあんたを組み敷いて犯すぞ」
 だからさっさと追い出せ、と男が目を伏せた。

 突然の告白に驚く。
 傍にいて欲しいとは思ったが、自分にそんな想いがあったかと思うと、分からない。そもそも男同士でそんな事、考えた事もなかった。
 しかしその熱っぽい目線が自分から反らされるのが酷く残念でならないと思う。
(――私は……この人が、この鶴が好きなのだろうか。)
 男の顔を覗いて、その唇にそっと自身の唇を重ねた。

 ぎょっと男が目を見開く。
 重ねたが、そこに嫌悪は無く、むしろ心地良い。
(――ああ、私はこの人を、この鶴を好いているのかもしれない。)
 唇を離して、囁いた。
「いいです……。それで貴方がここにいてくれるのでしたら」
 男はそれを聞くと同時に手を後頭部に回し、激しく口付けた。舌が口の中に入り、咥内を蹂躙する。
 口が離れると銀糸が引いて、酷く恥ずかしくなった。
 裾をたくし上げられると大股を開かされ、その脚の間に男は身を屈めた。
「な!?」
 どこを見ているのかと驚いている内に腰帯を解かれ、温い刺激が腰から頭に走る。
「あぁ!?」
 あたふたして目をそこに向けると、男が私の逸物を口に含んで舐っていた。
「ど、どどこを口に入れて……!!」
「陰茎」
「なぁっ!?あ、ぁあっあっ」
 ぴちゃぴちゃ じゅるじゅるという音が耳を犯す。
「や、やめっ、あぁっやめてっ、んっ」
「あんたが良いって……ん、言ったんだろが」
「だって、まさかこんな……こんなっ、ひぁあっ」
「はまっへろ」
「ああああ!!!!」
 口に含んだままそう言われたのと同時に、じゅるるるっと呑み込まれるような勢いで吸引され、男の口に白濁を放ってしまった。
「……っ、ぁ、はぁ、ぁ……」
 あまりの快楽に腰をひくつかせ、だらりと弛緩していると、有り得ない場所を触れる感覚があった。
 驚いて半身を起こすと、男が私の白濁を口に含んだままそこを舐めている。
 まるで私が吐き出したそれを塗り込むかのようなその行為に頭がくらくらする。
「あ、貴方、何を……」
 汚いから止めろと言うよりも思わず疑問が口から出た。
「ン……ここに俺のを挿れるから、解さないとな」
「あ、貴方の……?」
「コレ」
 男に言われるまま目線を下にずらすと、そこには男の怒り立った逸物があった。
「む、むむ無理!無理です、そんな大きいの!」
「……っ、莫迦、煽るな」
 その隆々としているそれは私が否定すると脈動して少し大きくなった。
 何故!?
「痛い思いをしたくないなら黙ってろ」
 その言葉が終わらない内に男の指が後孔に差し込まれた。
「あ、う……やだ、気持ち悪い……っ」
 ぬぐりと身を割る異物感が凄い。汗が全身から吹き出す感覚がする。
「ん、きついな……堪えてくれ」
 指が抜き差しされ、少し折り曲げられたその時、凄まじい快感が全身を襲った。
「ひぁあ――……っ!?」
 びくりびくりと腰が揺れる。
 何、何が起こった?
「ここが好いのか」
 目を細めて男が嬉しそうに言う。
 そしてそこを重点的に擦りながら指を増やしていった。

「あ、あっ、んぁっ、あ、出るっ、もうっ、も……っ」
「もういいか……」
 指が引き抜かれて、男の逸物が宛がわれる。
 縁の形を歪める様に押し付けられた熱に怯えた。
「ひう……無理ぃ……っ」
「大丈夫、だっ」

 ずぶり

「あ゙ぁあああ――――!!!!」
 熱い、痛い、熱い熱い、痛い!!
 痛みにぼろぼろと涙を零し、身体が竦み、震える。
「痛いか……っ?すまない」
 優しく髪を梳いてくれる男の手に恐怖が若干薄れた。
「ふ……っ、ふぅ、え……っ」
 その途端に涙と泣き声が溢れ、男がその涙を唇で掬ってくれた。
「すまない……泣かせるつもりは無かったんだ」
「えぐ……っ、う……っ」
「……抜くか」
 寄せられた手に頬を擦り付ける。
 暖かい。
 その暖かさに涙も徐々に止まった。
「ん……い、良い、です。続けて……貴方は一緒に居てくれるんでしょう?」
 そう言って男の顔を窺うと、何故か酷く赤くなっていた。覗き込むと軽く睨まれる。
「あ、んたなぁ……どうしてそんな、可愛いんだよ」
 困ったように掌で目を覆い、それを取り払うと男は完全に雄の目をしていた。
「もう泣いたって止めないからな」
 挿れてから全く動かしてなかった腰が動いて、中のモノが引きずり出され、そしてすぐ奥に叩きつけられた。
「あぐぅっ!!」
 律動はどんどん速くなっていく。それに比例するように痛みのみでは無く、快楽も感じるようになって来た。
「あ、あ、あ……ん、ひぅっ、ふ……っ」
「気持ちいい、か?」
「う、う……ふ……っああっ、気、もち……いい……っ」
 素直にそう告げると男の腰の動きが速まった。
「あ、あ、はやっ、はやいっ、もっ、ゆっ、ゆっく、り!」
「ぐ……っ、無理、だ!」
 腰が打ちつけられる音が響く。がくん、がくん、と身体が揺れた。
「達く、も、だめ、あ、あっ……あ、ああああああ――!!!」
「は……っ、うっ」
 男の手の中に再び白濁を吐き出しながら身体の奥に熱の飛沫を感じて、中に出されたのだと理解した。


 ちゅっ、ちゅっ…ちゅっ

 軽い音を立てて顔中に唇が降ってくる。
 その後二度行為に持ち込まれた私は、精も魂も枯れ果ててなされるがままだ。
「ずっと傍にいるからな」
「あ……そうですね……」
 そういえばそんな条件だったと嬉しくなる。
 男の首に腕を巻き付け抱きつくと、男が小さく笑った。
「離さない」
「はい」
「お前は俺が養っていくから」
「私だって男です。自分の分くらいは稼げますよ。また機を織るんですか?」
「いや、あれは性に合わない。畑を耕したりする力仕事が俺には合っている」
「じゃあ何故機を……」
「あれが手っ取り早く金が入るからな」
 でも痛いし、疲れるしあんまり好きじゃないんだと男は顔を顰めた。
「まあ、またどうしても貧しくなったら織るよ」
 そう言って男は優しい顔で笑って額を合わせた。

 鶴とは思えない鋭く、怖い見た目の男と一緒に、私はこれから暮らしてゆく。




「……あれ、そういえばなんで織ってるとこみたらいけなかったんですか?」
「こんな厳つい男が機織りしているところなんか見せられるか」




- 終 - 
2010.10.31


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