「あー…。一番の目的は『リュスの黒の翼の恐怖を拭う』と『黒の翼の長と親しくなる』だから、クリアしたしもう別に良」

「あかん!!」

「は?」


自身を納得させようと呟いた言葉に全力でシフィアが否定して来る。


「親しくなんてなっとらんし、俺はまだ満足しとらへん!」

「んなこと知るかよ…」

「何でや!!俺この空気どないかしたやんか!俺の屋敷の来てぇな!
そこで俺を罵って、詰って、踏んで、躙って、鞭打って、蝋燭垂らして激しく吐精させて…っああでも此処で公開プレイもまたなんとも言えへん…っ」

「うおおおお黙れ、変質者!!!!!」


思わず顎をグーで殴ると、仰け反りながらシフィアは非常に良い笑顔をした。


「ああ、堪らん…っもっと…!!」

「うぁあああ!!ホント黙れっ」

「うふふ、仲がよろしいのですね」

「手前、目ぇ腐ってんのか!自分の不安がどうにかなったからってほやほやしてんじゃねぇぞ!」

「ああずるい!そんな風に俺も罵ってや!!」

「…ってめ、その口縫いつけてやろうか!!」

「ああ…っ良い…イク…っ」

「うわぁあああああ!!!」


シフィアが何を言おうが長年のトラウマから逃れたリュスは頭に入って来ないのかにこにこと眺めるわ、俺が嫌がり思わず罵倒するとその言葉に恍惚とした表情をしたシフィアはその場で身震いをするわでようやくその場が収まった時には俺は口から半ば魂が抜けだしそうになっていた。


「でもシオイ様、オレウリオス殿の提案もよろしいと思います」

「え、Et tu, Brute!!!!俺にアイツを踏めと…!お前も変態かこの野郎…っ」

「いえ、オレウリオス殿の領地を訪れる事です」


ふむふむと頷きながらリュスは考え考え話し始める。


「この国や民の事をお話しようとずっと考えていたのですが、忙しくて中々お話出来ません…。
そこで四つの長が治める領地をシオイ様直々に訪れて頂いた方が良いのでは…と。もちろん警護を長達に頼みます。
実物を見て頂いた方がシオイ様も理解しやすいでしょうし…。
なによりもこの城に長々閉じ込めておくのはシオイ様がつまらないでしょうから…」


嬉しそうに両手を合わせてリュスは頷いた。


「いいですね…そうしましょう!さっそく長達に話をつけますね!」


確かに実際に見た方が俺も分かりやすい。

けれどその分他の人の世話になるわけで、ぽっと出だというのに高い地位に就いて引かれっぱなしの俺の後ろ髪が引きちぎれそうだ。
これ以上他の人の迷惑になったら禿げる。
あの場のテンションでついうっかりな感じでやってしまったが、良く考えれば長とかそんな立場の人を名指しで指定して「話合おうぜ」なんて言えたな、俺。

…あ、今考えただけでふらっとした。

気分が上がると周りが見えなくなるのどうにかした方が良いかもしれない。
酒の席で何度失態を晒した事か…。

反省をする俺にリュスはにっこりほほ笑んだ。


「そうすれば私の仕事も減りますし!!」

「本音はそれか、ちくしょう!!」

「私は喜んでお引き受けしますからね、リュースレア様!!」

「ありがとうございます、オレウリオス殿」

「お前のとこだけは行きたくねぇ…」


頭を抱える俺を横目にリュスはいそいそと他の長達の所へ説明しに席を立った。

――…ああ、この調子だと俺各地方を回る事になりそうだな…。

客観的に自分の今後を眺めながら俺は遠くを見つめた。



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