城沢君の方を向いて少し口ごもった後に「…シロ」と呼ぶと、嬉しそうに城沢君もといシロは微笑んだ。
う、うわぁぁぁぁぁ…男前が微笑むと破壊力すご…見た?って俺は誰に言ってるんだろう。
「何?ましろ…」
ええええ俺の名前は呼び捨て?!
いやいや別に良いけれど、初対面なのに…とか思っている俺はおかしいのか。これが普通なのか。
「…」
「ましろ?」
「…なんでもない。
で、話題が最初に戻るけど、どうして下りてきたの?」
「……………おなか空いた」
さっき食べたばっかじゃん…!と、すぐさま突っ込みを心の中で入れたが、お粥は消化良いからなぁ…と思い直す。
「もうすぐ出来るから一緒に食べようか?」
俯いて何かを訴えるような瞳で見てくるから苦笑しながら誘うと、さっき以上の笑顔が返ってきた。
どうやら…俺が拾ったのは猫ではなく犬だったようです。
シロの前に出来たおかずや味噌汁を並べる。
「手作り…?」
「んーまあね。
喰えない味じゃないと思うから、はいどうぞ」
シロに進めて自分も手を合わせて食べる。
…うんまあ80点。悪くない。
次はこうしよう…とか考えているとシロの手が止まっていた。
「シロ?」
もしかして口に合わなかっただろうか。
俺にとっては美味しくてもシロにとっては美味しくないかもしれないし、今日のは煮つけだ。家庭の味というのが個々にあるかもしれない。
「不味い?」
「美味い…」
「そりゃ良かった」
不味くて止まっていたわけで無くて良かった。
ほっと安堵の溜息をつく。
「親は…?」
「父さんと二人一緒に住んでるけど、仕事の都合上仕事場で過ごすことが多いんだ。
でもまぁ、仕事場わりかし近くだし」
「へぇ…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…なぁ、『シロ』って呼ばれるの嫌じゃない?」
「…何で?」
「……一時期っていうか…俺嫌だったからさ」
「…」
「ほら、犬みたいとか思わない?」
俺の言葉を聞くと、ふっとシロが笑った。
「ましろが呼ぶなら良い」
凄い恥ずかしい事を言われた気がするのは気のせいか…?
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