「シロ…」
逞しい腕を取ると、手の平に自分の頬を押し付ける。
そっと唇を押し当てるとゆっくり眼差しをシロの眼差しに絡めた。
「…な…?俺、シロとシたいから…」
「…っ」
ごくりとシロの喉が上下したが、それでも先に進もうとしない。
俺は太腿を掴み、足を開いた。
目を見開くシロを意識して片手を後孔に這わせ、そして、見せつけるように引っ張る。
「ここ…疼くから…お願い…うわぁ?!」
誘う様に笑みを浮かべた瞬間、シロに足を持ち上げられ、そして自分の頭の横に付くように折り曲げさせられた。
所謂、ま…まんぐり返しというやつで、自分の逸物やらなんやらが重心に従ってこっちに向く。
酷く恥ずかしすぎる格好にもがくけれども、シロの力には勝てなかった。
「な、何する、ひぁああ!?」
べちょり と後孔を熱く滑ったものが這って声を上げる。
…いや、何が這ったかはわかっている。この格好で何もかもが丸見えなのだから。
シロのてらてらと濡れている舌がほじるように孔に突き立てられて、俺は嬌声交じりの悲鳴を上げた。
「や、やだぁああっ!駄目っ!止めろっ!そんなのっぁああっ!きた、汚い、からっ!」
内側を舐められる初めての感覚に身を捩ろうとするけれど、この格好で押さえつけられると腰をまるで強請るように振ることしか出来ず、俺はあまりの恥ずかしさに涙が出てきた。
「ぁあああっ…うっひぅっ」
ぼろぼろと涙をこぼす俺を見ると、舌を抜いて足を下ろしてくれた。
ちゅぽんっ と抜ける感覚に背筋を震わせる。
「ましろ…」
シロが覆い被さって涙を唇ですくった。
そのまま耳元で囁かれる。
「あいつはしろって言ったかもしれないけど…俺は、いい……そんなのしなくても、俺はましろが好きだ…」
びくりと身を竦めた。
どうして…。
「ましろ、初めての事は、すごい恥ずかしがる……俺は、あいつみたいにしなくても、酷い事なんかしない…
俺はましろと、気持ちよくなりたい…」
そう。
あの強請り方も青葉から教わった。
やれ、と。こうやって自分を欲しがれ、と。
いつしかそれをすれば行為が早く終わると思って、自分からやる様になっていた。
別にシロとの行為を早く終わらせたいなんて思っていない。
でもシロに早く気持ちよくなって欲しくて、半ば無意識に誘ってしまった。
「……ごめん……」
茫然とつぶやく。
ここまで俺の体は変えられてしまっているのか。
ここまで俺の意識は変えられてしまっているのか。
初めて心地良いと思うセックスでも、心のどこかで身を委ねきる事が出来ない自分がいる。
セックスというのは心地良くなる物ではなく、どんなに嫌でも気持ち悪くても相手に尽くし、奉仕する物だという意識がある事に気づいた。
「ごめん…っごめん…っ」
「ましろ…謝るな、ましろは何も悪くない…」
くしゃりと髪を撫でられて俺は涙を零した。
そうだ。本当はさっきのと同様、恥ずかしがらないといけない行為だ。
でもそこまで恥ずかしいと感じなかった。感じられなかった。
――なんて、浅ましい…っ
無意識に抱かれなれている表現をしてしまった事がショックすぎる。
「ごめんっ俺を嫌いにならないで…っ、シロ、ごめん、もうしないから…っ」
「いい、ましろ…いいから…嫌いになんて絶対ならない」
ほら、と手を導かれた先には
「っ!」
熱り立った逸物がどくどくと鼓動と熱を伝えて来た。
ぬるりと濡れた感覚が先の方からして慌てる。
「そういうの…嫌じゃない。いくらあいつに教えてもらった事って分かっても…ましろがしてるってだけで、興奮する…」
でも、やっぱりムカつくからと小さく苦笑してみせるシロの首に腕を回して抱きついた。
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