7* 


「やめ、やめてください…っ!中は、ナカは舐めないでぇ…っ!」


百歩譲って風呂に入ったばかりならば表面くらいは良くても、いくら何でも中はダメだ。だってそこまでは洗っていない。
今までは舐めた後に指で解してくれていたのに、初めて舌を入れられて泣き喚く。
なのにイヴワールさんは尻肉を掴んで左右に割り開くと根元までずっぷりと舌を挿れてしまった。
高い鼻が会陰部分に当たっているのを信じられない思いで見つめていると、ぐにり、ぐにり、と舌が中を押す様に動き始める。


「やっ!ひゃめっ、やめてっ!お願いです、イヴワールさん、止めてっ」

「んー、らって解さないとらめれしょ?」

「お願い、お願いですから指っ、指でしてぇ…っ」


涙ながらに懇願すると、ちゅるりと舌を抜いてイヴワールさんは首を傾げた。


「じゃあ、いつも僕の事ジュエって呼ぶって約束して」

「はえ?」


言ってる意味が分からない。
イヴワールさんの名前なら時々呼んでいる筈――…。


「だってゴルジュ、意識が蕩けきってないと呼んでくれないでしょ?そろそろ名前で呼んでよ。
イヴワールじゃどっちの事か分かんないし…それに悲しじゃない。姓で呼ぶなんてさ…そう思わない?『イヴワール君』」


思わず喉を詰まらせる。
そう。この村に来て家を建てた時、イヴワールさんは最後の大金の使い時だからと役所に多額のお金を裏で渡し、名前だけだった俺に苗字を…『イヴワール』という姓を与えてくれた。
初めてゴルジュ=イヴワールというサインを見た時は思わず泣いてしまったくらい嬉しかったのを覚えている。
その時からずっとイヴワールさんに名前で呼んでと言われ続けているのだが、恥ずかしくてなんやかんやと避けていた。
こんな時にそんな条件ずるい…と一瞬思ったが、ここまでされるまで俺が逃げていたわけで。
そして今、『イヴワール君』と呼ばれてなんだか少し寂しい気がした。
名前で呼んで貰えないと言うのはこんな気持ちなのかと反省しつつ、震える唇を開く。


「…ゅぇ…」

「聞こえないよ」

「じゅ、え…ジュエ、さん…ジュエさん…」


口にすると気恥ずかしさと共に胸が温かくなる。
嬉しそうにイヴ…ジュエさんが微笑んで、俺に覆い被さると額にキスをしてきた。


「もっと、もっと呼んで…」

「ジュエさん、ジュエさん。…大好きです、ジュエさん…」

「僕も大好きだよ」

「ジュエ、ぁああああぁあああっ!!!???」


突然何の前触れもなく深々と腹の中に熱が突き立てられて絶叫した。
解されたそこは特に大きな痛みも無く呑み込んでしまったが、衝撃が大きすぎる。
背中を反らせ、浅い息を吐いて緩和させようとする身体の無意識の行動について行くだけで状況把握なんて出来やしない。
暫くして宙を彷徨っていた目が少しだけ情報を脳に伝え始める。
一番最初に伝わってきたのは、俺の前髪を掻き上げながら大切な物を見守るかのような優しい微笑みを浮かべているジュエさん。
俺の目がちゃんと自分を見つめている事に気付いたのか、にっこりと目を細める。


「かーわい」


一瞬だけ手があったら一発殴ってやりたいな、なんて思ってしまった。





「急に…挿れるの、止めて、くださいって…言ってるの、に…」

「ごめんね、痛かった?」


…痛くは無かった。
でもそういう問題じゃなくて、心と身体の準備と言う物が…。


「だってね、急に挿れるとゴルジュ凄い可愛いんだもん。
目が虚ろになって、はくはく浅い息をしながら背中反らせて…時々ピクンって痙攣するのとか。
ホント、かわいー…」

「そんな事で、しないでください…っ」


むしろそうなるからこそしないで欲しいのに。


「…もう僕で一杯一杯って感じが堪んない」


うっとりと呟いたジュエさんの言葉に思わず胸が締め付けられる程嬉しくなった。


「もっと僕の事だけ考えて…」


肩に埋めるジュエさんから良い匂いがする。
同じ物を食べて、同じ洗剤を使っているのにどうしてこんなにこの人は良い香りがするんだろう。
俺とは比べものにならないくらいこの人は綺麗だ。
黄金の髪に蒼玉の様な瞳。二重の瞼に高い鼻梁。美しいパーツが理想的な位置に配置されている顔の造作は人の目を惹きつけて止まないだろう。
そして贅沢を尽くした装飾品の様な見た目にそぐわしい優しい心の持ち主。
好きになってしまった俺に、その人は愛してると返してくれた。
それどころか俺に対して自分の事だけを考えて欲しいと言う。

幸せすぎて怖い。余りの幸せにもしかしてこれは夢で、目が覚めれば俺はあのサーカスで鎖に繋がれているんじゃないかと時々思ったりもする。
…例えそうだったとしても、この幸せで俺は一生生きていけるだろう。
辛くても、苦しくても、この夢で感じる事の出来た人に愛される感覚を思い出し、幸せに浸れる。
それくらい幸せだ。


「俺はもう、寝ても覚めても…何をしていてもジュエさんの事しか考えられません…」


身体も心も頭も、こんなにも自分は貴方で一杯。
これ以上一杯になったら破裂して死んでしまう。
ああでもそんな死に方ならば今すぐにでも死んでしまいたいな…。

腹の奥底で酷く存在感を示す熱を愛おしく思いながら意識して締め付けた。
蠢く内壁が貫く楔の形や熱、硬さを教えてくれる。
それだけで感じてしまう俺は熱っぽい吐息を吐いた。
熱を銜え込むとそこは排泄器官では無く快楽を伝える立派な性器となる。
女性の様に自分で濡れる事は出来ないのに、奥の方から何かがじゅわりと染み出す様な気がするくらい。
もっと感じさせて欲しいと、縁がまるでジュエさんの熱を咀嚼するみたいにひくひくしているのが分かる。
そして俺の心はそんな身体に沿っていて。


「ジュエ、ジュエさん…俺をもっと一杯にシてください…お願い…」



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