「ササぁあぁああ!!!!!!ごめんなぁぁああああ!!!!」
5限目が終わって直ぐ、五体投地の勢いで泉が謝ってきた。
ずじゃしゃしゃーっと勢い良く俺の横に跪く泉を横目でちらっと見てふいっと顔を逸らす。
「ほんっとーに、すまないと思ってる。嘘じゃない!」
「…」
「許してくれよぉ」
「…」
「ササぁ!」
泉の叫び声を聞きながらそっぽを向いたまま小さく溜息をついた。
わかってる。自分が泉の立場だったらきっと同じ事をすると思う。
助けたいのも山々だけれど、自分なんかが助けに入ってもどうしようもないし、むしろ状態を悪化させかねない。
こんな風に考え方が似ているから泉とは良い関係をずっと長い間続けていれるのかもしれない。
「俺さぁ、朝飯食べてないどころか昼飯も食い損ねたんだよねぇ…」
だから購買のパンとジュースで許してやる。とぶっきらぼうに言うと
「笹西ぃいいいいい!!!!!」
泉は抱きつかんばかりの大声を上げ、尻のポケットに突っ込んでいた財布を片手に掴んでがくがくと首を振る。
「お前、良い奴!愛してる!!待ってろ!!すぐ買ってきてやるからな!!」
がばっと立ち上がり、ドアの前で投げキッスを一つ俺に投げる振りをするダッシュで走って行った。
5分後、息も切らさずに泉が戻って来た。さすが元陸上部。
「ささ、笹西殿。お納めくだされ」
と仰々しくカフェオレとツナパンを差し出して来たので思わず笑ってしまう。
「でも良かったなぁ、何もされなくて!!」
泉は笑いながら俺の前の席に座った。
てっきり俺はズタボロになったお前を病院に運ぶことを予想してたよ と朗らかに言う目の前の男の事を本当に友達なのかと一瞬疑った。
「なあ今日帰り道、本買いたいからついて来てくんない?」
泉とは帰り道が途中まで同じなので良く一緒に帰る。
その後、帰り道沿いのスーパーで買い物が俺の日課だ。
「今日はダメ」
「ええーなんでだよー、今日はセールじゃないだろ?
それともまだ怒ってたりする?パンとジュースでチャラじゃなかったのかよー」
「帰りに『Less』の総長と一緒に帰るんだけどそれでもいいn」
「あ、やっべ!俺本屋は一人で行かないと死ぬ病気だったんだ☆
だからササ、俺の事は気にしないで良いぜっ」
慌てて顔の前で引き攣った笑顔で言い訳をする泉。
どんな病気だよと心の中でつっこんで、薄情な友人を持ったものだと溜息をついた。
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