※女性との絡みを窺わせるシーンがあります。
菓子を片手に、お茶の用意を片手にアギアの部屋に戻る。
それにしても今回はえらい色鮮やかな菓子だったな。美味かったけど。
いつもはそのままの色…というか、見た目も綺麗なんだけど華美じゃないっていうか…。
もちろん使っている食材が豪勢で見た目も豪奢になっている事もあるのだが。
すたすたと派手ではないが、センスの良い絨毯を踏んで廊下を進む。
アギアの部屋の大きな扉を開けようと片手に荷物を纏めて、取っ手に手を伸ばして凍りついた。
『あ、ああんっ、あっ、あっ、はぁんっ!!!』
という声が扉の向こうから聴こえて来た気がしたからだ。
……え?
思わずここが自分の部屋か?とホテルで辺りを見回して確認するように周辺を見る。
うん。間違ってないと思うが…。
というかこんなにデカイ扉はアギア専用だ。
俺の聴き間違いか?と耳を澄ますと
『ああぁんっ、あ、あ、気持ちイイっ!ああっ!!』
という女性の声とおまけにぎしぎしという軋む音まで付いて来た。
AV…んなわけねぇな。テレビが無いもんな。
というかこの世界には電気が無い。
大抵は蝋燭らしいが、この城は魔法を使ってるらしく電気とそう変わらない。
他では虫を使ってたりもするそうだ…じゃ、無くってだな。
額を少し押さえる。
そうだった、アイツ爛れてる奴だった…今までそんな素振りが無かったからすっぽり頭から抜けていた。
『ゆっくりで良いぞ』と言ったアギアの言葉と表情が脳裏に浮かんだ。
…アイツ、もともとそのつもりだったな。
というか、アイツは12歳の姿で相手を組み敷いているのだろうか。それとも相手が押し倒して…?
…止めだ止め。他人の情事を想像して何が楽しいってんだ。
というか、リアルに想像したら犯罪モノになりかねんぞ、それ。
「…このお茶どうすっかね…」
俺は菓子とお茶に目を落して溜息を吐いた。
このままでは冷めてしまう。
いや、冷めても美味しいお茶なのだが折角なのだから熱いうちに飲みたい。
「…俺の部屋で飲むか」
溜息を吐きながらくるりと踵を返すと自室に向かった。