童子の夜 | ナノ


因幡の白兎

擬人化/俺様×か弱い系/R18
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 ある日、白兎は思いました。
 海の向こうに見えるあの島に渡りたいと。
 この島は寂しい。きっとあの島に行けば何か楽しい事があるのではないだろうか。
 けれどもこの島には船などなく、遠くに見えるあの島に繋がる橋ももちろん存在しません。
 考えた末、白兎は良い方法を思いつきました。

「鮫さん、ねえ鮫さんってば」
「あ゙あ゙?」
 鮫が鈍色に光る髪を揺らしながら振り返ると、そこにいたのは白兎。
 華奢な体に合う白い細い髪を海風に揺らし、紅の瞳を細めていました。
「なんだ白兎か」
「僕ね、ずっと考える事があるんだ。……鮫さん達と僕ら兎だったらどっちが多いのかなぁ、って」
「俺達に決まっているだろうが」
「そうかな?僕たちもかなり多いと思うんだけど……」
 何でも自分が一番でないと気が済まない鮫。早くも苛々してきました。
「あんだと?んなわけねぇ」
「じゃあさ、数えてみるってのはどう?」
「数えるぅ?」
「うん。 鮫さん達にあの島までずらっと並んでもらって、僕がその背中に乗りながら数を数えるって方法。僕、小さいし、軽いし、適任だと思うんだけど」
 そう。白兎が思いついた良い方法とはこれ。
 何でも一番で無いと気が済まなく、あまり深く考えない鮫に軽く喧嘩を吹っ掛け、騙そうと考えたのです。
 鮫は何かおかしいか……?とちらりと思いましたが、それで自実証出来るならとすぐさま仲間を集め、一列に並ばせました。
「うん!じゃあ数えていくね!いーち、にーい、さーん……」
 白兎は島まで並んだ鮫を見て、嬉々としながらその背を踏んで渡り始めました。


「よんひゃくごじゅうろく、よんひゃくごじゅうなな……」
 憧れの島まであと少し。
 あまりの嬉しさに白兎は思わず本当の事を口にしてしまいました。
「あははっ、本当は鮫さんの数なんてどうでも良いんだよ。僕はホントはこの島に来たかっただけなんだから!どうもありがとう、お疲れ様〜」
 騙されていた事に気付いた鮫は怒髪天を衝く勢いで怒りました。
「手前ら、そいつを逃がすな!!」
 あと一歩という所で白兎の脚をむんずと掴み、砂浜に押し付けて動きを封じました。
 白兎はというと真っ青。
 鮫と兎では体格も違いますし、力の差だって歴然としています。
 何故黙っていられなかったのかと後悔しても後の祭りです。
「てンめぇ……よくも騙しやがったな……」
 おどろおどろしい声で唸りながら鮫はぎらつく目で白兎を睨めつけました。
 こっちは被食者、あちらは捕食者。
 白兎は息を詰め、ぎゅっと目を瞑って諦めました。
 明らかに自業自得。それに食う食われるは世の理……そう言い聞かせて、ただ痛い思いが長続きしない事だけを祈ります。
 
 一方鮫の方はというと、熱しやすく冷めやすい質。
 真っ青になりながら覚悟を決めた白兎を見てなんだか可哀そうになってきました。
 仕方ない、許してやるかとがしがしと己の頭を掻きながら、くるりと後ろを向き、仲間に帰って良いと告げました……が。

「はぁあ?お前まさか可哀そうになったとかじゃねぇだろうな?」
 仲間の方は未だ熱が冷めてないようです。

「い、いやそういうわけじゃ……」
「じゃあソイツどうすんだよ」
「……こ、いつは」
 困った。どうすれば良いだろうかと鮫は目を彷徨わせます。
「こいつは……。俺が責任もって、喰うから!」
(――あぁあああ 俺の馬鹿ー!もっと他の言い方あるだろ!?『罰を与える』とか『責任取らせる』とかよぉ!!)
 言葉とは言霊。一度口にした言葉は八百万の神に捧げた誓いも同じ。
 それを破れば罰として仲間に八つ裂きにされるという厳しい掟が鮫の一族にはありました。
「おし、その言葉に嘘偽り無いな?」
 その事を重々承知しているからこそ、鮫は静かに俯きました。




 仲間が帰った後、苦々しい顔で鮫は白兎を見、深呼吸をすると白兎に覆い被さった。
 びくりと白兎が身体を震わせる。
「すまねぇな。可哀そうだとは思うけど、俺の身を滅ぼしてまでは出来ねぇからよぉ……」
 一応謝罪の言葉を口にするものの、気持ちが晴れる事はない。
「俺も悪ぃけどよぉ……お前も悪いんだぜ?」
 言い訳がましい事を呟いて、せめて一思いに逝かせてやろうと鋭い歯を白兎の項に当てた。
(――ん?いや、まてよ……。)
 ふと鮫の頭をある考えが過る。
(……うん。それも『喰う』……か。うん。)
 ふむふむと一人で頷く。
(よし、変更。)
 鋭い歯を当てていた白兎の項をべろり舌と舐めあげる。
 それに小さく悲鳴を上げて白兎は身を縮めた。
(問題は俺の気分が乗るか……。)
 萎えたままでは喰おうにも『喰え』ない。
 まあとりあえずと、覆い被さりながら項、背骨と口付けを落としてみた。
 白兎の簡単な作りの衣は口付けしながら片手で脱がせていく。
 上を全て脱がせた白兎を見て思わず息を呑んだ。
(こりゃ、ぁ……。)
 ホントにこいつ男かと思うほど細い。
 半裸で白い髪を散らして目を覆って震えている姿は、情欲を煽るのに十分過ぎた。
(気分が乗らないどころか、乗り過ぎて壊しちまうんじゃ……。)
 そっと白兎の色白な背に手を這わす。
(うっわ……気持ちイイ……。)
 骨格は確かに男で、指の先の弾力は薄い筋肉をの存在を伝えてくる。
 しかし肌は滑らかで、年中海にいて日に焼けた自分達から考えられない程白く、抱いたら心地良いであろうと鮫に容易に思わせた。

 白兎を命だけでも救うための手段が、己の欲を満たすための行為へと変わっていく。
 うつ伏せになっていた白兎の身体を反転させ、首から鎖骨、胸の飾りに舌を這わした。
「ひっ」
 小さく叫ぶ白兎にさえ仄暗い捕食者の欲をそそられる。
 胸の飾りを執拗に舌で弄ぶと流石に違和感を抱いたのか、白兎は腕をどけてこちらに目を向けた。
「食べ……食べるなら一思いに……」
 涙で濡れた赤の目にずくりと腰が重くなった。
 やばい。
 思った以上に……のめり込んでる。
「……だから食べてんじゃねーか」
「こっ、これは食べるとはぁあっ」
 口角を上げ、飾りに歯を立てると兎は高い声を上げた。
「あぁん?お前此処感じるんだ?」
 ニヤニヤと笑いながら白兎を抱き上げ、膝の上に抱える。
「ん……少し勃ってんな」
 兎の肩に顎を乗せながら袴の中を弄ると、僅かに勃ち上がった雄に手が触れた。
 そのまま掌で包みこむようにして上下に擦ってやると、驚きと快楽の声を兎は上げる。
「んっ、んんっ、ど、どうして……っ」
「死にたくねぇだろ?でも俺は仲間に『喰う』って言っちまったから、それを破る事は出来ねぇ。
 死なない方法なんてこんくらいだぜ?それとも殺された方が良いってなら、お前の喉笛今すぐ噛み千切ってやるよ」
 がぱりと口を開いて喉仏が上下する白兎の喉をわざとらしく咥えると、兎は泣き声混じりで許しを乞うた。
 死ぬしかない道に光が指せば、どんなに覚悟をしていても縋りたくなる。
「や、やだっ!まだ死にたくないっ」
「あ、今思いついたんだけどよ、お前の身体の一部俺にくれるってのも有りだな」
「へ?」
 ぐしゃぐしゃに濡れた顔で意味が分からない と鮫の顔を見る。
 その顔を優しく拭ってやりながら、鮫はその表情に全く似付かわない事を言った。
「だから、俺に腕か脚か……どっか喰わせろって言ってんだよ」
 指とかでもいいぜ、と自分の指を咥える鮫を恐ろしい物を見る目で兎は見た。
「い、嫌だっ痛いのは嫌だっ」
「じゃあ俺の言う通りに出来るな?」
 がくがくと壊れた絡繰のように首を振る兎を見て鮫は笑みを浮かべた。

 『言う事を聞く』と言った白兎につけ込んで鮫は自分の好き勝手に身体を弄った。
 唾液で濡らされた指で散々後孔を弄られ、嬲られ、白兎は息も絶え絶え。
「そんじゃぁ、次は……ああ、そうだな……。舐めろ」
 涙で塗れた顔を上げると、白兎は息を呑んだ。
 目の前に突きつけられているのは鮫の男根。赤黒く皮も剥け、時折脈打つそれは自分と同じものとは思えない程恐ろしく、卑猥だった。
(――そ、それを舐めろと……!?)
 ふるふると頭を振って無理だと訴えると鮫は目を細める。
「じゃあお前の指寄こせ、喰うから」
 余りに過酷な二拓に涙が溢れた。しかし選ぶのは一つしかない。
 白兎は震える舌を突き出し、そっと男根の先を舐めた。むわりと匂う雄の匂いと熱に涙が零れそうになる。
(こ、こんなの舐める物じゃない……っ)
「一回で終わるわけねぇだろ、ほら」
 その言葉にもう半泣きになりながらも従って再度顔を近づけた。
 ちろちろと先端を舐めればとぷ……っと透明な液体が先端から出て来る。
「口ん中挿れろ」
 吐息混じりに命令されて、嫌々ながら咥内に招き入れた。
 「気持ち良くさせろって言ってんだよ。一々命令させんな」という言葉に、己を叱咤して愛撫する。
 つるつるとした亀頭を刺激し、舌で下から上まで舐めあげる。
 その途端に心地良さそうな呻きが頭上から降ってきて、思わず咥えたまま見上げれば心の臓が跳ね上がった。
 鋭い面立ちの鮫が眉根に皺を寄せて快楽に耐えている。
 日に焼けて引き締まった腹部や、そこにしっとりと広がる汗が酷い色香を放っていた。
 自身が見つめている事に気付いたのか、鮫がうっそりと笑みを浮かべて頭を撫でた。
 その優しい手つきに更に鼓動が早まる。
(もっと頑張ったら……もっと気持ち良くしたら……もっと撫でてくれるのだろうか。)
 そう思うと口淫が猥らになった。頬肉に亀頭を擦りつけ、出し入れをする。
 余っている所は手で扱き、時折嚢も優しく揉んだ。その間鮫をずっと見たまま。
「……っ、く」
 目が眇められ、頭に置いてある手がわしゃりと髪を掴む。
「……っは、もう、良い」
 その言葉でちゅぽり、と口から鮫の男根を出すが、気持ち良く出来なかったのかとおずおず鮫を見上げる。
 その言葉に鮫は苦笑いを零した。
「馬鹿、俺はお前を食わなきゃいけねぇんだろうが」
 だから、お前の中でイかせてくれ……という淫猥な囁きに頬と中心に血液が集まるのが分かった。


「ひぁ、……あ」
 鮫の膝の上に跨り、向かい合う。
 散々弄られ、痛みと疼きで熱を持つ後孔に硬くて同じくらい熱い物が押し当てられるのが分った。
 ――喰われる。
 途端に頭を過ぎったのはその一言。
 今から自分は牙で内側から引き裂かれ、彼に食べられてしまうのだ。それは恐怖と共に、それを勝る恍惚を呼び起こした。
「いく、ぞ……っ」
「い、ぁあああああ!!」
 鮫が息を詰まらせたのと同時に猛り、熱を放つ牙が胎内に潜り込んでくる。
 柔らかい内壁が引き攣れるのはとても痛くて、紅の目をカッと広げると大粒の涙を零した。
 ぼろぼろと音を立てるかのように溢れる涙に鮫が腰を進めるのを止め、兎の涙を啜った。
「いた、痛い……痛いぃ……」
「ん……動かないでいてやるから」
「うう、ふえぇ……」
 よしよしと優しく撫でられると、白兎は鮫の胸にすり寄りながら声を上げて泣いた。
「……でも分かってんのか?元々はお前が俺らを騙したのが悪ぃんだぞ?」
「ご、ごめんなさ……」
「本当に反省してるのか分かんねぇな」
「し、してるよ!本当に、反省してる……から」
 許して、なんてか細い声で震えながら言う物だから、まるで無理矢理組み敷いているみたいだと鮫の嗜虐心を擽った。
 いや半ば無理矢理と同じような物だけれど。
「許さねぇ」
「そ、そんな……っ」
 ぱっと顔を跳ね上げた白兎の目は潤んでいて、再度泣き出しそうに歪んだ。
「ゆ、許してっお願い、い、痛くしないで……っ」
「痛いの嫌か?」
 こくこくと細い首が縦に振られる。
「そうか。まぁ痛いのは誰でも嫌だよな」
「う、うんっ」
「だよなぁ」
 大きな手が後ろ髪を梳き、低い声が包み込む様に囁いた。
「じゃあちゃんと俺の言う事聞けよ?そうしたらなるべく痛くしないでやるから。それよか気持ち良くしてやる」
「う、うん……」
 再度、言う事を聞くと兎に言わせ、鮫は長い指で己の唇を指さす。
「じゃあ、キスしろ」
「え……?」
「お前から、俺に。ほら、してみろ」
 鋭い目が閉じられ、髪と同じ鈍色の瞳が瞼に隠される。
 厚めの男らしい唇に自分のそれを自ら重ねろと言われている事にようやく気付き、兎は一人赤面した。が、赤面していても物事は進展しない。
 身を乗り出し(と言っても、鮫のモノがナカに入っているので余り動けないが)、おずおずとそこに唇を落とした。
 思ったよりも柔らかい感覚と、重ねた瞬間何故かふわりと暖かくなった胸が気持ち良くて、再度キスをする。気持ち良くて、もう一度。もう一度。気が付けば後孔のじんじんとした痛みも薄れる程夢中になってキスをしていた。
 ふっと鮫が笑う気配と共に咥内に舌が入って来て、軽い物だったキスは深い物になる。
 それすらも気持ちが良くて、鮫にしがみ付きながらキスに溺れていると突然下から突き上げられ、先端しか入って無かった雄が全てナカに挿れられた。
 衝撃に悲鳴混じりの声を上げようとしたのに、深い口付けに全て鮫に奪われる。
 結合部がくちゅりと馴染んだ音を立てる頃には、兎は息も絶え絶えになっていた。

「ほら、あんまり痛くなかったろ?」
 くたりと力の抜けた身体を凭れさせる白兎の額にちゅ、と軽い音を立てて鮫が口付けをする。
 体格差的にそれは言葉通り、“施して”いるかの様だった。

 ぐち…くちゅ、ちゅ。
 ゆるゆると鮫の腰が動き始めると、兎は快楽にひんひんと小さく啼き始めた。
 しかし涙が零れそうになると鮫が指で拭ったり、唇で受け止めたりして、それが頬を伝って落ちる事は無い。
 痛みはまだ意識の外に出来る程弱くないが、それでも確かに痺れる様な快楽があった。
 鮫の方はというと、男にしては細く、しなやかさのある白兎の身体に虜になっていた。
 思い切り抱きしめたら、きゅうと声を上げて気絶してしまいそうな気さえする。
 それなのにその薄い腹に己の赤黒く醜い雄を受け入れているのかと思うと、背筋がぞくぞくと震えた。
 日に焼け、汗臭い自分に対し白兎は本当に華奢だ。同じ性とは思えない。身体は先程に述べたように細いし、肌は日焼けを知らないかの様に白く滑らか。首筋に顔を埋めれば良い匂いがするし、白い髪はふわふわと柔らかかった。
 けれど女の様な甘ったる過ぎる感じも無いし、そもそも足の間には小さくともちゃんと雄の証がある。
 そのツンと健気に立ち上がっているそれすら可愛がってやりたくなる程、心をそそられた。
 身体だけでは無い。
 痛いのは嫌だと涙ぐむ様子や、脅されているとはいえ反抗的な素振りをみせない従順な態度に、嗜虐心を擽られるのと同時に、守ってやりたい、どろどろに甘やかしてやりたいという庇護欲も駆られていた。
 つまりは、鮫は白兎に惚れてしまっていたのだ。
 先程から痛みと快楽に細かく震えている兎が可愛いやら愛おしいやら。
 白兎はぎゅうっと目を瞑っているために気が付かなかったが、鮫はその様子を熱の籠った目で見つめていた。

「うひぁ!」
 ぎゅっと目を瞑っていた兎だが、突然身体を跳ねさせるとパッと目を見開いた。
「や、やぁ……!みみ……っ」
 緩やかな律動を続けながらも、鮫が耳を齧って来たのだ。
 鋭い歯がガジガジと耳の縁を甘噛みする。
「や、やだ、やだ、食べないで……っ」
 薄い耳は鮫の歯で思い切り噛んだら、簡単にブツリと取れてしまいそうで、白兎は真っ青になる。
 勿論そんなつもりで鮫は噛んだつもりは無かったのだが、余りの怯えに思わず口を離し、謝るかの様にちろりと舌で撫ででやった。
 が、思いついた悪戯というには感情の籠りすぎた物のために、口ではそれとは真逆の事を言う。
「んーどうすっかなぁ」
「う、ふ……お願い、みみは止めてぇ……っ」
「……じゃあ」
 鮫は腰の動きを止め、兎の唇に指を当てる。
 またキスをしろというのだろうか、それで耳を食べないでくれるのならばいくらでも、と兎が縋る様な目を向けると、

「『好き』って」
「え?」
「言え。……俺に」
 疑問符を頭の上に浮かべ、でも鮫の余りに真剣な表情におずおずと口を開いた。
「す……スキ、デス」
 本当にそう思っているかは置いておいて、そう口にした途端、鮫の表情がとても優しい物になった。
 鋭い鈍色の目が愛おしそうな物を見るかのように細まるのを見て、兎の胸が跳ねあがる。
 本当に、本当に切なくなるくらい優しい表情に再度口を開いた。
「す、すき……好き、好き……」
 鮫はそれを聞いて目を見開いた後、嬉しそうに笑って唇を落として来た。
 腰の動きも再開され、快楽に身を投じる。
 その間もキスをされたり、身体を緩やかに弄られたりと、緩慢に、でも確実に身体を高みに上らされていった。
(――ああ、こんな風にされたら勘違いしてしまいそうだ。)
 まるで自分達が好き合う仲……恋人同士ではないかと。
 そうだったら……と想像しただけで胸がキュンと痛み、また後孔に挿入っている物を味わうかの様に締め付けてしまった。
 途端に首筋に顔を埋めていた鮫が快楽に呻く。
 その掠れた低い声の余りのいやらしさに白兎の身体はビクビクと鮫の腕の中で跳ねた。
「っは、ぁ……ンなに締め付けるなよ……っ」
「あ、あぅ、やめ……っ」
「んあ?」
「み、耳元で、しゃべらないで……」
 その声、ダメ……という、か細い訴えに鮫は一瞬沈黙したが、にやりと口を歪めると更に耳に近づけた。
「そりゃ……俺だって気持ちイから喘ぐぜ?」
「ひっ」
「お前のナカ、美味しい美味しいってぎゅうぎゅう俺を締め付けてさ……っん、はは、ホント……気持ち良い……」
「や、やぁ……あ、あっ、ひぁっ」
 耳を唇と舌で舐りながら、時折はぁ……と掠れた吐息をわざと吹き込む。
 その度に兎は背筋を震わせ、きゅうきゅうとナカを絞る物だからまた吐息が洩れる、という白兎にとっては辛い悪循環に陥っていた。

「ん……っそろそろ、出すぞ……っ」
 ほら、お前のも扱いてやるから達け、と鮫が白兎の性器を擦り上げてやると、兎の口から洩れる嬌声はさらに高く、甘い物になる。
「やっ、そこいっしょに触っちゃ、ダメっお、かしくなっちゃ……っ!!」
「おかしくなれば良いだろ……っナカ、たっぷり出してやるから」
「ひゃん!!や、やっ、ダメ、中には出しちゃダメぇ!」
「ダメダメ煩ぇな……駄目っつっても出すから大人しくしとけ。お前の腹ん中、真っ白に……染めてやるよ」
 そう言って耳に強めに歯を立てるのと同時に深く突き出すと、鮫は腰を震わせて吐精した。
 突き上げられ、腹の中を濡らされる感覚に白兎も甘く喘ぎ、ぴゅ、ぴゅくと鮫の手の平の中に白を吐き出していた。

 漸く事が終わると、白兎はぐすぐす泣きながら脱ぎ散らかされていた衣を身に纏った。
 腰はずきずき痛むし、気が緩むとナカから鮫が出した物が出て来るしで上手く動けない。
 しかしそれは全ては自分が撒いた種。むしろ命を落とさなかっただけ有り難いと思わなければいけないのかもしれない。
 行きたかった島を遠目に眺め、すん、と一つ鼻を鳴らすと、元々朱い目を更に赤くして、のろのろとその場を立ち去ろうとした。
 しかし。
「おい俺の子種入れたままでどこ行くんだよ」
 寝っ転がっていた鮫が腕を伸ばし、ガシリと兎の腰を掴んで引き寄せた。
 体格差的にも力の差的にも劣る兎は軽々とその腕の中に収まってしまう。
「こ、こだね……!?」
「たっぷり詰めてやっただろう?んだよ、まだあの島行きたいのか。この島のどこが気に入らないんだよ、あんまり変わらないだろうが」
「……だ、だって」
 しょんぼりと白兎は項垂れた。
「ここには仲間がいないもの……」
「はぁ?兎はいっぱいいるっつただろうが」
「う、兎はいっぱいいるよ!……でも、赤兎ばっかで……白兎は、僕しかいない、から」
 あの島に行けば、一人くらい仲間がいないだろうかと。
 白い毛を笑われないですむ場所にはならないかと思ったのだ。
「じゃあもう行かなくていいじゃねぇか、俺がいるから」
「……へ?」
「仲間が欲しかったんだろ?」
「……う、うん」
「一人だと寂しいから」
「……うん」
「笑わないでくれて、一緒にいる相手が欲しかったんだろ」
「うん」
「なら俺がお前の傍にいる。それで解決だ。島に渡る必要はねぇ」
「え、ええ……っ」
 何だか困った事になりそうで、逃げようと身を捩ろうとしても兎の身体は鮫の逞しい腕の中。
 慌て始めた兎に向かって鮫はにんまりとした笑みを浮かべた。

「もうお前は逃げられねぇよ。何せ俺はお前を喰ったんだから」




 哀れな兎の身は鮫に喰われた。
 さて、心はいつ喰われるのだろう。

 そう遠い未来の話ではあるまい。




- 終 - 
2012.01.19


 

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