俺はオレウリオスの首筋から慌てて口を離してリュスに言い訳をする。


「リュス、待て!これには色々と事情があって…!!」


心境は彼女に他の女といちゃついているのを見つかった彼氏のようだ。
男色家とでも思われて正妃をごり押しでもされたらたまらない。

高そうなティーセットが無残なまでに割れて散らばっている。
リュスは真っ青に青ざめ、片手で口を覆った。


「し、シオイ様も吸血者なんですか?!」

「おおっとそう来たか!」


うんまあ…そういう見解もありなのか。


「違う違うこれは…あー…」


なんて説明すれば良い?

『黒の翼の長さんの意外過ぎる性癖のカミングアウトを受けました。そのカミングアウトのきっかけは俺の軽い言動の所為でもあるので、その性癖を満たすために首筋に噛みついていました』か?

うっわ、カオスすぎる。


「…なんて言えば良いんだ?オレウリオス」

「正妃に私の悩みを解消してもらっていましたリュースレア様」


無表情にそう答えながらオレウリオスは俺から身体を離した。
離れながら小さな舌打ちと「ええとこやったのに…」と聞こえたのは多分空耳ではない。


「え、ええっと、そうですか…あ、ああ、お茶が!!」


おろおろと目を泳がせていたが、無理矢理自分を納得させたのだろう。
リュスは頷いた後に、ようやく自分の足元に散らばった残骸に気付いて叫んだ。


「何やってんだアンタ」


思わず苦笑する。こいつはこの国の宰相だというのに不器用で間が抜けすぎている。


「代わりのお茶を今すぐ…っ!」


…物凄い勢いで出ていったリュスは戻ってくるのだろうか。


「ったく…」


散らばった欠片に俺は手を伸ばし片づけていく。


「…ふーん、手際ええやんか」


肩からオレウリオスが覗く。


「あ?ああ そりゃどーも」

「つまらへん 指でも刺せばええのに」

「…さらっと酷いな」

「血でも出れば俺が舐めたる」


なんだそのベタな展開。


「あんた赤の指の純血みたいなものやし、見たとこ栄養も偏っていなさそうやし、若いし、美味いと思うで。俺が保障したる」

「そんな保障いらん!! てか、そういうのなんだな。美味い美味くないの基準は」

「そうや。
どれだけ純血に近いか、健康的か、そして年齢が鍵なんや。」


そう言いながら肩を引かれた。もちろん体勢を崩して後ろに尻をついてしまう。


「なんだよ」

「ちょ、そんな目で睨まんで! 動悸息切れが止まらんやんかっ」


…もうこいつと目を合わせるの止めよう。そう心に決めた。

呆れた顔をしている俺を横目に、オレウリオスは俺の左足の靴を脱がすと靴下も脱がした。


「オレウリオス、何し」

「シフィア。シフィアって呼んでぇな」

「シフィア、何がしたいんぃいっでぇええええ!!!!!」


俺の左足を自分の膝に乗せたオレウリオス改めシフィアは、俺が名前を呼ぶとにっこりと笑った。

なんだそんな顔も出来るんじゃないか。

そうしていれば冷酷さは薄れ、甘さがうっすらと出てくるのに と思っている俺の左足の甲に、シフィアはその笑顔のまま、俺が集めた破片の一つを押しあてて、皮膚を割いた。



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