29 

朝、目が覚めると、くたくたな表情をして眠っているゴルジュが腕の中にいた。
明らかに腫れて熱を持っていそうな瞼に少しだけ罪悪感と、それとそれを超える愛おしさが湧く。
昨日は沢山泣いたし、泣かせてしまったからな…と前髪を指で弄る。
情事後、中に出してしまったので処理をするために風呂場で掻きだしたのだが、その時も酷く恥ずかしがって泣いていた。


「ごめんね…」


笑みを浮かべながら、その腫れている瞼に唇を落とした。
そして二度目の眠りに入るために瞼を閉じる。
愛おしい人の温もりをしっかりと腕に抱えながら。


白いシーツに包まり、身を寄せ合って眠る二人をカーテンの隙間から金の朝日が照らした。
その瞬間、昔ガーゴイルと呼ばれた男の翼が日の光を反射し、まるで純白の様に見えた事を誰も知らない。








それから数年後、彼らが住んでいた屋敷は誰もいなくなり、すぐに誰かの手に売り渡されたという。
彼らがどこに行ったのかは、馴染みであった医者でさえ分からないという話だが、どこかの田舎町にこんな話がある。



――どこからやってきたかも分からない2人が、家を建てた。
  そして、夜になると異国の言葉の子守唄がその家から毎晩聞こえる。
  それはこの世と物とは思えない程美しく優しい響きだった――と。







いつかの、どこかの話。





- END. -



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