「いっ!おまっ、Mって言ったじゃねぇか!!」


なのに何だこの仕打ち!!

思わず睨むと心底嬉しそうな顔をして身震いをされた。
…睨んでも、罵倒しても、殴っても、蹴っても喜ぶMの対処は一体どうすればいいんだ。

睨むのを止めた俺に少し残念そうな顔を向けながらシフィアは血が滲む足を恭しく両手で支えた。


「レ・ゾル・スィエロ・フシェッフシフィアト=オレウリオス・クレオア・ロ・エルルエ・フィア」


さっきのテンションはどこへ行ったのかと思う程静かにそう言うとつま先に額をつけ、うっすらと滲む赤に舌が這う。
べろりと濡れた感覚に身震いをしたが、何故か止めてはいけない気がして口を開くのが躊躇われる。
そんな厳かな空気を「んーほら言うた通りや。美味やわぁ…」という言葉がぶち壊した。


「おいお前なぁ…」

「ああっ、このアングル最高!女王様っぽいで!」

「馬鹿か」

「もっと言うて!」

「駄目だコイツ…」


溜息を吐く。


「何て言ったんだ?」

「『俺は下僕です。踏んで蹴っていたぶってください』」

「…まじか」

「ウソウソ!冗談通じぃへんなぁ!!」

「お前の口から出るそういう系の単語は冗談に通じねぇんだよ」

「んー…昔の言葉やし、式典とかで使う形式ばったやつやから、しっかりとした意味はよお分からんけど『黒の翼の長は正妃に永久の忠誠を』的な感じやないかな。因みに王にもするで」

「ふーん…でも俺なんかに忠誠なんぞ誓って良いのか?1年で帰るんだぞ」

「ええのええの! 一目惚れやし!」

「はあソウデスカ…」


黒の翼さん達は大丈夫なのか、こんなのが長で。


「俺はアンタなら色々とこの国をより良い方向に向かわせる事が出来るんやないか…と思っただけや。
根拠はあらへん。直感や。
『ただアンタに惹かれた』
たったそれだけやけど、俺はそれに従って後悔はせえへんと判断した。
大丈夫や。俺はこの直感で今まで一族を引っ張ってきたんやから」


急に真面目な顔でそう言うシフィアは長の顔で、前言撤回をしたくなるほど責任に漲っていた。
なるほど確かに一族を纏める地位に立つだけはあるんだなと見直しかけた瞬間


「まっ、どうでもええけどこれで俺はあんたの犬や!!」


変質者じみた、だらしない顔でにやけた。

…前言撤回。やっぱり黒の翼の長は変態ドMだ、このやろう。



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