3* 

暖かいけど乾いた手が服の中に入れられて、肌の上を滑る。
背中からジュエさんの熱が伝わって来るのが嬉しいような、気恥ずかしいような、そんな気持ちで折りたたまれている翼が擽ったい。
触れるだけのキスが深い物になったのはジュエさんが舌を入れて来たからだ。
でも、こうなったのは自分が、誘ったから。

唇が離れた後、震えるそれでジュエさんに抱いてくれませんかと囁いた。
初めて自分からお願いをした。いや結構最中にいやらしいお願いを口にした事はあったけど、始まりをお願いしたのはこれが、初めて。
ジュエさんは驚いたように一瞬目を見開いたけど、微笑んで「喜んで」と言ってくれた。

チャリ…と胸にぶら下がった銀の指輪が音を立てる。
本当に嬉しい、嬉しいけど…でもやっぱり悪夢の残滓は残っていて。
ジュエさんは一人にしないと約束してくれたから、一人になる怖さは無い。
あるのは、命が消えるという事の死への根本的な恐怖。
だから今、生きているジュエさんを身体一杯に感じたい。
暖かい体温を、鼓動を、呼吸を。だから…


「…大丈夫、夢の事なんて忘れるくらい気持ち良くしてあげる」


そう言って額にキスをしてくれたジュエさんに、ああやっぱりこの人に敵う事は一生無いだろうなと思いながら、瞼を閉じて身を委ねた。



するすると大きな手が肌を撫でる。
ジュエさんの手は手の平が大きいというよりも、指が長くて手が大きい。
指先でそうっと触れるか触れないかで撫で回す時もあれば、手の平全体で揉まれる様に撫で回される事もある。
今は、臍の周りを指先で擽られながら、左の胸の飾りを弄られている。


「…っ、ふ…」


摘まれて、指先を擦りあわせる様に弄られたと思えば、軽くピンと弾かれる。
そのまましこったそこの硬さを確かめる様に指の腹で撫でられ、急に乳輪ごと思い切り摘まれて痛みに身を竦めると、直ぐに指は離された。
でも直ぐにまた、最初から一連の動作を繰り返される。
いくら敏感と言えど、そこだけを弄られ続けるのはとてももどかしくて辛い。
緩く反応をし始めた中心に無意識に膝を擦りあわせれば、耳元でふっと微かに笑い声が聞こえた。


「可愛い」

「ぁ…」


いつもはすぐに恥ずかしい事をされて、何もかも分からなくなるくらい気持ち良くされてしまうのに、今日は服を脱がされていないどころか、腰から下に触られてすらいない。
さっきからくるくると臍を擽っている指先に焦れる。
下腹をさわりと撫でる事はあっても、ズボンの中にまで入って来ない。

――ああ、もう少し、もう少し下にずれてくれたら…。

あの大きな手で擦り上げられ、意地悪く刺激される感覚を思い出してジワリと先端が濡れた気がした。


「ひゃうっ!」


突然首筋を舐めあげられて身体を竦める。
普段こんな事をされれば、直ぐにでも振り返って怒ってしまうのに、今はじっとそれを受け入れる。
いや、その次に何をしてくれるのだろうと心のどこかで期待して背筋をぞくぞくと震わせているのだ。
…こんなに自分勝手だと、呆れられたりしないだろうか。
急に不安になって、そっと窺う様にジュエさんを仰ぎ見れば、それをどう取ったのか青い瞳を細めて優しく抱きしめられた。


「ふふ、今日はとことん優しくして甘やかしたい気分」

「?いつもジュエさん優しいですよ…?
俺の事気にしてくれて、我儘とか言っても許してくれて…その、こういう時だって痛くないか聞いてくれるし、痛くないし、その…どちらかと言うと、き、気持ち、良い…し…」

「…煽っちゃダメでしょ、優しく出来なくなっちゃう。
そりゃぁゴルジュを傷つけるなんてもっての外だし、痛がらせて興奮する様な性癖は持ってないけど…そういう意味じゃ無くてね、こうやって…」


するっと下腹を撫でられる。


「ゴルジュの体温とか、匂いとか、手触りとか。いっぱい触って満喫したい」


いつもはゴルジュが可愛すぎて最初から飛ばし気味だからねぇと呟くジュエさん。
…飛ばし気味と言うけれど、確かに時々性急に求められる事はあっても、他の時は優しい…というか、もう口では言えない様な事を色々とされるのだが、そういうのとは違うのだろうか。
あれも凄くいっぱい触られている気がするんだけど…。


「…ふふ、今日はいつもみたいにアブノーマルな事はしないから」

「……自覚はあったんですね」

「まぁね」


ゴルジュが可愛いのが悪いんだよ、と理不尽かつ理由にならない事を当たり前の様に言われる。


「可愛いくて綺麗な物は大切にして、愛でたくなるのが人間って物だよ?それが生きて来た中で一番の物なら猶更…ね」

「あっ…!や…っ」


突然中心を握り込まれて身体を跳ねさせる。
その反応にくすくすと楽しげな笑いを零しながら、ジュエさんはズボンを下して下着の中まで手を入れて来た。
さっきまでは全く触れようとしなかったのに、そんなのはまるで夢だったかの様に無遠慮なまでに弄り、擦り、揉み込んで来る指に腰を揺らす。
ふと気が付けば、ふつふつっと手早く寝間着のボタンが外され、裾から入って肌を撫で回していた手が正面から服を退けて胸を弄繰り回した。
あっという間に。それこそまるで手品の様に俺はジュエさんの腕の中で全裸になってしまっていた。


「さっき胸だけ弄ってた時のゴルジュの顔…すっごいエロかったよ…?
ずっと触って欲しかったんでしょ、ココ」

「ひんっ!」


ここ、と言って中心をぎゅっと握られる。
その際に敏感な尿道口を指で刺激されて、高い嬌声が口から洩れた。
ジュエさんの手の中でピクピクと反応しているのが自分でも分って恥ずかしいそれを、ゆっくりと根本から鈴口まで扱かれる。
段々手が速くなるのに合わせて、にちゅにちゅと粘性のある水音が大きくなる。
それは自分がどれだけ感じているのかを突きつける様で、恥ずかしくて身を縮めようとしたがジュエさんに抱きすくめられていて無理だった。


「あっ、ん、…ふ、ぁっジュエ、さん…っんぁう!?」


急に後孔に滑った物が広げられて驚く。
…何だかさっきから驚いてばかりな気がする。事前にちゃんと言ってくださいと言ってるのに、ジュエさんはこうやっていつも唐突に何かを始める。
驚いた顔が好き、というのを言い訳として良く口にするが、それにしたって出来る事ならば止めて欲しい。
ただでさえドキドキしているのに、これ以上脈が速くなったら死んでしまう。

ぬるり、ぬるり、と後孔を滑るのはどうやら軟膏を纏った指みたいだ。
最近は唾液で解される事が多くなっていたから少し意外に思う。

――な、舐められるよりもこっちの方が良いに決まってる。

そう思うのに、尖らせた舌で後孔を舐られる快楽を思い出して背筋が粟立った。
泣きながら口では止めてくださいと言っても、身体はあの淡い快楽を好んでいる。
ふる…っと僅かに身体を震わせて、甘い記憶を打ち払った時、ふと違和感を感じた。



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