童子の夜 | ナノ


The king has donkey ears.

微鬼畜攻め/ギャグ/R18
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「王様……御髪、伸びましたね。明日位に散髪屋を呼んで切ってもらいましょうか」

 ばさり。
 王と呼ばれた人物はそれを聞いた瞬間、持っていた書類をすべて落とし、油の切れた絡繰のようにぎしぎしと振り向いた。
「さささ散髪!?」
「ええ」
「私は大丈夫!まだ大丈夫!まだ切らなくても大丈夫!!」
「何言ってんですか。鬱陶しいですよ」
「お、王に向かってなんて言葉を……!」
「いい加減にしてください。毎回毎回散髪如きにぎゃんぎゃんぎゃんぎゃん……子供だってそこまで駄々を捏ねませんよ」
「い、嫌な物は嫌なんだ!良いではないか、人間一つや二つ嫌いな物があっても!」
「まあその耳では嫌がる気持ちもお察ししますが、王たる者、そんな鬱陶しい髪をぶらさげるのもどうかと」
「言葉を選んで!?」
「あ、散髪屋に連絡はもう入れましたからね」
「大臣んんんんん!!!!!」
 自由すぎる大臣を持った王の嘆きが城中に響き渡った。




 げっそりとしながら散髪屋が通された部屋に向かう。
 ああ嫌だなぁ。帰りたい、本当に帰りたい。いやここ私の城なんだけども。気持ち的に帰りたい。
 いっそのこと五分刈りとかにでもしようかな……そしたら次の散髪まで大分空くよな……。
 でもこの耳に五分刈り……?うけるー……じゃなくて、流石にそれはルックス的にアウトだ、うん。
 というかそんなことアイツに言ったら耳ごと刈り込まれかねない。うわ、リアルに想像つく……!!血みどろ散髪……!うわぁ何てスプラッタ。
 あーもう、アイツ解雇したいなぁ。

 でも新しい散髪屋雇うとそいつぼっこぼこにして城に忍んでくるからなぁ……。
 それでもって私はぐっちゃぐちゃにされるからなぁ……。
 あの時は悪魔かと思った。満月背にして黒い笑顔で窓から這入って来た時は。
 というかどうなってんのうちの警備。たかが散髪屋に忍びこまれるって!
 あー……でもアイツはどこでも忍びに行けそうだもんね、仕方ないかな。そこまでハイスキルな警備をうちの衛兵に求めたら可哀そうかもしれない。
 それにこの耳の事を知ってる人を増やしたくないし……。アイツ口だけは堅いから……。
 それだけだよ!他に本意はないんだからね!……なにこのツンデレ空気。
 いや、本当別に好意なんかな……いもんってうおおおおおおお!!何一瞬躊躇ってんだ私!!
 アイツは嫌い!嫌いで、機会さえあれば解雇したい!そうだよ!それを忘れるな!肝に刻め私!!アイツに今までされた屈辱と凌辱の数々を思い出せ!!
 …………ああ、いっぱいあり過ぎてもっと帰りたくなってきた……私の馬鹿……。
 今日は何も無いように……っていうのは無理だと思うから、どうか軽くで終わりますように……。
 そう祈りながら取っ手を握った。


 神様なんかいない。いても耳が遠いに違いない。
 ちくしょう、耳掃除して来い。

「はい、何て言ってるか分かんないよ王サマー?」
「ふっ、あっ、ひゃぁあん!!」
 上げる嬌声に、口の端から唾液が零れた。それを散髪屋が舌で舐めとって咥内に戻してくる。
 片足を椅子に掛けられた格好で下から穿たれる。ああ、散髪屋の灼熱が胎の中を行ったり、来たり……。
 過ぎる快感に全体重を支える片足ががくがくと震えた。
 今日はこれで何回イかされただろうか。髪を無言で切られた後、すぐに行為に突入だ。
 神様の馬鹿。軽くってお願いしたじゃないか……ん?いやでも今日は変な物を挿れられたり、変態的な行為を迫られたりしていないから、まだマシなのか……?
 いやいや慣れてしまっているぞ私。
 この行為自体がそもそもおかしいという事を忘れるでない。

「オレさ、言ったよね?一ヶ月に一回は呼べって。前切ってからどんだけ経ってると思ってんの?三ヵ月だよ?三ヵ月。ほんっと忍びこんでやろうかと思ったけど、考え直して止めたんだ。
 お仕置きされたかったんだよね?王サマはさ」
「ちがっ、ちが、うんんんっ」
「違うの?じゃあどうして呼ばなかった訳?」
 ピストンは止めないまま、真っ黒な笑顔で散髪屋は顔を覗きこんで来た。卑猥としか形容出来ない水音が辺りに響く。
「お仕置きされたくなかったのに、オレを呼ばなかったって事はさ、単に俺に会いたくなかったって事?」
「……あ」
 ぴたりと散髪屋の動きが止まった。
 でも勿論抜いてくれた訳ではなく、どくどくと中で脈打っている。その余りの熱さに、鼓動の強さに、ほんの少しだけ愛おしさを感じたのは気の迷いだ。
 決して、散髪屋の目に寂しそうな色を一瞬見た気がしたからとかではない。
「わかってる?どんなに馬鹿でもアンタは王サマなんだよ?お抱えの散髪屋だろうとほいほい尋ねられる訳じゃないの。アンタから呼んでくれないと……」
「だ、だって、前は忍びこんで来たし、さっきだって忍びこんでやろうかって……!!」
「あー……あれはアンタがオレ以外の誰かを雇うとか言うからアタマに来て、かっとなった力を借りたから出来たんだよねぇ……。
 それに忍びこむのは痛い目にあったから、今はちょーっと難しいの」
 珍しくばつが悪そうな表情をしながら頭を掻く散髪屋の肌蹴た胸に、涙の滲む目を何となく向けると、シャツに隠れるかのように傷があった。
 こういう傷は見た事がある。大臣の腕にもある。
 鋭い刃で裂かれた時に出来る……。

「お、おまっ、ここここれっ」
 繋がったままという事を忘れて散髪屋にしがみ付くと、中に挿れたままのモノがぐりゅりと動いて刺激を与えてしまい、思わず仰け反る。
「あ゙ぁっ!」
「……ッ」
 片目を瞑って散髪屋が快感に耐える。
「……っ、あー……今のはちょいヤバかったかな。てか何勝手に動いてんの?」
 そう言っていつもの悪い笑みを浮かべると、律動を再開する散髪屋。
「あ、ああっ、待て、待って、それ!そのきず!」
「いーの別に。これは」
「それ、っああ、ああ、あ……!」
 ぱさぱさと視界の隅で茶色の髪が揺れる。
 後ろから犯されているから表情が見えにくいのだけれど、どうにか身体を捩じって散髪屋を見ると、目を苦しげに閉じて私以上にこの行為に没頭しているような表情をしていた。
 ……も、もしかして今回色々と変態的な行為を強要しないのは、こいつ自身に余裕がないから――?
「ちょ、ちょっとああっ、たのむっ、頼むから!ストップ!止まれっ、んんっ」
「何言ってんの止まれる訳ないでしょうが……っ」
 パンパンと腰を打つ音が早くなっていく。
「あ、あっあっああ、ああぁああっあ――……!」
「……ふ、ん……くっ」
 私は白濁を床に散らし、散髪屋は中に勢い良く吐き出した。
「あー……久しぶりはやっぱ気持ちイイわ」
 アンタん中ホント最高……と耳元でうっとりと呟かれると非常に恥ずかしい。
「で、何よ?次に向けての準備までの間にだったら聞いてあげるからさっさと言いな?」
「お前は……私を王だとおもってないな……」
 ぜいぜいと息を切らしながら横目で睨めば、酷く真顔でまさかと否定された。
「思ってるよ、身を持って知ってるさ」
 ま、またそういう目をするっ。
「大臣に……」
「に?」
「……お前に城の自由な出入りの許可を与えると、伝えておく」
「……それ」
「だっ、これ以上忍びこまれて怪我されたら困るだけだ!仮にもお前は私の散髪屋なんだかむぐっ」
 喋っている途中で唇で唇を塞がれた。
 いつも泣いても笑いながら止めてくれないこいつからは想像もつかない程優しい物。……というか、接吻は、は、始めてか、も……。
 最後に唇に軽く噛みつかれて、散髪屋の顔が離れる。
 明るい茶色の髪に、少し垂れ気味の目。こうやってみれば、まあ整っていないことも……

「それってさ、オレに毎日虐めて欲しいって事?」
「は!?何でそうなる!?」
「いいね、ナニしよっかなぁ」
「変な事したら沙汰を取り下げるからなっ」
「それじゃあオレに虐められなきゃ生きていけないような身体にしてやるよ」
 とりあえず準備出来たから第二ラウンドね。
 そう言って抜かずに臨戦状態になった雄を揺らす散髪屋に、私は一時の情に流されてとんでもない決定をしてしまったのではないだろうかと早くも後悔していた。




「はいじゃあ王サマ、言って?王サマの耳はー?」
 がじがじとロバの耳を齧られ、耳の中に息を吹き込まれる。
 勿論後ろから突き上げられながらだ。
「わ、私の耳は、ろ、やぁあぁんっ、そこっ、あぁっ!!」
「んーわかんない。何?言う時は敬語でね」
「わたっ、私の、みっあ、ああっ耳はっ、ろ、ひぁぅっ、ロバの耳、ですぅっ!!!」
「ブー」
「へ……へぁ?」
「正解は『オレの所有物』でしたー」
「な、なんだそれっ!!」

 王サマは全部俺の物。
 嬉しそうな散髪屋の声がロバの耳を擽った。





- END - 
2010.?.?  


 

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