昔に思いを馳せている内に最後まで下りきったようだ。
「凄いな、こりゃ…」
思わず感嘆の溜息が口から零れた。
まさしく牢獄といえる檻がずらりと並んでいる。
映画の中でしかお目にかかれないような光景だ。
一つを覗き込んでみると壁に繋がった鎖や枷が見えた。
「本物だな…」
一つずつ見て回る。
遺跡や、寺、神社のような歴史が垣間見える物が好きだから思わず少し乗り出し気味で観察する。
少し疑問に思うのは、腕、足、首に付けるにしたって枷が多すぎる檻がいくつかある事だ。
大人数を入れたのだろうか。
しかし檻一つ一つの大きさは大人一人分くらいしかない。
捕虜だからという事で良い扱いを受けて無かった可能性が重々あるが、それでもすこし気になった。
見ていたら一つの檻の中の石の床に不自然に染みがあった。
それに少し息を呑んで、慌てて目をそらす。
脈拍が上がった気がした。じっとりと汗が出る。
「サラン…かえ「かか様、この檻入れるよ!」
するりとサランが檻の一つに入ってしまった。
「こら、出れなくなったらどうすんだ」
「かか様、捕虜の人達はこんな風景を見ていたんだね…」
俺の言葉も聞かず檻の中でくるくるとサランが回る。
それに苦笑交じりの溜息をついて、引き戻すために俺も中に入った
「…」
狭い中見える風景は鉄格子越しだ。それは更に空間を狭いものに感じさせる。
「サラン…帰ろう」
声が震えないように俺は意識してサランに手を伸ばした。
その時
カチャン…
と微かだが、はっきりと音がした。
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