adjoin ‐隣り合う‐ 

アギアはこの視察の話を聞いた途端にニヤニヤ笑って「好きにすれば良い」と言った。
王の許可も得、4人の長達は二つ返事で俺の視察を受け入れてくれたらしく、俺は各地を回る事になった。

…本当に二つ返事でかはあやしいところだ。
そう言った時にリュスの目が泳いでいたし、俺を睨んでいたあの少女紛いな少年が俺をすんなり受け入れてくれたとは思えない。

――…まあ、邪魔になって嫌われない様にしよう。

そうひっそり俺は心に決めた。


俺を迎えるのにも準備があるという話で、それが出来しだい俺は出発するらしい。
それまでは城でゆっくりすごせば良いとアギアにもリュスにも言われた。

だから朝はゆっくり寝ていようと思っていたのだが、かなりの早い時間にリュスに布団を剥ぎ取られる。
「ここにいらっしゃったんですね!」という言葉が耳に入って来た。
…だってここ俺の部屋じゃねぇかと奪われた温さに眉を顰める。

「お召し物を持ってきます。すぐに戻ってきますからそれまでに絶対起きててくださいね!」 と共にリュスは去っていった。


「えー…俺もう少し寝ていたい…」


ぶつぶつと呻くと


「俺もだ」


?あれ、なんか下の方から声がしたような…。


「うお!?」


腰を見るとぼさぼさの髪のアギアがしがみ付いていた。
どうりで夜中寝返りを打ちにくいわけだ。
…え、気づけって?俺、眠りが深いからちょっとやそっとじゃ起きねぇんだよ。


「何してんだ」

「う…ふぁ…」


目をぐしぐしと擦りながらくぁああっと欠伸をするその姿はまさに子供そのもの。
…あーやばい。普通に可愛い。22歳の男なんかに全然思えない。


「何って…寝てただけではないか」

「ここは俺のベッドだ」

「ここは俺の城だ」

「…それ言ったらプライバシーもクソも無くなっちまうだろうが」


その通りだから強く言い返せないのだけれど。


「うー…」


また目を閉じながらアギアは俺にひっついた。


「お前の側は心地良いからな。良く眠れる」

「…」

「体温が高めなのか?温い…」

「…」


そう言って俺の胸に頬を擦り付ける姿に俺の心は鷲掴みだ。
むしろ歓喜して身体が震えかねない。
この目付きだから子供になかなか懐いて貰えない。だからこんな風にされるのなんて初めてだ。


「あ、やばい、なんか嬉し泣きしそう…」


目頭を手で押さえる。
いくら目の前のこの少年が22歳の男なんだと言われたってその22歳時姿を見てない訳だし、もう良い。
俺の中でアギアは子供だ。良いじゃないか、今くらい子供に懐かれてる気分を味わったって!

心が温かくなって、滲みでる笑いをそのままにぼさぼさの髪を手櫛で整えてやる。
その感覚に薄らと目を開いたアギアはちょっと目を見開くと小さく笑った。


「なんだ…そんな顔も出来るのではないか」

「は?」

「なんでもない…独り言だ」


再び目を閉じて眠ろうとしたアギアを戻って来たリュスが襟首を掴んで起こし、着替えさせて連れて行った。

…朝から忙しい。
俺は欠伸を噛み殺しながら今日一日何をしようかとゆっくり考えた



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