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一族の視線をひしひしと感じながら俺は花を生ける。

生け花は心を映すと誰かが言ったのを聞いたことがある。
なのに生けた花を見ても誰も俺の心に気付かない。
俺の心はこんなにも荒んでいるのに、手は花を生けていき、一族は俺の心が此処に無い事に気付かない。

枯れれば良いと心底思った。

白く小さい花をいくつもつける小手毬も、縁だけ咲く薄い青色の額紫陽花も今すぐに。
水も淀んで腐臭を放てばいい。

けれど花は美しいままだった





額を風が撫でる その感覚に目を細めた。

昼から始まった会はもう終わって、今では大広間でわいわいと盛り上がっているだろう。
教育をほとんど受けていない俺の生けた花の何が面白いのか、けれど親戚は称賛をした。
彼らの目は何を映しているのか。


「って母さんか…」


答えが決まりきった疑問を少しでも抱いた自分が阿保らしい。

日も沈み、うっすらと闇が辺りを覆い始める。


「白」


明後日には帰れる、と少し浮かべていた笑みが途端に凍りついた。


「せ…あおはさん」


振り向くよりも先に背中に人の体温を感じる。
初夏といえど田舎は日が落ちるとまだ肌寒く、その体温は心地良く感じてもいいはずなのに、ただ悪寒だけがした。

そのまま無言で青葉の手が合わせ目から滑り込んで来た。
青葉は俺が花を生けると必ずその日の内に俺を抱く。
いつもは俺を嬲るような抱き方をして色々と話しかけるのに、この時だけはただただ無言で抱く。

俺はもう抵抗する気さえなく、ぼんやりと庭を眺めながら青葉の愛撫を受け入れた。


「……ん…く…っあ…」


青葉の手が上下して俺の中心を擦る。


「はっ…は…はっ…」


荒い息を肩でする。早くこの行為が終われば良い。
明後日には俺は帰るんだ。

そんな俺の耳に砂利を踏む音が入って来た。

――誰かが来る!!!!


「あっ、あおはっ誰か来るっ見られるっ」


慌てて中心を擦りあげる青葉の腕を掴む がその動きは止まらない。


「あ、青葉っ!?」

「………見られれば良いじゃないか…」


低い声で青葉は俺の耳元に吹き込んだ。


「そうだなぁ…白に誘惑されたって言えばいいかなぁ…」


ざぁああっと顔から血の気が引いていく。

俺はただ祖父に可愛がられているだけの存在だ。それに比べて青葉は次期当主…一族のほとんどが青葉の言葉を信じるだろう。
それに今、俺だけが服を乱している。これでは言い訳のしようがない。


「お…お願いだ…やめ…やめて…」


『次期当主を誘惑した卑しい存在』と認識されたら一体どんな事が起きるかわからない。
世間から爪弾きにさせるなんて古醐宮家にとって簡単な事だ。

父さんは職を失い、俺は学校に通えなくなるかもしれない。
それよりも、この事が父さんの耳に入ると思うだけでがたがたと身体が震えた。



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