「そこで4代目の王はブラニテと同盟を結ぼうとしたけれど、どうしても相容れず、実現したのは6代目だという…あ、ここが国に招いたお客様のお部屋です!」


ぺらぺらと今日家庭教師に習った事を話しながら各々の部屋の説明もするサランは生き生きとしている。

家庭教師に習った事は理解しているのだろうが、口で説明する時は教師が口にした言葉なのか教科書どうりなのか分からないが、口調が重々しくなる。
けれど部屋の説明になると軽くなるそのギャップに笑いを堪えるのも一苦労だ。


「えーっと、で、あのお部屋が父上の―――『あ、あぁん!』


聴こえて来た声にばっとサランの耳を塞ぐ。

あ、あんのやろ!ここでも盛りやがって!!!

耳に飛び込んできた嬌声に俺は青筋を額に浮かべる。
アギアはあれから未だ子供の姿に戻っておらず、今の内にとでも言わんばかりに所かまわず女を抱いていた。

本当に勘弁してくれ。

遭遇するのはこれで5回目だが、サランと一緒に遭遇してしまったのはこれが初めてだ。
どういう対応をしたらいいのかと冷や汗を浮かべると、耳を塞がれたサランがくすくすと声を上げた。


「かか様、大丈夫」


僕、分かってますから と耳を塞がれたまま俺を見上げる。


「父上はあれもお仕事の一つなんでしょう?大丈夫です、分かってるから」

「いや、だけどあれは…」

「あの行為が子供をつくる為の行為であって、他の人は仕事にしない事もわかって――…」


俺はサランがそれを言い終わらない内に横抱で抱えて走り出した。


「か、かか様?」


階段を駆け下り、嬌声が聞こえない所まで来てから俺はサランを下ろし、膝をついて同じ目線になる。


「確かにあれは王の仕事かもしれない」


サランがきょとんと俺を見つめる。


「だけどな、あの行為自体は愛しい人と…大切な人とするもんだ。
誰でも良いって訳じゃない。
お前の父さんは訳があってああやって多くの人と肌を重ねているけど、お前は…」


澄んだ茶色の目を見つめて言葉を続けた。





サランに関わる事になった時にアギアからあらかたサランの生い立ちを聞いている。


――16の時に抱いた女が自分の子を孕んだというのは知らなかったし、想像もしなかった。
中で達することは稀だし、皆避妊させていた筈だからだ。
それを知ったのは17の時。
門の前に白い髪の赤子が籠に入れて置いてあったと門兵が色々な思いを抱えて泣きじゃくりながら連絡しに来て初めて知った。


『は?じゃあお前の目の届く所でサランは生まれた訳じゃねぇのか。それなのになんで自分の子って分かる』

『髪が、白いからだ』


白い髪を有するのは王の血を継ぐ者のみ。
歳をとれば白い髪になる者は沢山いるが、生まれた時からこの色なのは王だけ。


『遺伝が強いらしくてな。
どんな血の者と混じろうとも、髪色だけは絶対に変わらん』


城中と国中が喜びに震えた。
見つけた門兵は「見つけた時はもう、嬉しさと畏れ多さとで泣いてしまいました」とまた泣きながら喜んだ。

が、皆反面暗い気持ちを胸に抱えていた。

――次期王となる者を母親は捨てたのだ――と。



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