シロは正門で待っていると三塚君に聞いて、並んでシロの所へと向かう。
遠目に正門の柱に凭れているシロが見えた。
それにしても普通に立っているだけなのに物凄い存在感だ。
何がそんなに他と違うのだろうか…髪?…否めないがそれだけでは無い気もする。


「おい、もしかしてあれ『シロ』じゃねぇか?」

「え?!まじかよ!?」


そんな声が聞こえて一瞬「なんで俺!?」と、ぎょっとするけれど『白』ではなくて『シロ』かと納得する。

――…ん?

その瞬間俺は何か違和感と言うか、不思議な感じがした。
それを纏めきる前にシロの所についてしまう。


「ごめんシロ。待った?」


あれ。なんか今のデートに遅れた彼女みたいなセリフだ…って何変な事考えてるんだ。
それよかさっきの違和感…。

考え込む俺を嬉しそうにシロは見つめ


「待って、ない………帰ろう。ましろ」


と微笑んだ。
その瞬間に近くにいた人達がざわりとしたけれど、そんなのは眼中にないシロは抱きついてくる。
その勢いで分かりかけていた感じが飛んだ。


「ぶっ。こら離せシロ。……あ――――もう、ほら。何か分かりかけてたのに…」

「じゃあ俺はこれで」


そんな俺等を少し冷めた目でみた三塚君は挨拶をすると踵を返した。


「あ。ばいばい、み…春臣君」


そう言った瞬間にシロから不機嫌オーラがだだ漏れる。


「………なんで、名前」


抱きしめる腕の力を強められた。
と言っても俺が痛くない程度の力で、その代わりと言ってはなんだけど、春臣君にそれだけで殺せそうな鋭い視線を向けている。


「……俺、ましろに名前言って「あ、そういうことか!」

貰った事ないのに、と続けようとしたシロの言葉は俺の言葉に遮られた。
突然叫んだ俺に、帰ろうとしていた春臣君も振り返る。


「なあ、『シロ』」

「……なに、ましろ?」

「ほら、うん。そうなんだよな」


一人で納得をして頷くと、シロは不思議そうに見てきた。


「いや、さ。
前の俺のあだ名は『白』だったって言っただろ?
だから今でも、『しろ』って聞くと振り返っちゃうんだよね。
他の人が『しろ』って呼んだら俺の事か、シロの事かわかんないだろ?
でもさ、俺が『しろ』って呼んだら『シロ』の事でしかないんだよ」


な、なんか何言ってるか自分でも良く分からなくなってきたけど、とりあえず伝えたい事は


「それってさ、なんか特別な感じがして良いなって言いたかったんだ」


そう言って笑った俺を穴が開くほどシロは見つめてきた。


「………俺と、ましろが…特、別…?」


茫然と呟き、がばりと今まで以上にきつく抱きしめてくる。


「…うれ、しい、嬉しい、ましろ!!」

「ええ?あ、うんそうだねー」


そこまで嬉しいか?とか思ったけれど、なんか引っかかってたもやもやがすっきりして満足な俺はぽんぽんとシロの背中を叩いた。
ぶんぶんと振れる尻尾が見える気がする。

そんな俺を見つめて


「なんて、罪作りな奴…」


と三塚君が呆然と呟いたなんて事は知らない。



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