14 

買って来た物を簡単に調理して夕飯になった。
新しく買ったチーズがワインに合うらしく、イヴワールさんの機嫌が良い。
心なしか飲むペースがいつもより早い気がした。


「そんなに美味しいですか?ワイン」


口が空になった時に笑いながら尋ねると、イヴワールさんは口角を上げた。


「飲んでみる?」

「良いです。アルコールはちょっと…」


以前に口にしたことのあるその味は口には合わず、小さく笑って断る。
といってもオーナーに顔に掛けられたのが口に入っただけなので飲んだ事があるというのとはちょっと違う気もするが。


「飲んでみなよ」

「でも…」

「ちょっとだけ、ほら」


そう言ってイヴワールさんは赤い液体の入ったグラスを自分の口に傾けた。
ほら、と言いながら自分で飲んでしまっている事に苦笑する。もしかしたら見た感じよりずっと酔っているのかもしれない。
今日は早く食事を切り上げて、ベッドで休んでもらった方がイヴワールさんの体に良いのでは…ああ、そういえば胃が荒れてるって言ってたっけ、と考え事をしていた俺の顎がイヴワールさんに掴まれ

口づけられた。


「!?…っ、ん…」


驚きで薄く開いた隙間にイヴワールさんの舌が滑り込み、くちゅり…と音を立てる。
その舌を伝って苦い、でもどこか甘みのある液体が咥内に流れ込んで来きた。
一体どうすればいいのか分からなくて、溜まっていく液体を口に溜め込んでいるとイヴワールさんの顔が離れる。

全部は流し込まなかったのか、口の中に残っていた分をイヴワールさんが目の前で飲み下した。


「…ほら、飲んで」


酔っているのか熱っぽい声で促されるまま、俺は口に満たされた液体を喉の奥に通した。


「…美味し?」

「…え、あ…」

「分からなかった?」


なんと答えるべきか分からず、ただ呆けたようにイヴワールさんの顔を見つめると、再度ワインを含んでイヴワールさんが口づけてくる。


「ん…ぁ…んく…っ」


今度は余り量が含まれていなくて、ワインに濡れた舌が咥内で動き回る。
その甘さに、熱に、ぼーっとなる。
今、俺は夢を見てる?

後頭部に回された手が髪の中に潜り込んできた。
長い指の感覚と、脳内で響くような水音に背筋が震える。


「い、イヴ…ぅぁ…」

「……ジュエって呼んでよ」


顔が離れた後、銀の糸が口を繋いでいた。
それをイヴワールさんが指で切り、舌で唇を舐める。
今、あれが。あれで…。


「美味しかった…?」


目だけで微笑むイヴワールさんに、俺は口を開いた途端


「酔って、るんです、か…?」


と聞いていた。
だって、そうでもしないとありえない。
こんな綺麗な人が、俺なんかに口移しで飲ませてくれるなんてありえない。
それを耳にしたイヴワールさんはちょっと目を見開き、寂しそうな笑みを浮かべると
「そうかも…ね」とぽつりと呟やいた。



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