帰り道、いつものスーパーに寄る。
今日はセールでは無いが、多分今夜もシロは泊まるのだろう。
その分の食材を買い足しにしに来た。

男子高校生が2人で食材の買い物。
ましてや片や半分白い髪の長身男前。奥様方の目線が突き刺さるように痛い…。


「なあ…やっぱり、カゴは俺が…」

「…ダメ」


スーパーに入ってすぐに、シロは俺の手からカゴを取り上げてしまった。
仕方ないと溜息をついて食材に目を戻す。


「んー…シロ、何食べたい?」


いつもは値引きされたものしか買わないのだけれど、今夜はシロの好きな物を食べさせてやろうと思う。
一応客人をもてなす心はあるんだからなっ。


「…食べたいもの……」

「そうそう。多分大抵は作れると思う」

「…………ましろ」

「ん?」


俺の名前を呼んだっきり、じっと俺の顔を見るシロ。
…俺がどうした?以心伝心ってやつだろうか…?
でも生憎何も伝わらない。
首を傾げる俺にシロは諦めたような顔をして「…が、作るものなら…何でも、良い」と続けた。


「何か他の食べたかったんじゃないのか?」


なんだか無理やりな感じが一瞬したのだけれど…。

本当はそうだけど、多分食べさせてもらえないから…とか歯切れ悪く小さく呟くシロに、そんなに技術のいるものが食べたかったのだろうかとまた首を傾げた。


シロが何でも良いと言うので、値引きされた食材から今夜はハンバーグになった。
…いや、問題は値段じゃないんだ。気持ちと味だ。

俺が払うと言うシロをどうにか説き伏せて、荷物だけ持ってもらっている。

家に着くと、まだ晩御飯にも、晩御飯を作るにも少し早い時間だった。
どうしようか…と思った俺は、気になっていた事を実行する事にした。


「シロー」

「なに、ましろ…?」


こっちこっちと手招く。


「ここに来て」


とソファーをぽんぽんと叩くと、頷いて素直に横に座るシロに


「いいか?今からする事、父さんに言うなよ…?」


と告げると


「え…ま、ましろ…?」


何故か期待のこもった声と目で見つめられた。







「あ……きもち、い、い」


吐き出すようにシロが呟く。


「ん、思ってたより歪んでるなー」


背骨に指を走らせ、所々でぐっぐっと押す。
それを何回か繰り返した後に首の付け根も押して、次は腕に手を伸ばす。


「……なんで…親父さんに言っちゃ、ダメ…?」

「あー…俺の父さん整体師なんだよ。
小っさい頃から側で見てて、俺自身もしてもらった事が何度もあるから、覚えちゃったんだけどさ。
ちゃんとした教育で得たものじゃないから、人にやっちゃ駄目だって言われて」


バレたら雷もんなんだ、と苦笑した。



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