王を指さし、大声で怒鳴ったシオイ様はそのまま後ろのベッドにふらりと倒れた。


「ああ!昨日あれだけ飲まれたから!!」


慌てて駆け寄ろうとして微動だにしない王に気付く。


「王…?」


まさかお怒りになっているのでは?と恐る恐る顔色を窺う。

ファルテーロ13代目王となられたアギア様は幼き頃に王位を継承なされて多くの苦労をし、今では初代と肩を並べるほどの名君と謳われておられる。
それはそれは総明な方ですが…ただ…その…女性関係という点では…それなりの理由があると言えども、爛れて…いえいえ!少し節操がないのでして…。

そこだけが唯一の欠点で、それを妃の素質があるといえどあったばかりの人にずばずば言われてお怒りになっているかもしれないと心配をしていたのだが、当のアギア様は口角を上げて、あんた本当に名君か?!とつっこみたくなるような悪い笑み…いえなんでもございません。
色々と含みのある笑みを浮かべていた。


「面白い…気に入った。そいつは余が責任を持って面倒をみてやろう」


ふっと笑いを零したアギア様は身を翻して部屋を出て行かれた。

ぼんやりとそれを見送った私はここに来た一番の目的を思い出して慌てて後を追った。







髪の毛を柔らかく梳かれる感覚で目が覚める。


「……母、さん…?」


こんな風に優しく頭を撫でてくれる存在は母しか思い浮かばなくて、俺は寝ぼけた頭でその存在を口にした。
気持ち良い感触に目を細めるとまた眠りの淵に沈もうとした。が


「お。起きたか妃よ」


その言葉にがばっと頭を上げる。

そこにいたのは俺に添い寝をするかの様に寝転ぶアギなんとか=ファルテーロ…なんだっけ?


「あー…名前なんだっけ?」

「アギアラトだ アギアで良いぞ」

「そうそう…って、何添い寝してんだよ」


ずぐずぐと痛む頭を押さえながら疑問を口にする。


「いやなに、いやにうなされておったのでな」


そう言ってアギアは髪をまた撫でた。
どうだ感謝しろと言わんばかりの表情と髪を撫でる手の優しさがなんだか矛盾していて混乱する。


「まだ痛むか」

「あ?あ…ああ」

「そうか」


髪を梳く手を止めると、アギアは俺の後頭部に手を回して
唇に唇を押しつけた。


「!?」


見開く俺の視界に映るのはアギアのどアップ。
まるで唇を食べるかのように甘噛みされると、驚きで半開きの口の隙間から舌が入り込んで来た。
湿ったを立てて舌と舌が絡む。

――が、ガキがこんなキスしてんじゃねぇよ!!



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