ぱちぱちと瞬きをした後、ゴルジュは微笑みながらゆっくり頷いた。
自分の言葉に素直に従うその従順な姿に愛しさが湧き、髪を優しく梳いてやる。
「いいこ…すぐだから」
そしてくしゃりと髪に潜らせた両手で頭を軽く支え、前後に動かし始めた。最初はゆっくりと。
「喉の奥を開くイメージをしててね…その方が少しは楽だから…」
そう言ったのと同時にその動きを激しくする。喉奥を突くような腰の動きにゴルジュが嘔吐いた。
「ゔっ、ぐっ、ぐっ、ん、んむ、んぅっ!!」
苦しそうな声を上げる度に喉奥が締まり、その締め付けが気持ち良い。
抗う術を持たないゴルジュは前後に動かされ、腰の突きに翻弄されるしかない。
紫の眼からは苦しさによる涙がぼたぼたと零れている。
それを見つめながら小さめな耳を指で擽った。
「はっ、そろそろ、出すよ…っ」
がちゅがちゅと出し入れをしながら吐息混じりで囁く。
その言葉にゴルジュが返事をしたかなんて事は分からない。
「飲んじゃダメだからね…っ、くっ!」
「ん、ぅ…っ!!!」
熱を吐き出す瞬間、ゴルジュの後頭部を思い切り押し付けた。
鼻が陰毛に触れるくらい奥に呑み込み、強制的に最大まで口を開けさせられているゴルジュは目を見開いている。
その喉奥に塗りつけるように白濁を吐き出すと性器をずるりと引き抜いた。
濡れた唇とペニスの先端が粘性の高い糸で繋がる。
苦しさの名残でまだ涙目のゴルジュ。
飲まない様にという言葉に従っているのか言葉を発さないが、喉が時々上下している。
喉奥に吐き出してしまった白濁を飲みこまない様に口の中に戻そうと身体が無意識に動いているのだろう。
微笑みながら頬を撫でる。
「ゴルジュ、あーんてして」
言葉に従ってゴルジュがゆっくりと口を開けた。
朱い咥内や舌を白い物が汚しているその景色の何て卑猥な事か。
ぞくりと背筋を震わせながらゴルジュの口の端に少し垂れている白濁を指で絡めると、咥内へ戻した。
そのまま指でゆっくりかき混ぜる。くちゃ、くちゅ…といやらしい音を立てて唾液と撹拌するように。
舌にもなすり付け、歯列に染み込ませるように塗りつける。気が済むまで指でゴルジュの咥内を弄ると
「いいこ…呑み込んで」
その液体を喉の奥に通す様に促す。
言葉に逆らうことなく、ゴルジュはこくん、こくんと何度かに分けて飲み下した。
最後にかき混ぜていた指も舐めて綺麗にすると放心状態なのか、ぽあっとその場で座り込んで動こうとしない。
「ちょっと刺激が強かったかなぁ…」
くすくすと笑いながらゴルジュの頬を撫でる。
…でも好きなんだから仕方が無いよね。
ベッドに上がらせる為に身体を持ち上げようとした途端、我に返ったのかゴルジュがはっと目を瞬かせた。
「だ、ダメです!動かさないで…っ」
「?何で?」
首を傾げて理由を聞くと何故か赤面してダメだと繰り返す。
しかしいくらダメだと言われても床に座りっぱなしにさせる訳に行かないと、腕から逃れようとする身体を腰を抱き締めて立ち上がらせ――
そしてある物を見つけて思わず目を見張った。が、直ぐに相好を崩す。
震える白い太腿に飛び散ったそれよりも白い液体。
ゴルジュが座っていた場所にも数滴同じ物が滴っていた。
きっと腰に巻いてあるタオルの裏にはべっとりとその液体が付着しているのだろう。
見られた事で恥ずかしさが臨界点を突破してしまったらしい。
ひぐひぐと喉を鳴らしながら泣き出してしまった。
その顔も可愛いななんて思いながらベッドにそっと横たえさせ、サイドテーブルに常備してある水差しに手を伸ばす。
グラスに注がれるそれは、見た目は普通の水に見えるが違う。
裏の井戸から汲んだ澄んだ水に薄荷や香料を漬けたシロップを少量溶かしたほんのり甘い飲み物。
喉に良いと村の人に聞いて作ったそれは、良く喉を嗄らすゴルジュの助けになっている。
グラスを手に取って振り返れば枕に顔を埋めている愛しい人。
顔を見られたくないのだろうと苦笑しながら近寄る。
「ゴルジュ、変な味だったでしょ、口直ししよ?」
ふるふると頭が横に動く。
「喉の奥とかいがいがしない?ホラ、顔見せて」
ふるふる。拒否。
「僕笑ったりしてないでしょ。恥ずかしくなんかないよ」
ふるふる。拒否。
「ねぇキスさせて」
……ふるふる。暫く躊躇った後の拒否。
少しだけ溜息を吐くと、グラスは傾けない様に耳元に顔を近づける。
「それとも口直しなんかいらないくらい美味しかった?僕の精液…」
耳に息が掛かり、びくんっと跳ねる肩。
翼が押しのけるようにばさりと羽ばたくけれど、柔らかい羽根ではなんの威力も無い。
「一生懸命ご奉仕してくれたゴルジュ可愛かったもんね…めいっぱい咥えて、精液も一杯口に含んで。
これからはキスなんかよりも毎日口でこうやってもらおうかなぁ。ゴルジュもそっちの方が――…」
「そ、んなの嫌、です…」
くぐもった声が震えながら言葉を遮ると、ゴルジュが顔を上げた。
滲んだ涙はさっきの恥ずかしさからなのか、それとも悲しさからなのか分からないが、首を横に振る。
「嫌です…イヴワールさんとキス出来ないなんて…」
掠れた声で放った言葉はもうこっちの胸を射抜くどころか掻っ攫っていく。
ああ、僕は一体どれだけ彼に夢中になれば良いのだろう。
「冗談だよ、そんな事するわけ無いじゃない」と口にした後、見せてくれた愛らしい唇に漸くベッドの上でのキスを施した。
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