おはようございます。 

俺は自分のベッドで寝て、シロには父さんのベッドで寝てもらった。

そのはずだ。


「…なのに、なんだ?この状況は…?」


何故、おれはシロに抱きしめられているんだろう…?
一瞬、俺がふらふらと歩いてシロの所に行ってしまったという線を考えたが、ははは残念。
ここはどう見ても俺の部屋だ。
押しのけようにもびくともしないし、がっちりホールドされているから身動きも取れない。
困って目線だけ動かして、何となく壁に掛かっている時計を見ると。


‐8:06‐


「!?」


学校が始まるのは8:30から。ここから学校までは自転車で20分はかかる。


「ウソだろ?!」


何がどうしてこうなるんだ!?
火事場の馬鹿力で俺はシロの腕の中から這い出ると、すぐに着替え始めた。


「ん…まし、ろ?…!!」


眠たげに顔をこちらに向けてシロはかっと目を見開いた。


「あ、シロ起きたか?!
今日はお前身体だるいなら休んでろよ?連絡は自分で入れれるな?
ご飯は昨日の残りとか、冷蔵庫からとか適当に食ってていーから!!」


下着のみの姿でそう言うと制服のズボンに脚を入れた。
そしてシャツを羽織ろうとしたらシロに後ろから抱きしめられた。
そりゃーもうがっちりと。


「シロ?!俺急いでんだけど!?」

「ましろが、悪い…」

「はあ?」


もしかして起こさなかった事を言ってるのだろうか?


「だって、お前怪我してるから今日は行かないもんだと思って…」

「そんなの…関係ない」


低く 低く 耳元で囁く。

――そ、そんなに怒ってるのか?!


「ごっ、ごめん!謝るから、この手を離して…」

「いやだ」


――ど、どうすれば良いんだ…!


「頼む!学校に本気で遅れる!!」

「…」


しばらく無言の後、ごそりとシロが動く。
襟を軽く引っ張られて首筋に小さい痛みを感じた。


「っ…」

「これで、許す」


――今ので…?

緩んだ腕から抜け出す。
良くわからん、と首を捻って後ろを見ると至極満足そうな表情を浮かべているシロが目に入った。


「ごめん、そこまで行きたかったとは思わなかったから…。でも行ってもいいけど、無理はするなよ?」


口を動かしつつ着替える。


「とにかく!お前は遅刻したって、休んだって良い理由があるんだからゆっくりしろよ」


鍵は此処に置いとくから、出かけるときは締めといてくれよ?!
じゃ、行ってきます!!と叫んで俺は家を飛び出た。








「あんな格好…誘ってるとしか思えない…」


ぼそりと呟きながら机の上の鍵を見る。

――学校か…ましろと一緒にいられるなら、行くのも悪くない。

ふっと微笑んで鍵を掴むと、シロは1階へと下りて行った。



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