「それでは部屋に行くまでの間にこの世界のご説明をいたしますね。
お話をしようと思っていたのですが忙しくて中々出来ませんでしたから…。
この世界に国はいくつかございますが、主な大国は3つ。このファルテーロ。それとレファウ、ブラニテの2つです」
大きさ的にはブラニテが群を抜いて大きいが、レファウは商業が富んでいるらしい。
それではこのファルテーロは何が富んでいるかというと、『人種』だそうだ。
ブラニテ、レファウは一つの種族で構成されているが、ファルテーロは大きな流派で分けても4つはあるという。
人種が違うと、習慣・重きを置く物・タブー…と異なりいざこざが起きやすい。
それを潤滑に治めているのは今までの王が優れていたからだという。
多くの習慣は争いの種になる。
しかし手綱を握り、上手く導ければそれは多くの文化が溢れるメリットへと変わる。
レファウとは初代からの、ブラニテとは6代目からの友好関係にあります。とリュスは続けた。
「そして今からお会いしていただくのは我が国の4人の長です」
種族が多い国を丸く治めていくために、名君と謳われる初代は国の四方を、国を創り上げた際に最も力になった4つの種族に名前を与えて治めさせた。
「初代の時はその4つの種族は皆純血でしたが今では他族と混じり、純血は特殊な一族と長寿の者を覗いてほとんどおりません」
種族の中で、最も強い者、慕われる者、聡い者がその地位につくという。
「東を青の風【シャンテ】
西を白の牙【ユーソン】
南を赤の指【メーア】
北を黒の翼【スィエロ】と呼ばれる民の長が治めております。
彼らがどのような性質の者なのかは私がシオイ様の側に控え、面識の際、直にお教えいたします。」
着きましたこの部屋です。と大きな扉をリュスは開けた。
中は広く、奥で既にアギアが明らかに玉座と思われる大きくて豪華な椅子に腰かけて頬杖をついていた。
「遅い」
さっさと座れ。と自分の隣の一回り小さな…といっても椅子としては立派な作りの椅子をぽんぽんと叩く。
俺がそこに腰かけるとそれを見計らったように一人の老人が出てきた。
ゆったりとしたローブの様なものを着て、杖をついてきたザ・魔法使いな格好のお爺さんは、白い髪も、髭も、眉毛も長く目が見えない。
「お初にお目にかかります妃様。この老いぼれめが白の牙【ユーソン】の長をやっておるナインと申しますじゃ」
長い眉毛を手で持ち上げ、緑の目を細ませてほっほと笑うそのお爺さんに俺は好感を抱いた。
隣に立っていたリュスが口を開く。
「血縁を気にせず、仲間内の絆の強いユーソンは名前が短いのです。
我らが竜と呼んでいるのが彼ら…今では純血はほとんどおりませんでしょうが。
彼らの寿命は長く、希少な純血のナイン殿は御歳1032歳になられるというお話です」
「せ、1032?!」
聞けばこの国の5代目王の時から仕えているという。
驚いている俺の前にまた一人誰かが出てきた。
「アタシは赤の指【メーア】の長のレイ=ミオル。どうぞよろしく」
艶然と微笑むその女性はいわゆるぼんっきゅっぼんのメリハリあるボディーを露出度の高い服に包んでいた。
…とりあえず上に何か羽織ってくれないだろうかか。目のやりどころに困る…。
「赤の指はシオイ様と同じ人間と非常に近いとお思いください。
しかし、ここの民が一番他の民との交わりが多くこれまた純血はいないに等しいのです。
私もメーアに属しますが、この身体にはユーソンの血も流れております。
あえていうのならシオイ様はメーアの純血という事になるやもしれません。」
臙脂色の髪を高く結い上げているその艶やかな美人さんは赤い唇を弧の形にし
「やっぱり男なんじゃない。あの格好みて驚いたわーアンタの趣味?」
とからからと笑った。
「…リュス」
「…は、はい」
「何を言いたいかわかるよな?」
「…申し訳ございません…」
やっぱり可笑しいんじゃねぇか!! と物凄い目で睨んでいると
「似合ってたわよ」
「んなことあってたまるか!」
あ、やばい。思わず…。
「あら…それが貴方の地なの…いいわ気にいった。よろしくね」
なよい奴だったら仮に1年としても叩きだしてやるつもりだったわと笑う彼女の方が俺が座ってる椅子が似合う気がする。
「ヴィア、来なさいよ」
ミオルさんがちょいちょいと陰に手を振るとゆらりと人影が傍の柱から出て来た。
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