「あおは…と呼ぶようにその身体に教え込んだはずなんだけどね…」
青葉はすっと目を細めると、嫌な予感を感じて後ずさろうとした俺の手首を掴んで引き寄せる。
俺の首筋に唇を落として懐のあわせからするりと手を滑り込ませた。
「やめ…っ!」
脇腹を直に撫でまわされる感触に肌を粟立たせながら否定の言葉を吐こうとする。
「白…ここにいるのは君でなくても良いんだよ…?」
と遮り、帯に手を掛けながら青葉は口角を上げた。
「…」
その言葉が俺を縛り、俺の思考を止め、俺の動きも止めた。
「いい子だね」
青葉は口角を上げると俺の帯を一気に抜き去った。
ああ、腐っていく。
「…く…っ」
脚の間にある腰がぶるりと震え、中に熱が広がる感覚した。
虚ろな頭でこれで何回目かと考える。
今日だけじゃない。初めてこの行為を強いられたのは12の時だった。
泣き叫びそうになった俺を「ここにいるのは君ではなくてもいい」という言葉が抑えた。
「考え事、かい?」
余裕だね、と呟くと、ずちゅっと思い切り青葉が腰を打ちつける。
「んあっ」
いきなりの大きな衝撃に背中が撓る。
最初の時は必死で袖を噛みながら声を抑えていた行為も、心はそこになくとも身体は慣れてきてしまい、今では貪欲に快感を取り出し、得ていた。
それを浅ましくて厭らしい体だと言われるのは酷く屈辱で、でもそうでしかないのが嫌で嫌でたまらなかった。
「可哀そうな白。
母親の代わりにされてっ、父親の代わりにされて、誰もお前の事を見てはくれないっ」
ずっ ずっと腰を揺らしながら青葉はいつもこう言う。
俺が嫌がる事を言って、俺の立場を身に刻む。
「あっ、あっ…んっんっ」
悲しみからか快感からか分からない涙をぼろぼろ零して揺さぶられ続けた。
早く。早く終わって欲しい。
「可哀そうにね」
ゆっくりと俺の髪を梳きながら楽しそうにそう呟いた。
青葉は唄うように言葉を紡ぐ。
「覚えておきな?俺だけだよ。白を白と見てやるのは」
そしてお前はずーっと俺の『物』だから。
その言葉と同時に最奥まで突き上げられて快楽の渦の中、白濁を散らしながら再度相手の熱を奥に感じた。
「明日は一族集まる」
服装を整えながら青葉は立ちあがってそう言った。
乱れた服の上で息を切らしながら青葉に目を向ける。
「爺さんが白も何か花、生けろだってさ」
明日も楽しみにしてるよ、と、そう爽やかに微笑むと部屋から出て行った。
だるい身体に鞭打って服を腕に纏わせながら上半身を起こす。
どろり…と青葉のものが中から出て行く気持ち悪い感覚に俺は小さく笑った。
――こんなに汚れた俺を誰が受け入れるって…?
父はもちろん、泉にさえも知らない。知られてはいけない。
きっと嫌われる。軽蔑される。
祖父もこのことは知らない。知らせても無駄な気がした。
というより、知らせたら青葉が何をするかわからない。
あと3日…あと3日だと自分に言い聞かせて後処理をするために重い腰を上げる。
あんな奴の物を体内に容れっぱなしにしたくなかった。
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