4* 

一緒に泡を流し落とすと、体を拭く。


「ねぇ、バスローブはいらなくない?どうせ脱いじゃうんだしさ」

「い、いりますよ。廊下どうやって移動するつもりですか」

「裸」

「ダメですよっ」


いくら俺達しか住んでいなくても…と続けた唇を塞ぐ。
よろけたゴルジュを壁と腕で支え、もっと深い口付けを。
逃げようと引っ込んだ舌を追い、絡め取って吸う。手は後頭部と腰に回して、何度も角度を変えては重ねるとゴルジュも段々それに応える。
はぁ…と熱を帯びた溜息がゴルジュの口から洩れたのを見計らって、唇を離した。


「ね、いらないでしょ?」


もうこんななっちゃったし…と口角を上げれば、とろんと蕩けた目で小さく頷いてくれる。


「…でもせめて腰にタオルくらい…巻いてください」

「りょーかい」


手早く自分のとゴルジュの腰にタオルを巻き付けると、半ば腰砕けの恥じらい深い恋人を腕に抱えて足早に浴室から出た。




前の屋敷と違い、少し歩けばすぐに寝室だ。けれども待ちきれずに途中、何度も口を啄みながら歩いた。
二つの内のもう一つのドア。それに手を掛けて開ける。
そこはこの家の中で一番拘った寝室だ。
壁際にはキングサイズのシーツも枕も一級品のベッド。一つだけある窓には細やかな刺繍のされたレースのカーテンとぴったりと閉めれば外からは見えなくなる重く織った布地のカーテン。
ベッドの向かいの壁には今は使っていないが小さいながら暖炉が備え付けてある。
ちなみにベッドの右側の壁には年代物の姿見が置いてあるのだが、今は薄い布が掛けられていて見る事は出来ない。
何に使うのかは…ま、察すれば分かるよね。今日は使うつもりは無いけれど。

とさりと優しくゴルジュをベッドの上に下し、一つキスをすると少し体を離す。
間違いなく最上級品のシーツに横たわる身体は惜しげもなく滑らかな肌を晒していて、胸の飾りがケーキに添えられた苺の様にその白さに彩りを咥えている。
ああ腰の部分を隠しているタオルが本当にもどかしくて堪らない。
まだ濡れている髪は艶やかでそれが散っているのが酷く色香を放つのもまた。
潤んだ紫の瞳は誘っていて、薄いが触れると蕩けるくらい甘い唇はキスをせがむかのように少しだけ開いている。
どれも欲情を煽って仕方が無いのに、一番心を掴むのは翼だ。
シーツの白さと正反対の色を持つ翼が広がって押し付けられている様なんて、まるで堕天してしまった天使のよう。

――…快楽の味を知ってしまった為に堕ちてしまった天使。

ああびっくりする程ぴったりだ。
もっともっと快楽を教えてあげよう。もう二度と戻れない様に。

覆い被さると顔中にキスをした。これは始まる前のいつもの行為。
髪、額、瞼、頬、鼻。唇には触れず、ぎりぎり脇に一つ。そこから耳にずれ、首、鎖骨、肩、胸、真ん中を辿って臍、下腹…。
タオルは取らずにそこを飛ばし、右足を持ち上げて、膝頭、脛、そして最後、足の甲に唇を押し当てる。
伏せていた瞼を上げると、足を持ち上げた事でタオルが際どい所まで捲れ上がっていた。
ゴルジュを見れば、そのタオルに気付かない程欲情しきった顔で息を切らしている。
潤んだ紫水晶の異形の目を見つめながら、ねっとりと甲に舌を這わせた。

舌を這わされてぶるりと一つ震えたゴルジュに顔を近づけ、優しく頬を撫でればうっとりと気持ち良さそうに目を細める。
その耳元にこっそりとある『お願い』を吹き込むと、ぱっと夢から覚めた様な顔をしたと思えば真っ赤になった。


「え、え…っ」

「シて欲しいんだけど、ダメ?」

「そんな、そんな…だって、俺…」

「前教えてあげたでしょ、それの復習」


慌てるゴルジュをベッドから下ろして座らせると、自分は端に腰かける。
そしてタオルを退けて既に半勃ちの状態のそれを見せつけ、笑みを浮かべた。


「ね、口でシて?」




ゴルジュをベットから下ろしたのは別に意地悪とかではない。
腕の無い彼には体勢的に段差があるとやりやすいのだ。
ぺったりと床に尻を付けて座るゴルジュは、既に少し勃っているそれを目の前に突き付けられて、慌てるやら恥ずかしがるやらで目が泳いでいたが、暫くするとちらりとこちらを窺い、そして視線をペニスへと恐る恐る向けた。
視線がペニスに絡んだ瞬間、その白い喉が微かに上下したのを見逃す訳が無い。


「ほら、早く」


少し強引に言えば、真っ赤な顔でこちらを再び見た後、口が震えながら開いて近づく。
この為にココは念入りに洗っておいたから今はそんなに匂いはしないだろう。
口から赤い舌が覗き、先端部分をそろっと舐めあげる。
舌に感じた熱に驚いたのか直ぐに舌が引っ込み、そして逡巡した後、口が思い切り開かれて熱を咥内へと招き入れた。


「そう…いいこ。もっと舌を使って…」


頭を撫でてやれば嬉しそうに目が細まり、舌の動きが良くなる。
気持ちが良いという点ではまだまだだが、以前教えた事を辿る様なたどたどしさが堪らない。
唾液を全体に塗し、裏筋に舌を這わせたまま口の中を出入りさせる。時折口から出すと竿を横から咥えるように唇で食み、むにむにと刺激する。
どれも自分が教えた動きだ。
拙い動きで達するまでには行かないが、完全に勃ち上がるには十分すぎる刺激。


「ゴルジュ…」


気持ち良くさせようと一生懸命に口を動かしながら目だけで応える。


「ちょっと苦しいかもしれないけど、我慢できる?」



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