「っ!〜〜〜〜っんっ!」


俺は思い切りアギアを突き飛ばした。渾身の力で。
なのに艶然と笑いながらアギアは


「どうだ? 少しは楽になったか」

「はぁあ?!」


青筋を浮かべながらアギアを睨みつける。
別にファーストだとかセカンドだとか初ディープだとかそういうのじゃない。
女性関係はそれなりに積んだつもりだ。けれどなんでこんなガキとこんなキスをこんな頭痛のする時に…に? あれ…頭痛がしな、い?


「おろ?」


俺はこめかみを少し押しながら首を傾げた。


「やはりな。
あちらの世界の者が此方の世界に来ると気が乱れて体調を崩す事があると聞いたことがあった。
そなたの様な莫大な気の持ち主ならば尚更ではないかと思ってな」

「それとこれはどう関係があんだ」

「リュスが言わなかったか?そなたと余が番になればこの国は潤うと」

「ああ、だから1年妃の…」

「言っておくが、妃の座に就く事と番になることは違うからな」

「は? どう?」

「番になるという事は、交わるという事だ」


交わ……って ぇえええぇええええ?!


「凸と凸でどう交われってンだ?!」

「今回は異例だ。歴代の正妃は皆女だった。
まあ…男だとて交わることは無理ではないがな」


俺は自分の身を腕で抱きしめて震えた。


「ありえねえ。ありえねえよ…」

「話が戻るが、王と正妃が番となれば国は潤う。
そなたは歴代の中でもずば抜けて強いから座に就くだけでも国は潤いの方向へと進むだろうが…。
しかしな、番となる事で国が潤うだけではない。王が正妃の気を使う事で正妃の気を整える事にもなる」

「ほお…」

「故に今しばし交わってみた」

「あ…そういうことか」


つまりこいつは俺の為にしてくれたってことか?
てか、これも交わるにカウントできるのかよ。


「えーっと、ありがとうございま、す?」

「何故語尾が疑問形になっておる」

「いやーなんかこう理不尽な気がしてさ…」


眉根を寄せて腕を組んで首を傾げる。


「まあ余も…」

「あのな」

「なんだ」

「その『余』ってのはどうにかならないのか?」

「む?」

「堅苦しいだろ?自分の事は『俺』、相手の事は『お前』くらいでいいんだよ」

「ふむ…」

「ほれ言ってみ」

「…『俺』にそんなことを言ったのは『お前』が初めてだ」

「ん。良し。生意気に聞こえるけど、そっちの方がまだ良い」


わしわしと頭を撫でてやる。
こんな外見だが、俺はけっこう子供が好きだ。
一人っ子で弟に憧れていたからかもしれない。


「…やはり『お前』は面白い…」

「あ?」


アギアが小さく呟いた言葉は俺の耳には入らなかった。


「慣れぬ世界に来たのだ、ゆっくり休めば良い」


そう言って俺を軽くベッドに押し倒すと額に口付けをして


「レ・イギラ・ナロ・エ」


とアギアは呟いた。


「何語だ…それ?」

「この世界の古代の言葉でな、もう使われておらん。
『我が太陽となって照らしている』に近い意味だ。まじないの一種だな」


悪い夢を見ないようにとか、悪い事が起こらないようにという時に使う。良い夢を見よと微笑んでアギアは俺の頭を一撫でして出ていった。

――なんだか俺の方がガキみたいだ。

俺は小さく溜息をついて、また眠りの淵に沈むことにした。



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