「え…え?」
誰が、誰を、何だって?
茫然と顔を上げると上半身裸のシロと至近距離で見つめあう形になる。
「シロが?」
「うん」
「俺を?」
「うん」
「す…き?」
「好き」
それは…。
「……こういう意味で…だから」
と言って、シロは俺にまたキスをした。
今度は舌は入って来なかったけど、ちゅっとリップ音をたてて離れていった。
「おれ、は、男…だぞ?」
「わかってる」
「な、んで」
シロと出会ったのは昨日。
シロと過ごしたのはたった2日。
それで、何をしたら好きになるんだ?
俺のどこが、何が好きなんだ?
「…ましろの、全部が」
好き。
と、微笑んでシロは言った。
「シロ、俺は……優しくなんかない」
頭を抱える。
そんな、そんな人間じゃない。
俺が優しくて綺麗な人間と思っているならば誤解を解かなければいけない。
そこに惚れたという話だとしたらなおさらだ。
「お前が思っているような人間じゃない」
一言一言力を込めてしっかり口にしてシロから離れようとするけれど、しっかり抱きしめられていて離れられない。
「シロ、離せ」
「…嫌だ」
「離せ」
「…いや、だ」
「離せよっ!!!!!」
思い切り叫んで突き放すと、流石に驚いたのか腕の力が緩んだ。
そこから身を捩じって抜け出る。
「帰ってくれ…」
ショックを受けているシロの顔を見ていたくなくて俯いた。
ああ、あんな顔をさせてしまうなんて。
「……まし、ろ…ましろ、それは…男同士だから…?」
「……違う。違うけど…」
「じゃあ」
「いいから帰れ…!」
「…まし」
「帰れって言ってんだろ!!!!!!!!」
側にあったシロの上着を引っ掴むと投げつけた。
理不尽で自分勝手だと良く分かっている。でもとにかく此処にシロがいて欲しくない。
…いや。もうこれ以上シロと関わりたくない。
…関わっちゃいけない。
シロと全く目を合わさず、これ以上関わるつもりは無いと態度で表す。
暫くの沈黙が続いたが、服を着る音、立ち上がる音、そしてドアの取っ手に手を掛ける音がした。
「…も、……だ」
出ていく寸前に何か言った気がしたけれど、なんて言ったのかわからなかった。
ドアの閉じる音がした瞬間、俺は泣いた。
ごめんシロ。俺は優しくなんかないよ。
お前が考えてるような人間じゃないよ。
優しかったらお前を追い出したりなんかしないよ。
俺は、臆病で卑怯な人間なんだ。
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