体中が痛い。

誰かと喧嘩した後特融のぼうっとした熱でどことなく定まらない思考の中、帰巣本能の様にただひたすらに歩みを進めた。

――ああまたこんなに怪我をしてしまった。彼はきっと手当てをしながら泣きそうな顔をするのだろう。

怪我をしてしまったのは自分が弱い所為だと分かっていながら、自分に怪我を負わせた相手が憎くなる。
しかし彼の泣きそうになるのを必死に堪える表情を見ると、それは自分に対しての怒りに変わるのだ。
彼を悲しませる弱い自分が。
彼を泣かせてしまう力無い自分が。

奥歯を噛みしめながら歩くスピードを上げる。

行かなければならない。
帰らなければ。

――待っている人がいる。

俺は痛みを堪えて階段に足を掛けた。





「……」

「……」

「……真白…」

「…ん」


絆創膏を俺の指に巻きながら真白が返事をする。

自分のアパートのドアの取っ手に手を掛けた瞬間、ひとりでにドアが開き、待っていてくれた真白が飛び出して俺の首に抱きついてきた。
そしてすぐさま俺の頭から爪先まで見ると、想像していた通り悲しげに一瞬顔を歪ませて、俺を中に入れ、シャワーを浴びさせたり、手当てをしてくれたりと甲斐甲斐しく面倒を見てくれたのだ。
ただその間、真白はずっと無言で。
シャワーを浴びた俺をバスタオル一枚にして手当てをする際に、新しい傷を見つける度に真白が沈んでいくのが空気で分かった。

それでも真白は泣かない。
泣きそうな顔をするけれど、決して泣かない。
…これは、俺のけじめだと分かっているから。

真白の問題が一件落着した後、俺の問題が残っていた。
あの喧嘩の後、俺のグループは俺が途中で見方を殴り飛ばしたり、途中離脱した結果、動揺が広がり、負けたという。
普通負けたグループは相手に潰されるか、または吸収されるかだ。

吾郎は後者を望んだ。

…俺も、だ。

別にあいつ等がどうなろうと知った事ではないと思わない訳でもない。
でも、あいつ等を俺や吾郎が纏めない事で真白に危害が加わる様な事がある可能性があるのならば。
俺はあいつ等を目の見える場所に置いておきたい。

しかし、元はと言えばそこから分裂したグループな訳で。
はい、分かりましたとすんなりいくわけが無かった。

ミツハル、クニマサ、ヨシカズは俺について行くとあの後も言ってきた。
しかし敵対している吾郎と同じ意見である俺に他の奴らがついて行くわけも無く、そして吾郎は俺に笑ってまぁ、頑張る事だねと言った。


『俺は口を出さないよ。手も出さない。吸収されたくないっていうならしないさね。
吸収されないなら潰すまでって態度で臨んで行った吸収はきっとガタが来るから。
でも、シロ。お前はそれだと奴らが野放しの状態になるから嫌なんだろう?
シロ、お前は今まで虚ろな人形みたいに考えてこなかった。そのツケが今ここに回ってきたんさね。
…考えて御覧、きっと答えが見えてくるよ。
俺の周りにいる奴らは出来る事なら話し合いで済ませたいっていう俺に付いてきたんだ。
シロ、お前に付いてきた奴らはどんな奴らだい?』


正直、考えたって分からない。
頭は良くない方だし、どう解決すればあいつらが満足するのかなんていくら考えても答えが出なくて。
だから俺はあいつ等を集めて、ただ一言言った。


『気に食わないならかかってこい。喧嘩ならいくらでも相手になってやる。俺に負けたら俺に黙ってついてこい』


俺があいつ等にしてやった事なんて一つも分からないし、無い。
だから、自分が一番出来る事で片を付けようと思っただけだ。
…吾郎はこれを聞いて死にそうなほど笑っていたが。



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