前を 

くたくたになってシャワーを浴びる。
流石に一緒に浴びるなんて事は断った。

タオルで体を拭く時に、姿見に体が写って絶句する。
いたる所に朱が散っていて、どんな角度で見ても目に映らない事は無いだろうと思うくらいだ。


「うわぁ…」


鎖骨の辺りについている一つを指でなぞる。
決して嫌じゃない。
むしろほくほくと胸が温かくなる。

――そういえば俺はキスマークつけて無い。

後で隠せない位置につけてやろうとニヤニヤと笑みを浮かべて、急いで服を着る。
ちょっと腰が痛いけど、大丈夫だ。
…明日になったらどうなってるか分からないけど。


「シロっ」


風呂場から笑みを浮かべて飛び出すと


「おんや、姫さん。お疲れ様〜」


シロが座っている向かいのソファーに吾郎さんと恭志郎さんが座っていて、その場で驚きで死にそうになった。





「疲れたっしょ、シロ激しそうだもんねぇ。シロ、お前ちょっとは気ぃ遣ってやんなよ。
ほらそんなとこで立ったまんまでいないで。おいでおいで」


にこやかに手招きする吾郎さんに言われる通りふらふらと近寄ると、ぐいっと腰を掴まれてシロの腕の中に収まる。


「…俺のだから」

「わぁってるって」


低く唸るような声に吾郎さんが満面の笑みで答えた。
もう俺は訳が分からない。


「ご、吾郎さん、あの…い、何時から…」

「んー。姫さんがシャワー浴びてるらへんだよ」

「そ、そうですか」


真っ最中じゃなくてよかったけど、シロと俺が何をしていたかって事はさっきの発言から分かってるみたいで。
そもそもシロがまだシャワーを浴びてなくて、一応服を着てはいるけど乱れていて情事後の色っぽい空気を無駄に撒き散らせている。
てかシロ…!腰を労わる様に優しく撫でないでくれ…っ!き、気遣ってくれるのは嬉しいけど!

そんな俺たちを見て恭志郎さんが眉を顰めた。
ああ、そんな目で見られると辛い…っ。
そんな空気を物ともせず、吾郎さんが嬉しそうに笑った。


「いやぁ、良かった。心の閊えが下りたよ」


そう言いながらシロに優しい目を向ける。


「…飼い主が見つかって良かったな」

「…ああ」


そう言ってシロの腕に力が入る。
乾かしたばかりの髪に鼻を埋められて恥ずかしい。


「それで、姫さんの方は全部解決したの?」


何もかも見透かした様に吾郎さんが目を細めて俺を見た。
胸が詰まる。

そう、シロとの事は解決した。
だけど根本的な事は何も変わっていないんだ。
ぎゅっと無意識に自分のシャツの胸元を握ると、その上からシロが俺の手を包んできた。


「…大丈夫。俺がいる」


その言葉が、頭を覆いつくし、動きを止めてしまいそうな不安の闇を吹き払ってくれる。
顔を上げると吾郎さんも穏やかに先を促してくれた。


俺は決意して、今までの事を口にし始めた。



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